日神山晃一講演会
「都市ローカルに根付き、はぐくむ『場づくり』『まちづくり』『仕事づくり』のプロセス」
豊島支部|令和6(2024)年11月21日(木)@としま区民センター
谷川 淳一(東京都建築士事務所協会豊島支部副支部長、谷川淳一一級建築士事務所)
日神山晃一さん。
築50年以上の木造マーケットをリノベーションした「NishiikeMart」(2019年)。ブルワリーパブを中心にギャラリー、ラジオ局を併設。
(資料提供:株式会社シーナタウン)
 豊島区を拠点に使われていなかった不動産で面白い場所を次々生み出している日神山晃一さんに、表題のテーマで75分間の講演をしていただいた。
 筑波大建築デザインを卒業、船場、丹青など内装業界大手に勤め大量の店舗デザインをこなす中で、「設計だけで終わる刹那的な関係でなく長いスパンで関わって“まちの何者か”になりたい」「世の中への影響力を持ちたい」という思いが芽生えた氏は、豊島区主催の豊島会議、リノベーションスクールに参加し同じ志の仲間を得たことをきっかけに、椎名町に「株式会社シーナタウン」を設立した。
「手づくり」が人との接着剤
 何年も「空き家」だった古い木造のとんかつ屋をリノベして旅館とキッチン&カフェを融合させたプロジェクト「シーナと一平」は、今やホテル検索サイトで最高水準の評価だ。食事やお風呂はなく、まちの定食屋や銭湯を紹介し「まち全体に泊まる」ような体験を提供するのだが、これが東京人の普通の生活、つまりは“リアルローカル”を求める外国人観光客の需要にマッチしたのだ。SNSや口コミが客を呼び、予約は通年一杯である。街の中でおカネを回すだけでなく、外から人を呼び込むことが町の活性化のカギと語る。
 岡山県の山間で小さな内装屋を営む両親のもとに生まれ、カーテン縫いなどの手伝いを頻繁にしていた氏は「手づくり」を人と人の接着剤に使う。オープン時「シーナと一平」1階はミシンカフェからスタートした。通りから見える所にミシンを置いてみんなが利用できる環境を作り、手芸に長けたシニア世代と突如ミシンに立ち向かわなければならなくなった新米子育て世代とを繋いでいる。その後「手づくりの愛着」と「顔の見える関係」を大切にしながら、1階は進化し菓子・パンづくりをしたい人に向けたシェアキッチン「お菓子工房」となり、現在も手づくりローカルの繋がりが広がっている。
「NishiikeMart」誕生
 さらに、西池袋の木造市場の廃墟から生まれ変わった「NishiikeMart」は、豊島区最大のブルワリーと地域アーティストギャラリーを併設した施設で、これには「トキワ荘」や「池袋モンパルナス」が存在した町に、「隠れた変人」たちを見付けて繋ぐ“文化の発信地”を生み出したいという思いを込めた。
 こうした実績を積むと、近年では大家さんから「何をするか、どう形にするか、どう運営するかを一緒に考えてほしい」という相談も増えてきた。単なる空間デザインだけでなく、隠れた「変人」プレイヤーと「つかわれていない場所」を繋ぎ、普通の町の人びとと行政の間を取り持ち、世代を含めたダイバーシティな交流をつくる。今のシーナタウンには無印良品、西武鉄道、城西高校、豊島区などから仕事と相談がくる。
ふざけているようだけど大事な5ポイント
 「編集して発明して発信する、という力が身につけば必ず世の中から必要とされる。でも、まちおこし事業は時間と手間のかかる大変な仕事だ」とも。最後に大事にしている5つのポイントも披露してくれた。

・B面(趣味?)で小さくチャレンジ(種まき)。それを育ててA面(本業)で回収(収穫)。
・何を(どんどん変わっていく)するかではなく誰とするか(すぐ対応するチームづくり)。
・正しいより楽しい面白い(ちょっとふざけてるくらい面白くないと人は集まらない)。
・自分事(やりたいこと)と社会事(他人に届きやすい見え方)を上手に混ぜる。
・自分がどんな変態(どこにパワーを持続できるか)なのか自覚する。

 質疑応答では、現行の基準からかけ離れた古い建物の用途変更に対する疑義も出たが、旅館業法と消防法、基準法に関しては行政の知恵も借りながらの対応をしているという。また空き家に関する定義があいまいなこともあり良い情報、特に商業に関するものが入手困難という課題も話された。
 良いところ(人によっていろいろ)を見つけて古いものを(安全に)面白く使っていくための、多くの気付きをいただいた時間だった。
谷川 淳一(たにがわ・じゅんいち)
東京都建築士事務所教会豊島支部副支部長、谷川淳一一級建築士事務所主宰
1954年 東京都生まれ/1978年 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業/1988年 熊井竹夫建築設計事務所/2014年 現事務所開設
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