画材は、御茶ノ水のレモン画翠で買った平たい鉛筆。大学二年の終わりに、「群馬県立近代美術館」でルイス・カーン展を見て以来、手を動かして形を描くことに魅了され、さまざまな画材を試してみた。この鉛筆は、深い理由もなく珍しさに惹かれて荷物に放り込んだものだが、サン・ジミニャーノの陽光を受ける塔を見た時、組石の硬さと風化による柔らかさを紙に定着させるのにうってつけだと思った。サン・ジミニャーノではスケッチを三枚描いた。はじめの二枚で、空を背景に塔を描いた後、もう少し街の様子も含めたいと思い、道端に腰を下ろして描いたのがこのスケッチである。
今しかできないことは何かと考え、その後も旅に出た。奨学金のほとんどを旅に注ぎ込むことになったが、今振り返ってみても良い選択だったと思う。
綾井 新(あやい・あらた)
建築家、綾井新建築設計、東京都建築士事務所協会文京支部
1971年 北海道生まれ/1995年 東京大学工学部建築学科卒業/1997年 東京大学大学院修了(建築学・香山壽夫研究室)/1997 – 1998年 アカデメイア一級建築士事務所、伝匠舎、石川工務所/1999 – 2012年 香山壽夫建築研究所にて、香山壽夫に師事/2012年 綾井新建築設計設立
1971年 北海道生まれ/1995年 東京大学工学部建築学科卒業/1997年 東京大学大学院修了(建築学・香山壽夫研究室)/1997 – 1998年 アカデメイア一級建築士事務所、伝匠舎、石川工務所/1999 – 2012年 香山壽夫建築研究所にて、香山壽夫に師事/2012年 綾井新建築設計設立
記事カテゴリー:歴史と文化 / 都市 / まちなみ / 保存
タグ:思い出のスケッチ