都市・街・建築──まちづくりと建築社会制度 第5回
建物用途の規制(その1)
河村 茂(都市建築研究会代表幹事、博士(工学))
建物用途の規制
 建築物の用途は、目標とする市街地像を実現するため、建築準法に基づき都市計画区域等における建築規制のひとつとして実施されている。建築物の用途を規制する方法としては、用途地域に代表されるゾーニング手法と、地区計画に代表される詳細計画手法とがある。
 ゾーニング手法は用途地域にみるように、規制の幅を広目にとって規制を行う方式である。この方式は建築活動等が旺盛で、都市の土地利用が漸次変化していくような状況下で、都市成長の各段階に対応、市場の求めに応じ軋轢少なく、予定調和的に土地利用転換が進んでいくような場合に有効といわれている。ただし、地域の環境水準を持続的に維持していくことは難しく、時として建築紛争が発生することがある。
 一方、詳細計画手法は、土地に即しきめ細かく土地利用を規定することになるので、地域の将来像が定まっていないところには適用しにくい。また、この手法を用いると将来方向を固定化することになるので、経済成長に伴い都市全体が拡大するなど、土地利用が大きく動いているような場合は、地域に即して将来像を描くことが難しくなるので、無理に将来方向を固定化すると、都市の発展を阻害しかねない。しかし、土地利用をきめ細かく規定するので、地域の環境状態は安定的で将来に向け持続的である。
 そこでわが国では大正・昭和の経済成長・都市拡大期にはゾーニング方式、そして社会が落ち着き経済も安定化してくると詳細計画方式を導入、近年は都市の安定・成熟化に伴い、この手法の活用区域が次第に広がってきている。今日のわが国はゾーニング方式(用途地域等)をベースに、必要に応じこれに詳細計画方式(地区計画等)を重ねる方法で、建物用途が規制されている。ここでは、近代建築法制において建物用途規制のベースとなるゾーニング手法を取り上げ、基本的なゾーニングとしての「用途地域」、そしてこれを補完するその他の用途にかかるゾーニングについて紹介する。なお、詳細計画手法については、地区計画の項で別途取り上げることとする。
写真❷ 法に基づく規制誘導による新宿副都心整備
出典:(株)吉村総合計画鑑定『東京探索033』新宿エリア⑨ 浄水場から生まれた新宿新都心挿入写真
https://www.yoshimura-pa.co.jp//blog10820190416/
表① 用途地域による建築制限の変遷
図① 用途地域の種別と土地利用イメージ
出典:国土交通省「みらいに向けたまちづくりのために」
https://www.mlit.go.jp/common/000234476.pdf
基本的なゾーニングとしての用途地域
 用途地域制度は、ゾーニング手法の中核をなし、その基本となるもので、都市整備の一手法として、土地利用計画の実現に向け建築物の用途等を規制する、建築規制の代表的手法である。用途地域は地域ごと、類似の用途をグループ化し、相互に相性の良くない用途を排除する形で、一定の幅を持って規制する。この規制の幅を広くとると建物の更新において融通が利き、市場の求めに応じ土地利用転換が円滑に進むので、成長拡大期の動態的な市街には有効である。
 用途地域が指定されると、環境を維持するべく相性の良くない用途の混在を抑制、また類似の用途を集め地域の等質性を増進するので、当該地域にあった都市施設整備や生活関連施設の整備が進み、都市機能は増進、都市活動は円滑化する。当初の用途地域指定は、区域指定の単位が広く荒かったため、規制内容が緩いこともあり、環境維持の効果は弱かった(ただ当時は敷地規模が大きかったので、悪影響は緩和された)。その後、地価が高騰し敷地規模が小規模化したり、生活水準の向上に伴い市民の環境保全意識が高まりを見せたため、都市化の進展にあわせ順次、用途の純化を図る必要が生じ、用途地域区分の細分化、区域指定単位の狭域化の方向に進む。

【目的】
 土地利用計画の実現に向け住商工の建物用途を、一定の幅を持って建築規制することで、住宅地への工場・店舗等の進出に伴う住環境の悪化を抑制、併せて形態規制を行うことで地域環境の維持を図る。また、類似の用途を集め利便施設の整備を図ることで、商工業等の利便と能率の増進に寄与、都市機能の発揮を促進する。さらに、都市基盤施設の整備と均衡を図る形で、地域に相応しく建築物の用途・密度・形態等を規制することで、都市環境の悪化を抑制し健全な都市の形成に寄与、都市活動を円滑化し経済成長に適応した近代的な産業都市の整備を促進する。
