思い出のスケッチ #297
ギリシャ素描
鈴木 俊作(東京都建築士事務所協会中央支部/株式会社協立建築設計事務所)
ギリシャの研修は、アテネのピレウス港からフェリーに五時間半ほど乗り、エーゲ海のミコノス島から始まった。ミコノスへの憧れは『GA』の「エーゲ海の村と街」を購読した時点から始まり、以来、迷路と広場の関係を探求することになった(卒論の際は国内で、集落の研究のために奈良県今井町を訪れた)。
ギリシャ研修の目的は、建築の原点を探ること。特に、集住の拠り所となる島・平地・山(斜面)などの地に、人びとが集まり歴史を刻み文化を創出した共通点を見出そうとした。
記憶に残すためには、やはりスケッチ。一〇〇枚以上を描いたミコノス島の街は、エーゲ海の白い宝石(街)。迷路の路地、風車、小さな教会が点在している。
三日目は、オリンピアに向かうため、コリントス運河(ペロポネソス半島)を渡り、パトラつり橋(コリンティア湾)を横目に見ながら、オリンピック発祥の地に入る。オリンピックの聖火は、古代オリンピア遺跡のヘラ神殿で採火される。帰路は、半島の中央部(トリポリ等)を抜け、アテネに戻る。
五日目。アクロポリスの丘をあらゆる角度から拝謁する。六日目。パルナッソス連山の懐に抱かれている古代ギリシャ宗教の中心地デルフィに向かう。途中のアラホバ村は集住の原点。斜面にありながら、家々は個性はあるが統一され、美しく山の中腹に張り付いている。
鈴木俊作(すずき・しゅんさく)
1949年東京都生まれ/日本大学卒業/2003年〜株式会社協立建築設計事務所/東京建築賞、最優秀賞受賞