★
私が生まれ育ったのは墨田区両国。両国といえば言わずと知れた“相撲”の町。町中に相撲部屋が点在していることもあり、お相撲さんが徒歩や自転車に乗る姿は日常の光景です。お相撲さんがそばにいると甘~い香りがするのをご存じですか? これはまげを整えるために塗る鬢付け油の香りで、この香りが漂ってきたらお相撲さんが近くにいるサイン。200㎏近い巨体が自転車で近付いているかもしれないのでご注意ください……。★
私の長女の同級生の親は部屋の親方、次女の同級生の親は有名元力士、飲み仲間は部屋のおかみなど、この町で生活すると間接的に角界とつながります。正月には町会の餅つきにお相撲さんが手伝いに来てくれます。夏休みの間の1週間、“すもう体験”として土俵を開放し子どもたちに稽古をつけてくれる部屋もあります。もちろん、地域への貢献という協会からの要請もあるようですが、重いものを運んでくれたりなどの自主的なお手伝いも多く見られ、そんなお相撲さんとの触れ合いは子どもやお年寄りにとって楽しいひと時であることは間違いないでしょう。それぞれの町に特色がありますが、このような特別な触れ合いができる街は珍しいのではないでしょうか。★
5月場所が終わった先日、久しぶりに両国国技館までの遊歩道を散歩しました。人混みが嫌いな私にとって本場所中は絶対に近寄らないJR両国駅西口までの道です。その途中にあるAPAホテルに大勢の外国人観光客が吸い込まれていく。浅草にも近く、東京駅まで4駅で行けるアクセスの良さで外国人に人気と聞きます。帰り道にふと見上げると、右に昭和4(1929)年に建てられた両国駅舎、左に両国国技館、正面に東京都江戸東京博物館、その他NTT電波塔、昭和5(1930)年に建てられた東京都慰霊堂の三重塔、わが母校である区立両国中学校、第一ホテルが入る国際ファッションセンタービル、そしてその後ろに東京スカイツリーという大物建築物が乱立する姿を見ることができます。
★
この雑多な光景は決して好きではないのですが、残念ながら、帰ってきたなあと気持ちが落ち着く景色なのです。そして鬢付け油の香りだけでなく、今や多国籍語が飛び交うまでに変化したこの両国。古きを残し今後どのような変化を見せるのか楽しみです。

鈴木 文雄(すずき・ふみお)
東京都建築士事務所協会理事・墨田支部、有限会社鈴木設計
1966年 東京都生まれ/1989年 東京デザイナー学院卒業後、有限会社鈴木設計一級建築士事務所入社/現在、同代表取締役
1966年 東京都生まれ/1989年 東京デザイナー学院卒業後、有限会社鈴木設計一級建築士事務所入社/現在、同代表取締役