 すなわち、ゾーニングとしての用途地域制の目的のひとつは、市街の形成に必要とされる都市基盤施設、とりわけその代表である都市計画道路の整備との整合の確保である(写真❷)。市街の拡大に伴う土地利用の変化の状況等をにらみ、道路整備等と均衡のとれた形で建築行為をコントロールする。また、もうひとつの目的は、近隣関係として地区環境を整える意味から、産業化の進展に伴う市街への工場立地に伴う騒音・振動、煤煙・悪臭などの公害や、危険物の集積による火災被害などを抑制するなど、住居の環境の安寧を確保することである。

【意義】
 経済成長とこれに伴う都市拡大の動きを受け、市街地における土地利用転換が地域環境や都市施設整備と折り合いを付けながら、都市活動の機能性が発揮されるように仕組む。
 具体には、
①都市機能(住居、商業、工業)の立地を制御
②用途規制により相性の悪い用途相互の混在を抑制し都市機能を発揮、これにあわせて密度・形態を規制し近隣環境を維持
③建築活動の動きと都市施設整備との均衡を確保し、都市活動を円滑化する。

【制度の変遷】(表①)
 産業革命を経たのち、経済の隆盛を受け都市拡大の動きが出た1910–20年代、用途地域制度が導入される。この時の用途地域は住商工の3種類(その他に後に準工業地域となる無指定区域があった)でスタートする。また、この時、あわせて工業地域内特別地区と防火地区それに美観地区の制度が創設される。
 この時代の密度規制は、用途規制をベースに、建蔽率制限と高さ制限とを組み合わせ、間接的に行われた。建築規制の適用においては、事業活動の広域化や都市整備の迅速化が求められ、市街地建築物法が施行され、全国統一的な対応(基準の標準化、仕様書方式での規定)となり、全国的に広く事業を展開する者にとっては建設活動がスムーズとなった。なお、市街地建築物法の成立以前は、各地方ごとに条令によって建築規制が行われていた。
 その後1938年になると、用途地域制度を補完するべく、専用地区(住居、工業)、高度地区、空地地区の制度が創設される。
 戦後の1950年、市街地建築物法に代わり建築基準法が成立すると、用途地域はここで準工業地域を加え4種類となる。この時、特別用途地区が創設される。
 1960年代に入り高度経済成長期を迎えると、1961年に容積地区(1963年に創設、1970年に用途地域とセットとなり普遍的な制度となる)の先駆けとして、特定街区制度が創設される。
 そして経済成長に伴い人口・産業が都市に集中し、大都市化が進み都市圏を形成、市街が拡大していくと建物用途も次第に細分化。すると都市機能の増進や環境維持の面から、用途純化の思想が力を得て専用地域化が進められ、当初の制度化から半世紀が経過した1969年に用途地域は8種類(その後12種類、13種類)へと拡大される。
 また、この時期、容積地区制の導入に伴い絶対高さ制限が廃止され、道路など公共施設整備との均衡を確保するため、建築密度の規制が容積率制限へと変わり直接的に行われることになる(写真❷)。さらに、都市化の進展に対応して、市街地類型に応じ標準的な用途地域モデルが設定され(図①)、市街地における建築規制は全国一律的に、用途・密度・形態がセットで規定されるようになる。しかし、この用途純化・規制内容標準化の考え方は、場合により生活上の不便をもたらすことにもなるので、地域の環境性能と利便性とのバランスを考え、行き過ぎないよう注意が必要である。
 その後、1970年代後半から1990年代にかけ、低成長経済を経て社会が安定成熟傾向を強めると、都市全体的な統制より地区レベルのまちづくりが、また土地利用規制の面においてもきめ細かに対応が求められるようになり、地区計画制度が導入される。
 そしてバブル経済が崩壊し停滞期に入る1993年に用途地域は12種類になり、当初の制度化から凡そ1世紀を経た2017年に、農業的土地利用にも配慮し田園住居地域を加え13種類となる。また、21世紀に入ると都市再生を図るべく、大街区などで建築物の超高層化を推進するため、密度・形態規制において建築規制の緩和・合理化が求められ、高さ制限に天空率方式が導入され斜線制限との間で選択制となる。

