社労士豆知識 第67回
あらためて確認しましょう 年次有給休暇について
松本 亜希子(社会保険労務士)
年次有給休暇とは
 年次有給休暇とは、労働者の心身の疲労を回復させ、ワークライフバランスを保つことができるよう、休日の他に会社が毎年一定日数の有給の休暇を与える制度です。
付与要件
 年次有給休暇は、次のふたつの要件を満たせば法律上当然に権利が発生します。
① 雇入れの日から起算して6カ月間継続勤務していること
② 全労働日の8割以上出勤していること

付与日数(8割以上出勤した場合の付与される日数)
 入社後6カ月経過日に10日付与され、1年ごとに、6年6カ月経過するまで加算されます。ちなみに、年次有給休暇をその年度内に全部取得しなかった場合、その未消化日数については翌年度に繰り越すことができます。また、年次有給休暇の権利は2年で時効により消滅します。
通常の労働者の付与日数
比例付与
 パートタイマーであっても、年次有給休暇は付与されます。ただし付与される日数は、労働日数や労働時間数に応じて異なります(比例付与)。この比例付与の対象となるのは1週間の所定労働時間が30時間以上の者を除く、次のふたつの要件に当てはまる場合となり、付与される日数は以下の表の通りです。
① 1週間の所定労働日数が4日以下の労働者
② 週以外の期間によって所定労働日数が定められている労働 者については、1年の所定労働日数が216日以下の労働者

週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数
*週以外の期間によって労働日数が定められている場合
労働者の時季指定権と使用者の時季変更権
 年次有給休暇は基本的には労働者が請求した時季(季節を含めた時期)に与えなければいけません。
 しかしその時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者(会社)に時季変更権が認められます。
計画的付与
 会社は労使協定を締結した場合は、労働者が保有する年次有給休暇の日数のうち、5日を超える部分については労使協定で定めた時季に与えることができます。
 つまり、年次有給休暇日数が10日の労働者は5日、20日の労働者は15日まで、計画的に付与することができます。
使用者による時季指定
 年次有給休暇が10日以上ある労働者について、会社は1年のうちに5日は取得させなければいけません。
 ただし労働者が自ら時季指定した日数と、計画的付与により取得した日数が5日以上あれば、会社は時季指定をする必要はありません。また会社が時季指定する場合も、労働者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めなければいけません。
時間単位の有給休暇
 労使協定を締結し、労働者が請求した場合は、会社は5日以内の範囲で、時間単位の年次有給休暇を与えることができます。
 年次有給休暇の本来の目的は休養することであるため、日単位で取得することが原則ですが、仕事と生活の調和を図るため、2008(平成20)年に時間単位でも取得できるよう改正されました。
 時間単位の年次有給休暇の取得については、労働者が請求した場合に与えることができるものであって、時間単位の取得を義務付けるものではないことに注意してください。

 もしご不明な点がありましたら、専門家である社会保険労務士に相談されることをお勧めします。
松本 亜希子(まつもと・あきこ)
社会保険労務士
2020年社労士試験合格、2021年開業。開業前は建設業界で10年間人事総務に従事。
現在は東京都テレワーク導入ハンズオン支援事業専門員として年間100本程度の就業規則や規程の相談を受けている。
カテゴリー:建築法規 / 行政
タグ:社労士