テクノロジー+ 第19回
パラペット、機械基礎等の防水アゴ部施工における省力化技術
大城 太亮(東京都建築士事務所協会賛助会員、株式会社地耐協)
図① VE-AGO®工法 施工断面図
VE-AGO®工法とは
 近年、型枠大工の労務不足や工期短縮、現場を取り巻く課題は山積しています。
 建物屋上には、防水層の端部から雨水が入り込むことを防止するために、陸屋根の外周部を囲むようにパラペットが設けられています。また、機器を積載固定するための機器架台が設置されます。
 従来、このようなパラペット・機械架台基礎には、防水構造としてアゴ部が設けられていますが、そのアゴ部の底面には水切り溝をつくる必要があり、現場でアゴ形状の型枠を組む作業は手間と労力が掛かるものでした。また、アゴ部の鉄筋配設やコンクリートの打設も同様に作業性が悪いという問題点を抱えています。
 VE-AGO®工法は、アゴ形状をしたコンクリート二次製品を製作し、それを打込型枠材として使用する工法です。
 これにより、アゴ部における型枠製作、配筋、養生、型枠解体が不要となり、工期短縮が可能となります。(図①)
 プレカット製品で現場加工がほとんど無いため、均一な仕上がりが期待でき、現場で発生する廃棄物を減らして環境負荷の低減に貢献します。
基本性能
写真❶ オートクレーブ二次養生
写真❷ 天端ブチルゴム装着
製造工程
 VE-AGO®には、ECP(押出成形セメント板)を使用しています。ECPとはセメント、けい酸質原料、繊維質原料を主成分として真空状態で押出成形し、オートクレーブ養生させたものです。(写真❶)
 ECPは外壁パネルとしても広く用いられているように、耐候性に優れ、無筋材料のため錆発生の心配もありませんので、初期性能を長期間維持することができる材料といえます。
 アゴ型に押出成形したのち、現場ごとに作製した割付図に従って、寸法カット、役物加工などの工程を経ます。この時、製品の天端部分にはブチルゴムを装着します。ブチルゴム処理により、VE-AGO®と躯体(現場打ちコンクリート)の天端部分での肌分かれを防止し、地震時にも躯体側の動きに対し十分追従し止水効果を発揮します。(写真❷)
VE-AGO®工法の施工フロー
① いただいた躯体図をもとに、弊社にて割付図を製作します。
② パーツごとに合番号が付きますので、合番図をもとに現場で間配りをします。
③ パラペット・機械基礎立上り部の在来型枠を建て込みます。
④ 在来型枠の天端に、VE-AGO®をセットします。
⑤ 打設後、在来型枠を解体します。
⑥ 塗膜防水仕上げを施し完成です。
更なる省力化工法 ―VE-AGO®接着工法
 パラペット、機械基礎の立上り部を先に打設し、VE-AGO®を後から接着取付する工法もあります。立上り部の形状は、アゴ部材を設置するためのヌスミを取るだけで済みますので、型枠建込み時の作業性がさらに向上します。
 また、あらかじめ工場でVE-AGO®表面に防水塗装を施すことで、屋上防水後からでも施工が可能となります。
大城 太亮(おおしろ・だいすけ)
株式会社地耐協 VE事業部次長
アゴ部型枠VE-AGO、打込鋼製型枠VEパネット、地盤置換工法スーパージオ販売担当