【用途地域の狙いと種別】
 用途地域は、市街の建築規制の大枠を定めるもので、利害の共通する種類の用途のものは、同じ地域に立地するよう規制することで、相互の立地環境を安定化させ利便の増進を図るとともに、その一方で利害の相反する種類の用途は、なるべく同じ地域に立地しないよう規制することで、用途の混在を防ぎ一定の環境を保持するものである。現在、用途地域の種別は13種類ある(図①)。また、この用途規制とあわせ建築物の密度・形態等に一定の枠をはめ規制することで、都市レベルの公共・公益施設の整備に目標と方向を与え、地域に見合った適切な都市施設を整備していこうとしている。

【用途地域制度の組み立て】
 用途地域は、都市のダイナミックな動きに柔軟に対応するため、市街における土地利用転換を前提に、ある程度の用途混在を容認し、建築物の立地をコントロールする手法である。その用途地域規制の方法としては、地域ごとに許容できる用途の範囲を限定的に明示する積極的なやり方(立地用途明示型)と、逆に、許容できない用途の範囲を明示する消極的なやり方(禁止用途明示型)とがある。
 前者は、土地利用の方向が明確で、住民もこれを支持している場合に有効な方法である。現行制度では第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域および第一種中高層住居専用地域、田園住居地域がこれにあたる(その他の用途地域は、全て禁止用途明示型である)。
 また、後者は、土地利用の方向が今ひとつ明確でなく、住民の合意もされていない地域に用いられる。この場合は、近隣生活公害の防止など、どうしても矛盾あつれきを起こすものに限り規制を行うことになる。しかし、この型の場合、公害工場の類は一応規制できるが、事務所・店舗など規模や形態の問題を別にすれば、用途そのものはあまり問題にならないものについては規制が困難なことから、用途の混在状況に応じ段階を分け、まるで望遠鏡のようにいくつかの筒がせり出すような形でのスライド式の規制方式となる(表②)。
 建築基準法による用途規制を望遠鏡に見立てると、立地用途明示型がひとつの筒、残りの第二種中高層住居専用地域から準工業地域までがひとつの筒、そして工業地域と工業専用地域がまたひとつの筒で、この3つの筒ごとに大きく用途が規制されている(表②)。以上のことからもわかるように、現在の規制方式は法が予想しない新たな用途が出現した場合、立地用途明示型の地域を除きトラブルが起こる可能性を残している。これを根本的にかえるには、地区計画など詳細計画手法の導入が必要となる。しかし、この手法は土地利用転換の激しい成長拡大期に適用することは容易でなく、安定成熟期に入った都市において有効な方法とされている。
 なお、用途規制における例外許可の扱いであるが、用途地域に基づく用途規制が比較的緩く行われている現状に鑑み、例外許可を運用する場面は少ないが、地域状況が移り変わりつつあるのに、タイミングよく用途地域の見直し変更ができない場合などに活用が考えられる。また、当該地区には必要ない施設であっても、広域的に見ると必要な施設もある。そうしたものは、地域の環境を害する恐れがなく、公益上やむを得ない場合などに、例外許可の制度が運用される。
 用途地域の指定は、都市整備の長期構想や基本計画等をふまえ、都市計画決定権者が指定方針および指定基準を策定し、これに基づき地域の実情を勘案してなされる。原案は都道府県等の考え方に沿い地元区市町村がまとめ、一定の手続きを踏んで都市計画として決定される。用途地域の種別は13種類で(図①)、それぞれの用途地域毎の建物用途の制限の概要は、表②のとおりである。
 用途地域の規制タイプは、表②に見るように、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域および田園住居地域は、用途規制として先に述べた「立地用途明示型」で積極的な規制方法を採用している。その他の用途地域は「禁止用途明示型」で消極的な規制方法となっている。また、第二種中高層住居専用地域から準工業地域までは、順を追って制限が緩やかになっている。
表② 用途地域による建築物の用途制限の概要(一覧表)
