働き方改革を考える 第6回
構造設計事務所の事例──株式会社司構造計画 東京支社(千代田支部)を訪ねて
泉 晃子(東京都建築士事務所協会理事、働き方改革推進ワーキングクループ委員、株式会社タムラ設計)
 建築設計は専門別に意匠設計、構造設計、設備設計、積算に細分される。今回はそのうち構造設計を専門とする建築士事務所をヒアリングさせていただくことになり、神田神保町の書店街を抜け、神田小川町にある株式会社司構造計画東京支社を寺田宏主査と共に訪問した。

 専務執行役員で東京支社長・管理建築士の玉腰徹さんからお話をうかがうことができた。株式会社司構造計画は、本社は富山市にあり、昭和53(1978)年に創業。東京支社は平成元(1989)年に開設。大阪支社もあり、合わせて所員数は現在36名。本社、支社共に構造設計と監理を主とし、平成7(1995)年に耐震改修促進法が制定されてからは、耐震診断や補強設計、改修設計も多く、本社と支社はそれぞれ独立して業務にあたっているとのことであった。
 玉腰さんは、「東京支社は現在10名、そのうち9名が技術者、その3分の1は女性であり、女性は特に技術習得に熱心だ。社員の基本的な勤務時間はやむを得ぬ監理が必要な場合を除けば、ほぼ週休2日は守られているが、建築現場によっては、まれに夜間の監理もある。年休も、基本的には夏休み、正月休みで消化できている。残業時間も守られているが、社員を早く帰そうとすると、自分の帰宅はいつも最後になる。所員の勤務時間はタイムレコーダーと日報でダブルチェックしてオーバーワークにならないよう気を付けている」と話された。
時間管理型の働き方は建築設計に合っているか
 このテーマについて玉腰さんは、「構造設計事務所の場合は働く年代によって異なる。仕事を学び、覚える初期の段階の人と一人前になった人では違うのではないか」とされる。「学校を卒業した直後の新人の場合は、特に構造設計においては、すぐ業務の役には立たず、仕事を覚える段階、過程ではたいへん時間がかかるのはやむを得ない。一人前になるまでは業務時間の枠を柔軟にするほうがいいと思う」とのご意見だった。「昔は徒弟制度のように上司について覚えたものである」との思い出話もあった。
 「残業を減らして、ゆとりの時間は自分を高めるために使うべきとの見解もあるが、構造設計に限っていえば、自学自習することはたいへんであり、業務を通じて学ぶ方が効率よく身に付きやすい。この段階で、特に女性は迷いなく、熱心に覚えていく。その学びたいという自発的な意欲を大切にして育てていきたい」と話され、若い女性が熱心である様子に感心され、重要な戦力であるとエールを送っていただいた。
働き方改革への取り組み
 経営者の目標としては、「今後次世代のことを考えると、まず残業時間の減少を目指すように努めたい」とされ、「ゆとりが生じた時間はぜひ自分の研鑽のために積極的に使ってほしい」と語る。また、産休、育休(男女共)については、「今までその機会がなく、具体的に会社としての規則をつくっていなかったが、今後は考えていきたい。またこれまで従業員は若い世代が多かったが、今後は介護の問題も出てくるだろう。その対応も考えねばならないと思う」と言われた。
 「構造設計の特徴として、設計のスケジュールは比較的管理しやすく、現在は2人チーム体制で業務を遂行することが多い。働き方改革の一環としてのテレワーク制度は、構造設計事務所が取り組みやすい形態のように思われるが、管理や責任についての建築士法との整合も考え、今後検討を進めたい」とのことであった。
 働き方改革法の基本を踏まえて、さらに改善充実されるとの方針をうかがい、今後はいっそう社員の働きやすい環境向上につながり、人材の育成、新人の獲得にも結び付くものと確信した。
(訪問委員:寺田 宏|中央支部、泉 晃子|新宿支部)
泉 晃子(いずみ・あきこ)
東京都建築士事務所協会理事、株式会社タムラ設計
1944年 富山県生まれ/1967年 日本女子大学住居学科卒業/1995年(株)タムラ設計入社/現在、同顧問/新宿支部