

ほんの半世紀前に職人の街としてたいへんな賑わいだったこの地区も、その後の都心の空洞化と高齢化、バブル崩壊により「閑静な下町」となってしまいました。そんな中、次世代に継ぐ街の活性化を目指し、二〇〇四年、旧小学校校舎を利用したデザイナーの支援施設「デザイナーズビレッジ」の設立や、職人、クリエーター等の有志が力を合わせ、二〇一一年から始まった「モノづくりのマチづくり」地区イベント、「モノマチ」が開催されるようになり、「カチクラ」が定着すると同時に往来の様子が少しずつ変化し、賑わいを取り戻しつつあります。
私たちも「モノマチ」に参加し、来場者や子どもたちといっしょに、コンクリートや煉瓦、鉄等、建築にちなんだ「モノ」を利用したワークショップを通して、建築の魅力をもっと知ってもらおうと活動しています。
今春、その「モノマチ」でのワークショップをきっかけに、小学生を対象にした「建築家の仕事体験ワークショップ」の依頼を受けました。
限られた時間では図面や模型の制作はできません。思案の末、「さる山」の模型を紙粘土でつくることにしました。そこでまず、上野動物園の協力を得て、「さる山」に関わるたくさんの人たちの話を子どもたちが聞き、自ら記入して考えをまとめるためのコンセプトシートをつくることにしました。建築の設計行為が日ごろの経験や考えの積み重ねの上に成り立っていることを身近に感じてほしくて、コンセプトシートは製図ペンを使った手描きのスケッチにしました。久しく握る製図ペンに、ワークショップに一生懸命に取り組む子どもたちの顔がよぎり、改めて埃をかぶっていた筆立てを机に並べ、手描きの心地よさを感じていました。

ワークショップ風景。

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