(クリックするとPDFファイルが別ウインドウで開きます)
出典:東京都ホームページ「用途地域による建築物の用途制限の概要について」
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kanko/area_ree/index.html
【建物用途規制の考え方】
 それでは建築基準法における、主な建物用途にかかる規制の考え方をみていこう。

① 住宅全般
 建物用途の別に用途地域における制限内容(表②)をみると、共同住宅を含む住宅全般と「老人ホーム」などは、暮らしの基盤となる施設であることから、工業専用地域以外はどの用途地域においても、建築可能となっている。なぜ、工業専用地域が建築禁止なのかというと、住宅系の用途は暮らしの基盤施設として、原則どの地域にでも自由に立地できる性格のものであるが、工業専用地としての利用を前提に、公共施設整備がなされた土地の区域について、住宅の立地を認めると、大都市圏など住宅需要が強い地域では、いつしか地価負担力の大きい住宅が、数多く進出し工場を追い出す(いわゆる軒先貸して母屋を乗っ取られる)状況がみられるようになることから、公害工場の立地も想定した工業専用地域については、住工混在に伴う新たな投資を抑制し、工業専用地として公共投資の有効性を保持するとともに、住宅立地に伴う工場公害や危害の発生を未然に防止する観点から、住宅等の立地を禁止している。

② 店舗
 「店舗」については、住宅地等における商業サービスのための施設として、基本的には需給関係に基づいて、住宅周りに配置されるものであるが、商業サービスの利便性より住環境の維持が優先される低層低密度の住宅地(低層住居専用地域および田園住居地域)においては、地域の生活環境を守る意味から、地域コミュニティにおける生活の維持に必要な店舗のみの立地を認め、地域コミュニティに関係しない、外部の不特定多数の人びとをサービス対象とする規模・形態を有する店舗の建築を基本的に禁止している。また、工業専用地域においては、やはり地域の外部に存する不特定多数の人びとをサービス対象とする、物品販売店舗と飲食店について建築を禁止している。

③ 事務所
 「事務所」は、規模(延べ面積)・形態(高さ、階数)を別にすれば、用途的には住居専用地域(消極的な規制方法をとる第二種中高層住居専用地域は、延べ面積1,500㎡以下でかつ2階以下なら建築を認めている)および田園住居地域を除き、その他の用途地域においては建築が禁止される性格の施設ではない。しかし、経済の拡大期に地価が高騰し、都心およびその周辺の住宅地において事務所立地が進み、住宅地の環境を阻害したり、それら地域において住宅の立地が難しくなったりしたため、都心およびその周辺に多く見られる用途混在型の住宅地のうち、第一種住居地域については床面積が3,000㎡を超える大規模な事務所の建築を制限することになった。その他の用途地域は規模・形態にかかわらず建築可能としている。

④ ホテル・旅館
 ホテル・旅館などの「宿泊施設」は、外部から不特定多数の者を吸引する施設であることから、商業系用途地域と混在型の用途地域(準工業地域、住居系用途地域〈第一種住居地域は規模の制限がある〉)について建築可能としている。住居専用地域、田園住居地域および工業系用途地域(準工業地域を除く)については、建築を禁止している。
 劇場や映画館、また、パチンコ屋やキャバレーなどの「遊戯・風俗施設」は、不特定多数のものをサービス対象とする施設であることから、近隣商業地域、準工業地域、工業地域、準住居地域、第二種住居地域については、環境の悪化に留意し建物用途に応じ立地を制限している。

⑤ 公共施設・病院・学校
 「大学や専修学校等」は、そもそも不特定多数のものをサービス対象とする施設であることから、低層低密度の住宅地(低層住居専用地域および田園住居地域)においては、その環境を維持するため建築を禁止している。また、工業系の用途地域(準工業地域を除く)においては、大学や専修学校等の立地環境を保持する趣旨から、建築を禁止している。
 「小・中学校など普通義務教育施設としての学校」は、住宅と連携する施設であり、住宅と併せて建築を容認していく性格のものであるが、その立地環境を保持する趣旨から、工業系の用途地域(準工業地域を除く)においては、建築を禁止している。
