働き方改革を考える 第8回
新型コロナウイルス禍での働き方──ワーキングメンバーのリレー報告①
寺田 宏(働き方改革推進ワーキング主査、東京都建築士事務所協会副会長)
泉 晃子(働き方改革推進ワーキング、新宿支部)
太田 宏正(働き方改革推進ワーキング、千代田支部)
横村 隆子(働き方改革推進ワーキング、足立支部)
佐藤 孝子(働き方改革推進ワーキング、杉並支部)
 働き方改革がまだこれからと思っていた方も、もう避けて通れません。非常事態宣言解除後は働き方が変わるともいわれています。そこでワーキングのメンバーで調べたりヒヤリングしたり、あるいは自らの体験をリレーで報告します。どうか自らのこととして働き方改革を考えるきっかけとしてください。
寺田 宏(働き方改革推進ワーキング主査、東京都建築士事務所協会副会長)
支店が本社と繋がって──在宅勤務は既に始まっていました
 この度の新型コロナウィルスの蔓延から、緊急事態宣言も出た中、私が所属する東京事務所は現在閉じており、全員が在宅勤務に切り替えた。育児中の女子社員が3年前からテレワークを選択していて、皆がそのやり取りに経験があり、問題なく業務が遂行できている。現在、富山の本社は通常通り業務をしているので、電話は東京事務所長の携帯に転送し、データは本社で一括管理している。今回のような事態を想定していたわけではないが、地方都市である富山の本社に業務を分散できたことは好都合であった。社員間でのメールや、ラインでの連絡だけでは多少のコミュニケーション不足な感じは否めないが、次第に慣れてきて、今の働き方が定着してきそうにも思われる。勤務時間や、成果については、自己申告による。長年一緒に働いてきた仲間同士であり、お互いに信頼関係が築かれているので今は問題なく進められている。在宅勤務になって、家族と同じ生活圏の中で仕事をする難しさは皆特にないと言い、逆に家族から気遣ってもらっているという。当社では思いがけず急速に働き方が変えられている。
泉 晃子(働き方改革推進ワーキング、新宿支部)
家族でテレワーク、始めました──勝手の違いに戸惑いながら
 3月下旬までいつも通りの日常でしたが、緊急事態宣言により、私の会社も在宅勤務が推奨されました。
 私の場合は自前のパソコンから、会社のパソコンにリモートして仕事を行う方式です。CAD、BIMを使用した設計の業務になります。こちらはストレスなく行えます。しかし、いつも机の周りにある蓄積された設計資料が自宅にはないので、これはストレスになりました。こういった資料を別のタブレットに入れていつでも閲覧できるようにしておけば、問題は解決できるのではないかと。次に問題となるのは、自宅での作業スペースです。自分の場合、妻も在宅でのリモートワークなので、ふたり同時にウェブ会議になりますと、たいへんです。これはこれからの課題になります。最後に、仕事を終わらせて電車に乗り帰宅する手間がなく、すぐにビールにありつけるのは、とてもうれしいことです。
太田 宏正(働き方改革推進ワーキング、千代田支部)
STAY HOME 家・自宅にいましょう──在宅する皆様へ
 在宅勤務でどんな時ストレスを感じますか? 在宅勤務の子育中参考なった、慣れると快適な宮脇流家事と働き方の著作『父たちよ家へ帰れ』(宮脇檀著、新潮社、平成8(1996)年刊)を紹介させていただきます。
 娘とふたり暮らしで家事と住宅設計の両方をこなしてきた著者が「家は楽しい、だから仕事中毒の男たちよ、早く帰宅せよ」と説き、働く女性同様著者もぶつかった仕事と家事どちらが大切かでは「私もかなり仕事に打ち込みながら、一旦緩急あれば自在に仕事を放り出してよいのだと悟る境地に達した後から、家事と仕事が融通無碍に交わり合い始めたのを覚えている」とか、在宅の長所は家事がいつでもできること「仕事を優先し、そのすき間を見つけてうまく家事をさし込むか、能力の問題」とか、葛藤の末に達した両立の秘訣など子育ての障壁と共に建築家の眼で日本の住宅、家族、働き方の問題を指摘し暮らしを楽しむ勧めが示され、女性活躍推進の多様な働き方の手掛かりにもなる1冊です。
 令和2年新春シンポジウムパネラー東利恵さんの父、東孝光さん世代の宮脇さん、『都市住宅』(廃刊)愛読世代の事務所運営の方々には、懐かしい主夫の生活自慢の言説として、成果の背景の時間も大切な設計雇用環境創出へ向けて、一読いただけたら幸いです。
横村 隆子(働き方改革推進ワーキング、足立支部)
私の在宅テレワークから見えてきたもの──日本式に残るもの
 事務所に出勤しなくとも仕事の進捗状況に応じ、自宅ワークは時折していました。突然のコロナ騒動は、持病を抱える家族の安全を考慮し、準備もないまま安易に在宅テレワークにシフトせざるを得ませんでした。自宅で家族と一緒の生活は家事や食事や買い物など家のことが予想以上に気になり、私にとっての在宅ワークは仕事以外の雑事に追われ、仕事は家事の合い間や夜間になるローテーションも多くなりました。
 設計業務は支障なく進められましたが、監理業務の現場確認や諸官庁の工程検査の立ち合いは外出せざるを得ませんでした。事務関係業務は、請求書や見積書の社印押印や支払い処理、メールボックス確認、丁度決算期で決算資料など事務所に出ざるを得ませんでした。
 今回の騒動で、主婦の在宅ワークの時間管理の課題や長期にわたる在宅ワークに向けての準備が不十分だったことで生じたさまざまな課題、現状の法制度で解決できない課題を経験しました。在宅ワークで家族と共に過ごすことは、近い将来訪れる仕事を離れた夫婦のストレスのない円満で穏やかな老後生活の過ごし方を考えるよい機会をコロナに与えられた気がします。
佐藤 孝子(働き方改革推進ワーキング、杉並支部)
寺田 宏(てらだ・ひろし)
東京都建築士事務所協会副会長、団体課題別人材力支援事業運営委員会委員長、清水建設株式会社一級建築士事務所
1956年 大阪府生まれ/京都大学大学院修士課程(建築学専攻)修了/1980年清水建設株式会社入社、清水建設株式会社一級建築士事務所/現在、同建築営業本部副本部長/中央支部
泉 晃子(いずみ・あきこ)
東京都建築士事務所協会理事、株式会社タムラ設計
1944年 富山県生まれ/1967年 日本女子大学住居学科卒業/1995年(株)タムラ設計入社/現在、同顧問/新宿支部
太田 宏正(おおた・ひろまさ)
東京都建築士事務所協会青年部会、千代田支部、株式会社IAO竹田設計
横村 隆子(よこむら・たかこ)
東京都建築士事務所協会会長補佐、一級建築士事務所横村隆子YHT環境設計
1955年 東京生まれ/1977年 日本大学理工学部建築学科卒業/一級建築士事務所横村隆子YHT環境設計/足立支部
佐藤 孝子(さとう・たかこ)
東京都建築士事務所協会理事、有限会社インターフェース
1949年青森県生まれ/1971年 東洋大学工学部建築学科卒業/1991年一級建築士事務所(有)インターフェース設立/現在、同代表取締役/杉並支部