思い出のスケッチ #317
千駄ヶ谷 鳩森八幡神社
山本 忠順(東京都建築士事務所協会新宿支部、株式会社LAU公共施設研究所)
 設計健保(けんぽプラザ)に行く時に、いつもこの神社の角を曲がる。お参りしてお賽銭を上げることもあるが、たいていは鳥居の前でお辞儀をする程度である。緑が多く、また秋の銀杏の大木もとても雰囲気がいい。
 「八幡神社」とは、実にポピュラーな名称だと思う。津久戸八幡も穴八幡も、なじみの神社である。困った時に「南無八幡大菩薩」と唱えるということもよく聞く。これはネットによると、奈良時代に始る神仏習合から起った称号で、仏教に守られる八幡神の意、とのことだ。
 『江戸名所図会』によると、ある日青空より白雲が降りてきたので、不思議に思った村人が林の中に入っていくと、突然白鳩が多数西に向かって飛び去った。村人たちはここに神様が宿る小さな祠を営み鳩森『はとのもり』と名付けた、とある。とにかく由緒正しい。
 この鳩森八幡神社のもうひとつの特長は、「富士塚」でも有名である点だ。富士塚とは、富士信仰に基づき、富士山に模して造営された人工の塚である。江戸時代には「お富士さん」などと呼ばれ親しまれていた。つまり、この富士塚に登れば、富士山に登ったのと同じ、ということになったのだろう。自分も何度か登ってみた。長い時間の流れのなかに、身を置いているのを実感する。
 このけんぽプラザでは、週一回の「ヨガ教室」を楽しんでいる。運動不足気味の身体にとって、実に快適な時間だ。
 鳩森八幡神社とヨガ教室、この取り合わせは、極めて貴重なのである。
山本 忠順(やまもと・ちゅうじゅん)
LAU公共施設研究所代表取締役、東京都建築士事務所協会新宿支部相談役
1944年生まれ/東北大学建築学科卒