働き方改革を考える 第7回
他業界の現状をヒヤリング──個々のライフステージを考える:株式会社ニチイ学館を訪ねて
寺田 宏(東京都建築士事務所協会副会長、働き方改革推進ワーキンググループ主査)
ニチイ学館の職場(医療、介護、保育)。(画像提供:ニチイ学館)
 今回はお茶の水にある株式会社ニチイ学館にお邪魔して働き方改革を教えていただいた。当日は寺田、泉、井元の3人で伺い、後藤英樹執行役員経営管理本部人事部長と、石川真奈実広報部主任のおふたりから話を伺うことができた。
ニチイ学館は医療、介護、保育からヘルスケア業務など医療福祉業界に限らない幅広い分野に取り組まれている会社である。各分野の担い手は女性が多いことで知られていて、女性比率が非常に高い会社の取り組みや秘策をヒヤリングさせていただいた。
女性が生き生きと活躍する職場
 創業52年目を迎えたニチイ学館は、現在、総合職の約6割が女性。そのなかで管理職である課長職は78%、全国の94の支店の支店長では約80%が女性であることにまず驚いた。日本企業では管理職の女性比率はひと桁台が多い中で、現場での経験を基礎に多くの女性が、業務トップの支店長クラスとしてマネジメント層についているとのことであった。
 これには独自の採用のための考えが理由にあるとの説明を受けた。創業以来、早い段階から女性活躍の場面を想定したキャリアに基づく職場づくりがあったとのことで、業務の担い手として、主に子育てが一段落した女性の社会復帰を前提としたキャリアモデルをもって人材計画が立てられているという。復帰人材に必要な雰囲気や諸制度は整っているうえ、会社の業務に教育事業を含んでおり、復職時に重要なキャッチアップのプロセスは当然のこととして設けられたようである。
ライフステージのさまざまな出来事に調整する
 同席いただいた石川主任から、さまざまな場面で女性の先輩からアドバイスが受けられる環境があること、社内の雰囲気が子育てやライフステージのさまざまな場面を柔軟に受け入れているということ、たとえば子どもの突然の体調不良による早退や欠席に自然な対応がされていると伺った。その雰囲気が女性の定着率も向上させ、女性のライフステージに柔軟に対応できる勤務が実施されているようである。
 また、全国に支店が展開されていることは、パートナーの転勤や異動に対しても柔軟に支店間の調整がなされ、優秀な人材の定着率を上げているという。働く現場が柔軟に個人の生活に対応できていることがうかがわれる。
 ニチイ学館のホームページ(https://www.nichiigakkan.co.jp/company/diversity/)では、ダイバーシティに関するトップメッセージを筆頭に、女性活躍推進とワークライフバランス・両立支援が大きく取り上げられている。会社としても女性活躍推進の中のワークライフバランスと女性定着の課題に取り組む姿勢がうかがえた。自然な雰囲気のなかでの女性活躍を推進し、そのうえで女性が主要な業務の担い手であるため定着率向上が取り上げられているように思える。
 また、法定通り、介護休暇に関しては、1年間で対象家族1人の場合は5日、2人以上の場合は10日を限度に、介護休業に関しては、対象家族1人につき通算93日を限度に3回まで分割して申請することができ、毎月数名の社員が活用しているとのことであった。
さらなる働きかた改革推進
 ニチイ学館の業務は本支店と業務現場に分かれている。そのために、現場ではわれわれの実務現場と似たようなことが起こると思われる。たとえばテレワークに関しては、実行に関してその業務内容により検討の項目はまだあるとのこと。現状は複数が互助的に協力し合えるネットワークが、きめ細かい支店長の管理でなされているとのことである。
 人材確保のためにも、より人材を大切に、より女性が生き生きと働きやすい、働くことに高い満足度のある職場づくりを進められるとのことであった。やはりワークライフバランスは、ライフステージのシーンにいかにうまく合わせられるかが重要と痛感させられたヒヤリングであった。
訪問委員:寺田 宏(中央支部)、泉 晃子(新宿支部)、井元 美佐代(世田谷支部)
寺田 宏(てらだ・ひろし)
東京都建築士事務所協会副会長、団体課題別人材力支援事業運営委員会委員長、清水建設株式会社一級建築士事務所
1956年 大阪府生まれ/京都大学大学院修士課程(建築学専攻)修了/1980年清水建設株式会社入社、清水建設株式会社一級建築士事務所/現在、同建築営業本部副本部長/中央支部