東京消防庁からのお知らせ
消防用設備等の設置のあり方に係る予防事務審査・検査基準の改定について 消防用設備等を設置する範囲の明確化③
図❶ 審検の改定概要
はじめに
 東京消防庁(以下、「当庁」)では、建築物の防火性能向上のために「予防事務審査・検査基準」(以下、「審検」)を定めています。前号に引き続き、改定した消防用設備等の設置の要否を判断する要素の明確化のうち、防火対象物の床面積等の算定、消防用設備等の設置にあたっての階の取り扱いをご紹介します(図❶)。
図❷ 機械式駐車装置の床面積の算定方法
図❸ 延べ面積の違い
図❹ 機械式駐車装置の収容台数の算定方法
図❺ 屋内と屋外が一体的に使用される使用される場合の適用
防火対象物の床面積等の算定
 消防用設備等の設置の要否を判断するにあたり、延べ面積は重要な要素のひとつです。当庁では、その延べ面積を算定するにあたり、機械式駐車装置の算定方法が統一されていないという課題がありました。
 この機械式駐車装置について、建築基準法では昭和61年4月30日建設省住指発第115号通知に基づき、床として認識することが困難な形状の部分は、1台につき15㎡を床面積として算入します。また、消防法施行令(以下、「政令」)第13条では、「駐車の用に供される部分」の床面積を算定し必要に応じて水噴霧消火設備等を設置しなければなりません。改定前の審検だと、「駐車の用に供する部分」となる機械式駐車装置の面積を水平投影面積により算定していました(図❷)。
 「駐車の用に供する部分」となる機械式駐車装置の床面積を水平投影面積により算定した際、防火対象物の延べ面積は、建築基準法の延べ面積によるのか、それとも機械式駐車装置の部分を水平投影面積で算定した値で再度計算するのかが不明確でした。そのため、同じ建物でも延べ面積が異なるという問題も生じていました(図❸)。
 今回の改定では上記の課題を解決するため、次のように審検を改定しました。
① 消防法令上の延べ面積は例外的な基準の一部を削除し、原則として建築基準法令によることとしました。
② 「駐車の用に供される部分」としての機械式駐車装置も建築基準法により床面積を算定することに変更しました。
③ 複数の機械式駐車装置を近接して設けた場合の取扱いを図❹のとおり整理しました。
④ 屋内の部分と屋外の部分が一体的に駐車の用に供される場合(2階以上の部分に限る)は、屋内における駐車の用に供される部分の床面積を200㎡で除した値と、屋上の部分における駐車の用に供される部分の床面積を300㎡で除した値の合計が1以上であれば、消防法施行令第13条第1項第5欄の規定により水噴霧消火設備等の設置が義務付けられることを明記しました(図❺)。
図❻ 消防法令上の階に係る規定の取り扱い
消防用設備等の設置にあたっての階の取り扱い
 消防用設備等の設置に係る基準や、技術的な基準を適用する際に、「階数」や「階」の取り扱いを建築基準法令上「階数」に算入されない塔屋などの「階」について消防法令の適用の判断が異なるという課題がありました。
 今回の改定により、消防法令上の階数の算定は建築基準法によること、駅舎などの工作物等も建築基準法に準じて階数を算定すること、消防法令上の階に係る規定(階数に係るものを除く)は、階数に算入されない階にも適用することを明記しました。ただし、消防法施行令第21条第1項第7号、消防法施行規則第23条第4項第7号に示す「避難階以外の階」及び火災予防条例第39条第1項第5号、第40条第1項第4欄に示す31メートルを超える階は例外の規定とし、従前と同様の取扱いとします(図❻)。
おわりに
 新基準は令和5(2023)年4月1日より運用開始しています。また、防火対象物の使用実態及び時代の変化に合わせ、今後も引き続き基準を見直していく予定ですので、引き続き東京消防庁の予防業務にご理解・ご協力をお願いします。
カテゴリー:建築法規 / 行政