テクノロジー+ 第18回
建築基準法informationの活用によるBIM確認申請の可能性
谷原 康介(福井コンピュータアーキテクト株式会社 BIM事業部 BIM商品開発室)
BIMを活用した建築確認について
 国土交通省 建築BIM推進会議では、官民が一体となってBIMの活用を推進し、建築物の生産プロセスおよび維持管理における生産性向上を図るためのさまざまな取り組みが行われており、その内容は、国土交通省のホームページで公開されています。
 さまざまな課題に対応するために5つの部会を設置し、建築確認に関しては、部会3(BIMを活用した建築確認検査の実施検討部会)にて検討されています。
 令和5(2023)年3月28日に開催された第10回建築BIM推進会議の報告書には、BIMによる建築確認の環境整備に向けたロードマップが示されました。ロードマップでは、令和7(2025)年度から「BIM図面審査」を開始、2028年度以降に「BIMデータ審査」の試行開始となっています。
 「BIM図面審査」では、BIMデータから生成された2D図面(PDF)とともに、BIMデータを参考データとして提出することとなっており、「BIMデータ審査」では、BIMデータそのものを審査対象とし、BIMデータで審査する以外の部分をPDF図面で審査するとしています。
 建築確認は、申請建物が建築基準法に適合していることを確認する作業ですので、「BIM図面審査」にしても、「BIMデータ審査」にしても、BIMデータの中に建築基準法情報を入力・設定する必要があります。
建築基準法機能を搭載しているGLOOBE
 建築基準法には、用途地域や防火区画、防煙区画、床面積キープランの面積領域、延焼ラインなど、建物として実態のない空間情報や要素情報があります。したがって、三次元建物モデル(BIM)だけでは、建築基準法に適合した設計や確認を行うことは困難です。
 GLOOBE Architect(以下、GLOOBE)は、建築基準法情報や要素をネイティブで搭載しています。これらの要素をシステム的に関連付けすることで、多くの建築基準法項目を自動計算または自動チェックできます。
 たとえば「用途地域」というデータには、「第1種住居地域」などの用途地域種別、容積率や建蔽率の上限値、北側・隣地・道路斜線の規定値、日影の5mライン10mラインの規制時間など、建築基準法の用途地域で規定される情報を設定できます。
 また「道路境界線」というデータには、幅員、中心高さ、隣接する河川等の幅、広場等の幅など、建築基準法の道路境界線に規定される情報を設定できます。
 もちろん、「敷地・地盤面」というデータもあり、地盤高・平均地盤高の値が設定できます。これは、建物と地面の設定高さから自動計算もされます。
 GLOOBEを使えば、設計者は従来の2D-CADで設計するよりも手間をかけずに建築基準法データを入力・設定できます。さらに、このデータを活用して自動計算や自動チェックなどの大きなメリットを得られます。
福井コンピュータアーキテクトが考えるBIMを活用した確認申請の意義は、このようなシステム(テクノロジー)による効率化と高精度化です。
図❶ スペースの設定
図❷ 居室の面積係数の設定
図❸ 開口部と各部の距離
図❹ 居室に必要な有効採光面積の計算表
図❺ 開口部の有効採光面積の計算表
有効採光自動計算の技術的解説
 ここでは、GLOOBEに搭載している建築基準法に関する機能の中から、法28条の有効採光計算を自動的に行う機能、つまり、開口部の有効採光面積を自動的に計算し、居室の面積に対して十分であるかを確認する機能についてご紹介します。
 居室の面積は、「スペース」の形状から計算されます。
 「スペース」は、室を表す建物要素であり、プランの検討に使ったり、他の建物要素を入力するための参照元にしたりできます。他のBIMソフトにも同様の要素はありますが、GLOOBEの「スペース」には、有効採光対象居室であるかどうかや、その居室の種類の設定があります。(図❶)
 GLOOBEには、プロジェクトごとに、各居室の種類に対する、必要な有効採光面積の係数の設定もあります。(図❷)
 これらを元に、自動的に居室に対して必要な有効採光面積を計算することができます。
