木材会館見学と中大規模木造建築セミナー
第4ブロック|令和7(2025)年2月20日@木材会館
谷川 淳一(東京都建築士事務所協会豊島支部副支部長、谷川淳一一級建築事務所)
阿部 弘明(東京都建築士事務所協会豊島支部支部長、(株)空間デザイン代表取締役)
阿部 弘明(東京都建築士事務所協会豊島支部支部長、(株)空間デザイン代表取締役)
撮影:*1=志知久仁彦、*2=谷川淳一、*3=井出幸子

木材会館前での記念集合写真。*1

1階エントランスホール。*2

6階テラス。*2

6階役員会議室。蓄煙機能を持たせた折り上げ天井。*3

地下1階のヒノキ製受水槽。*3

6階小ホールでのセミナー風景。*2

(安井氏のスライドより)

中大規模木造に関する法律(安井氏のスライドより)
■木材会館見学
第4ブロックの中大規模木造建築セミナー開始前、30分間にわたる木造会館見学の時間が設けられた。まず1階のギャラリーへ。部屋いっぱいに広がるヒノキ舞台。その大きさはもはや、舞台というより広場というほどだ。
壁には建物全体のモチーフとなっている105mm角の木材がランダムに施され、木のサイバーパンクといった趣き。
半階上がると壁は打ち放しへと様変わりし、瀟洒な白木が架け渡された和室が現れる。そこから、外光が射す通路の反対側の奥まったところに茶室がしつらえてある。イサムノグチの行灯は灯っていなかったが、打ち放しを撫でるように落ちる光に、畳と白木とコンクリートだけが浮かび上がる。
エレベータで上階に行くためにエントランスホールに戻ると、今回の集合時間前に皆が三三五五座っていた、これもステージを思わせる大きな木の「腰掛け」が据えられている。
そして、今日のセミナーが行われる6階へ。
小幅板が黄金色に輝く役員会議室の折り上げ天井は、蓄煙性能を上げているという。
ロビーには各国の木の玩具や調度品が展示され、何か懐かしい雰囲気を醸している。このロビーと本日の講演がある小ホールとを繋ぐテラスは、床、天井、壁すべてに105mm幅の木材を透かし貼りしている。外部空間として設計され、避難安全検証法の一次安全区画になっている。
屋根の構造材が木で現しになっているという7階は見学できなかったが、代わりに地下にある木の受水槽を有志で見学した。きれいな木肌の巨大なヒノキの樽!
打ち放しといえば合板型枠のハラミによる柔らかな影も美しいと思っていたが、ここの外部の打ち放しは105mm幅の無垢型枠の撓みのなさと面取りによる出目地が相俟って昔日の土木構造物のようなカッチリした美しさがあり、そこに柔らかくも固い無垢の105角が構成主義を描く。それを背景に全員で記念写真に納まった。(谷川 淳一)
■中大規模木造建築セミナー
木材会館の見学会に引き続き、中大規模木造建築セミナーを開催した。講師は桜設計集団代表、早稲田大学招聘研究員、NPO法人TeamTimberize理事長の安井昇さんを招き、建築設計実務者で中大規模木造建築設計の初心者を対象とした内容、特に防火・耐火設計をメインにお話しいただいた。【木構造を疎外化した「都市の不燃化」政策からの転換】
建築基準法と木造建築の関係についての説明では、1950年制定の建築基準法以降「都市の不燃化」により鉄骨造・鉄筋コンクリート造が主流となる一方、木造は1987(昭和62)年の法改正で「燃えしろ設計」が導入され、1992(平成4)年には3階建てまで準耐火構造の木造建築が可能となるなど、緩和が進められてきた。さらに2010(平成22)年の「公共建築物等木材利用促進法」制定以降、公共建築を木造で建てることが推奨され、法整備も大きく進展している。現在では、大臣認定などを取得しなくても、中大規模木造が実現できる状況が整いつつあるとのことであった。
「公共建築物等木材利用促進法」は、建築基準関係規定でもなく、法令集にも収録されておらず普段なかなか見ない法律だが、木造建築においては重要な法律であることがわかった。安井先生も「第20条までの短い法律ですので、一度目を通してみてください」という話だった。皆様もぜひ一度読んでみてはいかがだろうか?
【中規模木造の実績はまだまだ少ない】
しかし、実績はまだ少なく、木造3階建て学校等は2015(平成27)年以降で年1〜2棟、2019(令和元)年以降の耐火同等建築物(1時間超準耐火+安全上の措置等)も同様に限られている。理由としては、設計者が鉄骨造・鉄筋コンクリート造で検討することが一般的であったこと、また法整備が十分でなかったことが影響している。とはいえ、今からでも木造に取り組めば十分に間に合い、積極的にチャレンジしてほしいというお話だった。
【木材の種別・流通と「延焼防止デザイン」のすすめ】
木材の種類や流通についても解説があった。無垢材、集成材、LVL、CLTなど、材種ごとに取り扱い業者や協会が異なり、それぞれ強度や製造範囲も違う。鉄やコンクリートと異なり自然素材である木材は、早い段階からの調整や確認が不可欠であり、その特性を理解した設計が求められる。また、3階建て木造校舎の実大火災実験映像も上映され、木材の燃え方や「延焼防止デザイン」の重要性を学んだ。防火・耐火設計の工夫により、安全で美しい木造建築が可能であることが実感できた。
【中規模木造設計のチャンスは3階建1500㎡以下準防火地域】
最後に、準防火地域で、3階以下・1500㎡以下の建物は、中大規模木造に挑戦する絶好の機会であるとのこと。10年後にはこの規模の建物は木造が当たり前になる未来を感じることができた。参考図書や参考資料紹介もあり、とても実践的で有意義なセミナーであった。(阿部 弘明)

谷川 淳一(たにがわ・じゅんいち)
東京都建築士事務所教会豊島支部副支部長、谷川淳一一級建築士事務所主宰
1954年 東京都生まれ/1978年 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業/1988年 熊井竹夫建築設計事務所/2014年 現事務所開設
1954年 東京都生まれ/1978年 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業/1988年 熊井竹夫建築設計事務所/2014年 現事務所開設

安井 昇(やすい・のぼる)
桜設計集団代表、早稲田大学招聘研究員、NPO法人TeamTimberize理事長
1968年 京都市生まれ/1993年 東京理科大学大学院修士課程修了/1999年 桜設計集団設立/2004年 早稲田大学大学院博士課程修了
木造建築設計と木造防耐火に関する技術開発・研究開発を行っている。近年は木材・木造の普及啓蒙のために、設計者、木材関係者、行政担当者等を対象にした講演会やセミナーの講師や、普及啓蒙冊子の作成にも携わっている。
1968年 京都市生まれ/1993年 東京理科大学大学院修士課程修了/1999年 桜設計集団設立/2004年 早稲田大学大学院博士課程修了
木造建築設計と木造防耐火に関する技術開発・研究開発を行っている。近年は木材・木造の普及啓蒙のために、設計者、木材関係者、行政担当者等を対象にした講演会やセミナーの講師や、普及啓蒙冊子の作成にも携わっている。

阿部 弘明(あべ・ひろあき)
東京都建築士事務所協会豊島支部支部長、株式会社空間デザイン
1963年 奈良県生まれ/1987年 大阪大学工学部建築工学科卒業/1996年 株式会社空間デザイン設立代表取締役就任
1963年 奈良県生まれ/1987年 大阪大学工学部建築工学科卒業/1996年 株式会社空間デザイン設立代表取締役就任
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