 「寺社や診療所等」は、そもそも地域コミュニティ施設として存在しており、これらの施設は住宅や商業、また工業の立地環境を阻害することはないので、どの用途地域においても建築可能としている。ただ似たような施設である「病院」については、店舗や事務所と同じような考え方をとっており、その規模・形態によってはサービス対象が地域の外部に存する不特定多数の人びととなることから、これらの人びとが地域に入り込み、住環境を悪化させるおそれがあるので、低層住居専用地域および田園住居地域では、建築を禁止している。
 また、工業系の用途地域(準工業地域を除く)においては、病院の立地環境を保持する趣旨から建築を禁止している。

⑥ 工場・倉庫
 「工場・倉庫」については、住居の環境を保護するため、住居専用地域および田園住居地域(一部のものを除く)において、建築が禁止されている。また、その他の用途地域においては、施設の種別に応じ防災面からの危険性や、環境面からの問題発生のおそれなどを勘案し、用途地域に応じ建築が制限されている。

【用途地域制度の役割と限界】
 用途地域は、通常、色分けされた地図に塗り分けられて表示されるため、これが将来の土地利用の方向を示すものと認識されやすい。だが用途地域は建築規制を通じ、土地利用を実現する手段、ツールであり、土地利用の目標を示すものではない。
 用途地域はゾーニング手法として幅広く建築行為を規制する役割を有しており、道路や公園など都市施設の整備、土地区画整理や市街地再開発などの事業施行、またその他の法定又任意の開発・建築事業、そして地区計画等に基づくきめ細かな土地利用の規制誘導、さらには、これらと連動した税財政金融上の措置や、行政指導などの付加的措置、まちづくり協議会での協議・調整などが相まって、はじめて都市の将来像、土地利用の目標に近づくことができる。
図❷ 特例許可手続きの流れ
出典:国土交通省HP
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001717406.pdf
用途制限の緩和など
【用途の許可】
 用途地域制度の導入当初は、公衆衛生(煙害、騒音・振動、悪臭など)面を中心に、生活環境の保護を図るとともに、工場等の市街への集積に伴う住工混在問題の発生抑制を中心に、異種用途の混在を大きく規制してきた。この趣旨から、用途の許可にあたっては、地域環境が悪化しないかどうか、周辺住民の受容性も含め確認するとともに、土地利用計画などに定める目標・方針に照らし、公益性があるかどうかも見極めて対応している。
 用途の許可は用途地域規制が概ね緩い制限となっているため、許可事例がそれほど多くみられるわけではない。しかし、昨今、建築における構造・設備面における技術進歩もあり、環境を害さないもの(たとえば、低騒音・低振動の機械設備など)もでてきており、仕様書型で一律に規制するだけでなく、性能を評価し柔軟に対応していくことも求められる。昨今は、地区計画制度を活用し、ここにまちづくりの目標や土地利用の誘導方針を規定、これを根拠に許可制度を運用する事例も増えてきている。
 それでは低層住居専用地域等における用途許可の例をみてみよう。これら地域では住環境の悪化抑制を目的としていることから、地域内に建築される施設の用途のほか、来街者の規模、集客における後背圏の広がりなどにも対応し、許可の是非が多角的に検討される。対象用途としては、コンビニ店舗、観光地の土産物屋・工房、郷土資料館、インターナショナル・スクール、下水処理場の管理棟(状況により用途地域指定の単位規模を有していれば、準工業地域が指定され用途適合となるが、低層住居専用地域が指定されている場合は、事務所として用途許可をうけることに)などが考えられる。なお、用途にかかる特例許可の手続きの流れを、図❷に掲げておく。また、用途許可等の仕組みを活用した事例として、代官山のまちづくりを紹介する。具体には、代官山ヒルサイドテラスにおける、「商業・文化施設」の用途許可である。
写真❽ サッポロビール博物館(工場→博物館)
出典:サッポロビール博物館札幌挿入写真
https://www.sapporobeer.jp/brewery/s_museum/
写真❾ 臨海部建物「事務所→共同住宅」