 たとえば、「住宅の居室」の採光に必要な面積の係数を1/7としているプロジェクトを考えます。3.5m×7mの「スペース」を入力し、有効採光対象居室の設定をONにし、その居室の種類を「住宅の居室」とします。すると、プログラムがその室の平面積を計算し、さらに係数を乗じて採光に必要な面積を求めます。
居室の平面積 = 3.5 × 7 = 24.5 (㎡)
採光に必要な面積 = 居室の平面積 × 採光に必要な面積の係数
= 24.5 × 1/7 = 3.5 (㎡)
 GLOOBEでは、この計算の結果と根拠を確認できます。(図❹ 赤囲み部分)
 前述の通り、「スペース」はプランニングにも使われる要素のため、二室一室採光のように、「スペース」の単位と有効採光を検討する居室の単位が異なる場合があり得ます。この場合に、複数の「スペース」をひとつの居室とみなして採光の検討が行えるよう、GLOOBEには、「区画連結」コマンドを用意しています。
 開口部の有効採光面積は、[開口部の面積]に、[補正係数]を乗じて求められます。[開口部の面積]は、「建具」の見付寸法やガラスの部分の割合等から計算されます。
 [補正係数]も、建具ごとに自動的に計算されます。補正係数を求めるためには、以下の条件を考慮する必要があります。
① 開口部の直上にある建築物の各部分から敷地境界線までの水平距離
② 開口部の中心から直上にある建築物の各部分までの垂直距離
③ 敷地の用途地域
④ 開口部が面する敷地境界線の属性(隣地であるか道路であるか。道路であるならばその幅員等)
 ①と②は、三次元建物モデルを構成する「建具」、「屋根」、「パラペット」等の位置と形状から計測されます。プログラムが計測・計算した後は、その根拠となる断面図も自動的に作成され、確認可能です。(図❸)
 ③と④については、前述の「用途地域」や「道路境界線」等のデータに設定した内容と、プロジェクトごとの設定が考慮されます。
 これらにより、各建具の有効採光面積が計算され、その結果が計算式と共に確認できます。(図❺ 赤囲み部分)
 そして、居室に必要な有効採光面積と、開口部に対して求めた有効採光面積を比較することで、有効採光の判定が行われます。(図❹ 青囲み部分)
 GLOOBEでは、これらの計算が瞬時に完了します。また、各室に対してこの結果を一覧したり、表として図面に配置したりできます。
 ここまでにご紹介した「スペース」、「建具」、「屋根」、「パラペット」などの建物要素は、BIMを用いて設計を進める中で、形状や仕様を検討しながら入力できます。
 「用途地域」、「道路境界線」などの建築基準法情報は、有効採光計算に限らず、容積、斜線、日影、延焼のおそれのある範囲等、さまざまな法規の検討に活用できます。
 このように、GLOOBEを使えば、計画敷地の条件を入力し、建物モデルをつくり込んでいくことで、自然に各種の建築基準法項目を検討するためのデータが整います。
 さらに、建築基準法情報は、プロジェクトごとに0から入力する必要はありません。GLOOBEには、建築基準法などの設定を「テンプレート」としてまとめて管理する仕組みがあります。テンプレートはGLOOBEに同梱されており、これを編集したり、切り替えたり、別のプロジェクトから引き継いだりできます。
最後に
 わが国の建築基準法に関する情報を体系的にデータとして扱い、建築確認に関する検討・チェックを自動化する点にかけては、GLOOBEは最も進んだBIMシステムであると自負しています。
 さらに、今回ご紹介した建築基準法に関する機能以外にも、国産BIMならではの、日本の建築設計業界の皆様にとって使いやすい機能をご用意しています。
 GLOOBEについてご興味を持っていただけましたら、ぜひ下記Webページもご覧ください。
https://archi.fukuicompu.co.jp/products/gloobe/
谷原 康介(たにはら・こうすけ)
福井コンピュータアーキテクト株式会社 BIM事業部 BIM商品開発室
1989年 福井県生まれ/2014年 神戸大学大学院工学研究科建築学専攻修了/同年 福井コンピュータアーキテクト株式会社入社/入社以来、GLOOBEシリーズの開発業務に従事