昨年4月に丹後半島をまわり、伊根湾、伊根の舟屋に着きました。伊根の舟屋は海に浮かんでいるような美しい景観でした。丹後半島・伊根湾には、1階が船のガレージという独特の建築様式の家屋「舟屋」が230軒建ち並びます。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、潮風が深く刻むどこか懐かしい海の町が旅情を誘います。伊根は平安時代に「伊禰庄（いねのしょう）」として記されるほど古い歴史があります。鎌倉時代には小さな集落が形成されていたようですが、その名が広く知れ渡るのは江戸時代です。富山県の氷見や五島列島の三井楽（みいらく）と並んで日本三大鰤（ブリ）漁場として知られ、「伊根鰤」や「丹後鰤」は諸国に名を馳せました。独特の舟屋群の景観もその頃に成立したとされています。
　海に迫り出して建てられた舟屋は高床式の海上住居のようです。1階は海側に傾斜して海水を取り込み、そこに小舟が収納されています。つまり海と一体化した船のガレージ。2階部分は、昔は漁具などの物置場でしたが、今は居室にしている所が多いようです。最近では景観を特徴にした今風の旅館も多く出てきています。舟屋が可能なのは、波の影響を受けにくい、潮の干満差が500mmと年間を通じて水位が安定している伊根湾だからこそといわれています。