出典:竹中工務店建築作品挿入写真「ラティス芝浦」
https://www.takenaka.co.jp/majorworks/21506622006.html
写真❿ 旧小笠原伯爵邸「住宅→レストランへ(飲食店)の転用事例」
出典:KIWAMINO挿入写真「小笠原伯爵邸」
https://www.kiwamino.com/articles/restaurants/6630
【建物の用途変更】
 昨今、注目されている「リノベーション」。リノベーションとは、既存の建物に設備や内装など大規模な改修工事を行い、用途や機能に変更を加え性能を向上させたり、新たに価値を付け加えたりすることをいう。具体には、空調・換気設備を新設したり、床を畳からフローリングに張り替えたり、壁を撤去し2部屋を1部屋にしたり、用途を住宅から店舗や保育所などに変えたりすることをいう。リノベーションのうち用途変更を伴うものを、特に「コンバージョン」という。工場を文化施設(博物館)に用途変更した「サッポロビール博物館」など(写真❽、❾、❿)は有名である。
 コンバージョンにより用途を変える場合は、内容により確認申請など法的な手続きが発生する場合がある。
 「用途変更」とは、既存の建築物の用途を変えて、別の用途に転用することをいう。たとえば、住宅を事務所に、共同住宅を旅館・ホテルに、事務所を保育所などに変更して利用する場合が該当する。確認申請(公的機関の審査)が必要かどうかは、変更後の建築物の用途・規模により異なる。確認申請が必要なものは、変更後に建物用途が特殊建築物(建築基準法 別表1)となるもので、変更部分の床面積が200㎡を超えるもの。ただし、特殊建築物への変更でも、類似の用途(第137条の18に規定)相互の間の変更の場合は確認申請が免除される。確認申請が不要な場合でも、違法なものを建築していいということではなく、公的機関の審査はなくとも設計者の責任のもとで建築基準法の規定に適合させるということである。
 なお、用途変更の確認申請に、「完了検査」という行為はない。ただし、工事が完了したならば、その後4日以内に「完了届」を建築主事に提出する必要がある。また、用途変更においては法規定の一部が準用されることになっているが、準用されない条文であっても法適合性を検討し、安全を確保することは建築士の責務となる。さらに、建築物を法に適合する状態で維持していくことは、建築基準法において所有者・管理者の努めとなっている。
Column 1
写真❶ 事業施行によるパリ大改造(19世紀後半)
出典:ECPAD「空から見たパリ」挿入写真
https://imagesdefense.gouv.fr/fr/paris-vu-du-ciel-photographie-aerienne
近世から近代へ、変わる都市整備方式
 幕末、黒船が来航すると、殖民地化の恐怖におびえ地方雄藩が連携、日本の政治構造が転換し明治維新が成る。その後は「欧米に追い付け追い越せ」と近代化産業化に邁進する。
 この近代化過程において都市の整備は、パリ(写真❶)の大改造に例を見るように予算措置に基づく都市計画事業の執行という形がとられる。しかし、その後の産業の発展と経済の成長、それを受け市街が拡大していく状況下で、都市整備は事業執行的な対応ではとても追い付かず、中長期の構想に基づく法によるコントロール(建築の規制と都市施設の計画的な整備)が求められるようになる。
 都市東京も明治期の市区改正は、パリ同様に都市計画事業としての対応であったが、その後は大正期に入り都市計画法・市街地建築物法を確立すると、法的コントロール下で都市整備に対応していくことになる。
 明治期の日清・日露の戦争を経て産業革命が成り、大正期の第一次世界大戦を契機に経済が隆盛となり、都市に工場立地が進み規模を拡大する。一方、医療の進歩や水道水の塩素殺菌など公衆衛生面の改善もあり、乳幼児死亡率が改善し人口が徐々に増大、また雇用と所得を求め地方から人口の移動もあり、市街に建物が密集し住工が混在、生活環境の悪化が進み、社会問題となる。
 こうした状況下で、適切に市街を整備していこうとすると、まずは工場立地に伴う住工等の用途混在を防止、あわせて市街の過密化を抑制する必要がある。また、これとあわせ建築物の集積状況に応じ、道路等の都市基盤施設を整備することで、円滑な都市活動の確保も重要となる。
