東京消防庁連絡会議開催
令和5(2023)年5月25日(木)@本会会議室(Web会議併用)
村上 淳(東京都建築士事務所協会法制委員会・中央支部、株式会社山下設計)
 東京消防庁と本会の共催により、例年開催されている「東京消防庁連絡会議」では、東京消防庁からの消防行政に関わる最新の情報提供と、本会からの建築設計の実務を通しての質疑と意見交換の、大きくふたつの内容で構成され、両者の貴重な情報交換の場となっている。
 東京消防庁からは、山𣘺大輔予防部副参事、南野秀司予防課建築係長、以下6名にご出席いただき、本会からは千鳥義典会長、小松達也専務理事以下、Web参加を含めて14名が出席した。
 ここでは、特に東京消防庁からのふたつの提供情報を中心に会議の模様を紹介する。
予防事務審査・検査基準の改定に伴う補足(質疑応答)
 本年、予防事務審査・検査基準が改定され、4月1日から運用が開始されている。今回の改定は、昨今の防火対象物の大規模化、用途の多様化により、現行の基準ではその運用において判断が困難であったり、不合理が生じる場合があったことを踏まえたもので、大きくは以下の3点を骨子としていた。
・防火対象物の棟、床面積及び階等、消防用設備等の設置の要否を判断する要素を明確化したこと。
・消防用設備等が必要となる防火対象物の範囲を特例基準も含めて明確にしたこと。
・今後、予防事務審査・検査基準を改定した場合、法令改正に係る事項を除き既存部分には新基準が遡及適用されないこと。
 連絡会議では、新基準運用後に質疑応答という形で公開されている補足事項について解説があった。
 今回の改定の内容・解説、質疑応答集などは、東京消防庁HPの「予防事務審査・検査基準の改定」ページ*1で情報提供されているので、参照していただきたい。
*1:https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jimukensa/index.html
二酸化炭素消火設備に係る消防法令の改正
 近年、二酸化炭素消火設備(以下、「CO2消火設備」)に関わる死亡事故が相次いで発生したことを受けて改正された、関係消防法令(令和5年4月施行済み)について説明があった。改正のポイントは以下の3点である。
・CO2消火設備に係る事故を防止するための規定の整備。
・既存防火対象物に設置済みの全域放出方式のCO2消火設備に、最新の技術基準の一部が遡及適用されること。
・消防設備士等による点検の実施。
 具体的には、事故の再発防止を図るために、集合管または操作管に閉止弁を設けることや、貯蔵容器を設ける場所および防護区画の出入口等の見やすい箇所に標識を設けること、制御盤の付近に設備の構造並びに工事等においてとるべき措置の具体的内容および手順を定めた図書を備えること等が新たに規定されている。
 東京消防庁としては、CO2消火設備は過去に死亡事故が複数発生していることから、新築建物に対してはCO2消火設備の設置は控えてほしいと伝えている、とのこと。
質疑応答
 当協会からの要望としては、実際の設計実務を通しての技術的な質疑を中心に意見交換が行われた。具体的には、ガス配管と同居できる電気設備について、屋外消火栓設備の設置免除について、エアフローウィンドウ内の警戒について、等である。
 ここでは詳細な報告は割愛するが、いずれも今後の課題として検討を進める、との回答があった。
 なお、年に1回、定例で開催されているこの連絡会議では、われわれ建築設計事務所の日常の実務を通しての消防関係法令に関する疑問にお答えいただく等、貴重な場として機能している。会員事務所の皆様においても、本会議にて取り上げるべき議題があれば、各ブロックの法制委員会委員を通して連絡をいただければ幸いである。
会議風景。会議は対面とオンラインの併用で開催された。
左は東京消防庁予防部の皆さん。
村上 淳(むらかみ・あつし)
東京都建築士事務所協会法制委員会・中央支部、株式会社山下設計
1956年秋田県生まれ/1982年 株式会社山下設計入社/現在、同社品質管理センター副センター長