関東一円、140円のJR旅行
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10年ほど前の話です。ゴールデンウィークのある一日、私は関東一円のJR各線を乗り継ぎ、当日限りの「たった140円」で巡る旅に出かけました。これは、JRの「大都市近郊区間内運賃制度」を利用し、最短ルートで計算される運賃を活用した旅行です。「乗り鉄」でも「撮り鉄」でもない私ですが、以前からこのぶらり旅に出たいと思っていました。
旅のはじまりは東京駅で駅弁を
朝8時東京駅の駅弁コーナーで旅の風情を楽しもうと、ちょっと奮発して駅弁を購入。そして切符は最短距離の140円を購入し駅構内へ。まずは8:21発の東海道線に乗り込み車窓から春の街並みを眺めながら茅ヶ崎へ向かいました。休日の東海道線はやはり混んでいますが、ボックス席に座れたのは幸運でした。車窓から眺める春の雰囲気と旅の風情を楽しむため駅弁を食べました。1時間弱で茅ケ崎に到着、相模線へと移動します。
相模線〜八高線:のどかな風景と静かな旅
茅ヶ崎9:27発の相模線ではのどかな風景と涼風を感じ、そして大山を遠くに眺め旅行気分は高まってきます。橋本には10:26着。少し小腹がすいたので、ホームの立ち食いそばで腹ごしらえ。こうした何気ない食事も旅の中では格別に感じます。ひとりちょっとした悦に入っていた瞬間です。橋本から横浜線に乗り換えて八王子には10:44到着。八王子では駅ナカが充実しているようで少しだけお買い物。そこから川越線直通で高麗川へ11:44到着。ここからは八高線に乗り換え高崎へ向かいます。八高線の車窓からは木立の中を抜けるさわやかな区間もあり、また、トレッキング装備の乗客や自転車を持ち込んだサイクリストの姿も、自然とのふれあいに癒されました。13:09高崎着。
高崎駅での休息とお土産を
高崎では乗り継ぎまで少し時間があったため、駅ナカでティータイム。中核都市らしく駅ナカは充実しており、地元のお菓子や漬物をお土産として購入しました。駅の外に出られない制限がある中でも、駅ナカがこれだけ発展しているのは、ちょっとした長旅にはありがたい存在。
両毛線〜水戸線:人の流れと花の香り
13:48に高崎発の両毛線で東へ向かいます。途中の車内には「足利フラワーパーク」帰りの乗客で混み合い、車内は急に賑やかとなってきました。沿線には春の訪れを感じさせる空気が漂っており、乗客の高揚感を感じるひと時でもあります。15:30小山に到着、すぐに15:36発の水戸線に乗り換え友部方面へ、途中結城駅周辺からはお祭りのような音が遠くに聞こえ、人の流れに季節感が加わって旅はますます楽しくなっていきます。そして車窓からは筑波山が見えてきました。
夕暮れの常磐線、そして帰路へ
友部16:46発、常磐線で東京方面へ向かいます。当初は、我孫子から成田線方面へとさらにぐるりと周ることも考えましたが、今回は休日で各路線が思いのほか混雑しており、加えて疲れも出てきたので旅の終わりを決意。夕暮れの風景に包まれながら、18:33上野到着。上野から山手線で神田まで移動し、19時すぎに旅を終えました。
移動距離約450km、運賃はなんと140円!
この一筆書きの旅の総移動距離は約450km、通常の運賃で計算すればおよそ8,000円以上かかります。しかし、東京駅〜神田駅間というたった一駅分(140円)の乗車券で、すべての一筆書き行程をクリアできました。それを可能にしてくれるのが、JRの「大都市近郊区間内運賃制度」。
ただし、ルール違反(往復・重複)や途中下車はできないため、車内改札に遭うと指摘される可能性もあるとか。事前に路線図を綿密に計画し説明することがポイントです。そして駅を出るときは有人改札を出ることが肝心です。
おわりに:ちょっとした自分だけの贅沢な時間
1日中、列車に揺られながら景色を眺め、人の流れを感じ、季節のにおいを感じ取る。そんな旅はたとえ豪華ではなくても、心を豊かにしてくれます。神田駅近の居酒屋で旅の疲れを癒す夕食と、一寸一杯の贅沢をしました。そして、たった140円でこれほど遠くを廻れたという事実が、何より心に残る感動でした。ボックスシートで食べた駅弁、木々の間をぬけた八高線、駅ナカで買った高崎の漬物、車窓から見た山々、乗客の姿、どれもが記憶に残る旅の断片です。そしてこの感動は心の奥にしっかりと刻まれました。
この4年後には同様に房総半島一周一筆書きの旅に出ました。
近いうちにまた「普通の旅でない旅」に行きたいと思うこの頃です。

山本 誠(やまもと・まこと)
東京都建築士事務所協会理事・渋谷支部、株式会社アイ・エー・シー
1951年 愛知県生まれ/1970年 県立愛知工業高等学校卒業後、地元建設会社入社/1970年 茜設計入社/1986年 株式会社アイ・エー・シー設立
1951年 愛知県生まれ/1970年 県立愛知工業高等学校卒業後、地元建設会社入社/1970年 茜設計入社/1986年 株式会社アイ・エー・シー設立