 そこで創設されたのがゾーニング制度としての用途地域制度と建築制限を伴う都市計画施設の制度である。
 当時、都市市街には平屋の木造住宅等が広がっており、鉄筋コンクリート造等の堅い建築物は、都心の百貨店や事務所など僅かでしかなかった。そこでゾーニングにより用途混在の抑制を含め建築行為を規制し、堅い恒久的な建築物が建たないうちに計画道路等の範囲を定め、順次事業化していく方法が選択された。
 大正期の都市は建築物も今日のように用途が細分化されておらず、主な用途は住宅(戸建、長屋、アパート、店舗・作業所との併用住宅)、事務所、店舗、工場、倉庫などで、建築規制においても大きく住商工に区分し対応していれば、この時代はこと足りた。
 用途地域制度の実際の適用状況をみると、当初の1920年は全国の6大都市に適用されたのみであった。しかし、その数年後には50ほど、10年後には100ほどの全国の都市計画区域に適用されるようになる。用途地域の指定は、大方の地域では現状の土地利用を追認する形でなされた。
事例紹介
写真❸ A・B棟
出典:ECPAD「空から見たパリ」挿入写真
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒルサイドテラス
写真❹ F・G棟
筆者撮影
写真❺ F・GからD棟を望む
筆者撮影
写真❻ 旧朝倉家住宅
出典:渋谷区「重要文化財旧朝倉家住宅施設案内」挿入写真
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/shisetsu/bunka-shisetsu/asakura/asakura_00004.html
写真❼ ヒルサイドテラス全景
出典:TOKYOWeb「建築家槇文彦さんと「代官山らしさ」を生んだ朝倉不動産」挿入写真
https://www.tokyo-np.co.jp/article/247113
図③ ヒルサイドテラス施設配置図
出典:Voice of 木村工務店「図と地」挿入図(「ヒルサイドテラス・ウエストの世界」槇文彦編著2006.4.10より引用)
https://www.kimuko.net/blog/archives/2013/03/post_439.html
代官山の漸進的なまちづくり──用途許可と一団地認定そして用途地域変更、地区計画
 このまちは旧山の手通りに位置、高低差20mの台地上に広がっており、通りを軸に緑豊かな街並みを形成している。この通り沿いには1967年の第1期工事着工から、1992年の第6期完成まで四半世紀もの時間をかけ、通り沿いにヒルサイドテラス(住宅を中心に、高感度なショップやカフェ&レストラン、ギャラリーなどを含む複合建築群)という、計13棟に及ぶ低層集合住宅が順次、整備されてきた(写真❸、❹、❺、❻、❼、図③)。この地のまちづくりは連鎖型で修復型の持続的なまちづくりとなっている。都心部等でよく見かける、大街区方式の再開発によるまちづくりは、事業が始まると数年という短期間で終了してしまい、その後の50年ほどは維持保全と運営管理にあたることになり、都市構造や社会ニーズの変化に対応し、柔軟に空間を設え直すことが難かしい。
 しかし、ここ代官山の低層集合住宅群は、そうした変化に対応し魅力を保ってきている。この地の開発整備がスタートした当時、将来的にこのまちづくりが、どこまで広がりをもって事業展開していくのか、当事者においても明確でなかった。当該事業を進める地元の中小デベロッパーは、資金調達のこともあり、土地活用にあたり性急な開発は望まず、完成したものに対する世間の評価を見極めるかのようにして時間をかけ、その間、資金力や開発力を貯え、順次、街並みのブラッシュアップを図る形で、漸進的に開発を進めていった。すなわち、東京の成長・発展など、移ろいゆく時代の空気を嗅ぎ取り、代官山を取り巻く環境の変化を順次、織り込む形で建築を進める、段階的開発方式での事業展開を望んだ。
 そうして先行する開発を受け、次なる開発がこれをつなぐよう、正に連歌のようにして、場所のもつ価値を順次、高める方向で事業は進められていった。いわゆる身の丈にあった形での、スロー・ディベロップメントを志向した。結果、東京の都市構造の変化に適応した形でまちづくりは進み、最終的に文化財(旧朝倉邸)の保存も含め、移ろいゆく時代の空気を嗅ぎ取り、時間軸に沿ったまちづくりとして、世間でもあまり例を見ない同一事業者(朝倉不動産)、同一建築家(槇文彦、1993年プリツカ―賞)のコンビで、20~30年間にもわたる長期の地区開発整備(まちづくり)となった。
 この代官山の低層集合住宅群の計画にあたり、事業者と建築家は、都会暮らしのアメニティを追求、この地を気に入って住む人が、長期にわたり居心地良く暮らせるよう、店舗や文化施設などを適度に混ぜるとともに(ミクストユース)、沿道型の集合住宅としてプライバシーの確保とコミュニティの形成に留意し、良質な環境・景観を備えた通りのまちづくりとなるよう、微妙に見え隠れする奥行きや深みのある巧みな空間構成を企図し、事業をプロデュース&デザインしていった。また、地区内は徒歩で快適に動き回れる、ヒューマンスケールのまちとなっている。
 このまちづくりにおいて、具体に取られた法制度上の措置、すなわち、活用した手法は「用途の許可制度」と「一団地認定制度」である。
 日本の先を行くアメリカ社会に学び、生活してきた建築家の目から、日本経済の成長や都市発展の動きをみると、将来的な東京の都市構造の変化を、ある程度見通すことができた。旧山手通りに面するこの地は早晩、土地利用が変化し、将来的には用途地域(当初は第一種住居専用地域:容積率150%、高さ10m)も見直されると……。
 事業者とコミュニティ・アーキテクトとしての建築家は、この場所のもつ固有な魅力を地域価値にまで高めるべく、当初からアーバンデザイン手法を導入し、用途の複合性と多様な公共スペースによる、都市らしさの創出をイメージして取り組んだ。すなわち、この地が、坂道沿いの準幹線道路に面した敷地であることから、住居が半地下になるのをためらい、メゾネット方式の低層集合型の住居を基本に、低層部に商業文化施設を配し、用途複合化によるコンパクトな密度の高い空間構成を図り、静けさとともに適度な賑わいと文化交流のあるまちづくりを志向した。
 そのため「用途の許可」制度を活用し、建築審査会の同意を取り、禁止されている店舗等の用途を実現した。また、コーナープラザやペデストリアンデッキ、中庭プラザやサンクンガーデンなど、アーバニティあふれる豊かな外部環境を創出するためには、複数の建築物を一体的に配置構成することが求められた。そこでヒルサイドテラスでは計画のスタート時点から、建築は団地計画として構想され、建築基準法の特例措置である「一団地認定」の制度の適用が企図された。
 その後、2期・3期と計画が進展するのに対応し、この認定は新たな建築物が付け加わる都度、認定の変更・取り直しという形で進められた。そうして近代的な都市デザインツールを駆使し創出された街並み環境は、とても新鮮で、建築関係者だけでなく、街人の心までも惹きつけてやまなかった。
 さらに、オフィス的利用については、法に適合した建築仕様(住宅)のまま、事務所としても使える、メゾネットタイプの集合住居として計画した。使い勝手からみると、必ずしも法の趣旨に合わないかもしれないが、そのうち時代が追いついてくれると考えた。その時期(用途地域の見直し変更、第一種住居専用地域→第二種中高層住居専用地域:容積率300%、建蔽率60%)は、第7期ヒルサイドウェストを整備する時(1998年)にやってきた。しかし、皮肉にもこのコンビによる開発は、ここで終わってしまう。時代がヒルサイドテラスに追いついたところで……。
 その後、この魅力的なまちなみ、良質な環境・景観は、地区計画を活用し保持されるとともに、重要文化財に指定された「旧朝倉家住宅」(写真❻)なども加え、この地の素敵なまちづくりの遺伝子を周辺へと展開するべく、地元が協議会を組織し、まちづくりの協議・調整ルールを確立、これに続く地域の開発整備に対応している。
河村 茂(かわむら・しげる)
都市建築研究会代表幹事、博士(工学)
1949年東京都生まれ/1972年 日本大学理工学部建築学科卒業/都・区・都市公団(土地利用、再開発、開発企画、建築指導など)、東京芸術大学非常勤講師(建築社会制度)、(一財)日本建築設備・昇降機センター常務理事など/単著『日本の首都江戸・東京 都市づくり物語』、『建築からのまちづくり』、共著『日本近代建築法制の100年』など/国土交通大臣表彰など