消防同意について
東京消防庁からのお知らせ 第8回
東京消防庁予防部予防課
 
1 はじめに
 建築物を建築しようとする場合、建築基準法に基づき建築主事・指定確認検査機関(以下「建築主事等」という)の確認を受けなければなりません。確認手続きの中で、建築主事等から、消防長又は消防署長に同意が求められます。これを「消防同意」と呼んでいます。
 消防同意は、消防法第7条に定められています。以下に条文を載せておきます。
消防法第7条(抜粋)
 建築物の新築、増築、改築、移転、修繕、模様替、用途の変更若しくは使用について許可、認可若しくは確認をする権限を有する行政庁若しくはその委任を受けた者又は建築基準法第6条の2第1項の規定による確認を行う指定確認検査機関は、当該許可、認可若しくは確認又は同法第6条の2第1項の規定による確認に係る建築物の工事施工地又は所在地を管轄する消防長又は消防署長の同意を得なければ、当該許可、認可若しくは確認又は同項の規定による確認をすることができない。(以下略)
2 消防長又は消防署長は、前項の規定によつて同意を求められた場合において、当該建築物の計画が法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定で建築物の防火に関するものに違反しないものであるときは、同法第6条第1項第4号に係る場合にあつては、同意を求められた日から3日以内に、その他の場合にあつては、同意を求められた日から7日以内に同意を与えて、その旨を当該行政庁若しくはその委任を受けた者又は指定確認検査機関に通知しなければならない。この場合において、消防長又は消防署長は、同意することができない事由があると認めるときは、これらの期間内に、その事由を当該行政庁若しくはその委任を受けた者又は指定確認検査機関に通知しなければならない。
 要約すると、同意を求めるのは「確認等をする行政庁など」、同意をするのは「管轄の消防長又は消防署長」、同意の対象は「確認等が必要な新築、増築などをする建築物の計画」、同意の要件は「建築物の計画が防火に関する規定に違反しないこと」です。
 消防法第7条では対象法令について何も規定されていないので、建築基準法に基づく確認申請だけに限定されてはいませんが、現状はほとんどが建築確認に際しての消防同意ですので、ここでは建築確認に対する消防同意について述べます。
2 消防同意の意義
 消防法では、消防署長が建築物の完成後に立入検査を行い、建築物の防火上不適当な箇所を是正させることも、使用禁止等の命令をすることも可能です。
 しかしそうした場合、竣工後に是正工事が発生して、当初から計画しているより余計に費用がかかるなど建築主の損失が大きくなります。
 さらに、是正が行われないまま建築物が使用され続けると、その建築物の利用者や地域の住民は火災の危険にさらされることになります。
 消防機関が建築物の設計段階から関与できるようにしているのは、建築物の所有者、利用者等の負担をできるだけ軽くしながら、建築物の火災予防上の安全性を効果的に確保するためです。
3 建築確認に対する消防同意
 (1)建築確認と消防同意の関係
 建築確認について定めた建築基準法第6条には、消防という語句は出てきません。
 消防という語句が出てくるのは建築基準法第93条で、確認の条件として、建築主事は、消防長又は消防署長の同意を得なければならないと定められています。
 先ほど、同意を求めるのは「確認等をする行政庁など」であると述べました。建築確認では、「確認をする建築主事等」が同意を求めます。同意の意思は、消防長又は消防署長から建築主事等に通知されるもので、建築主にされるものではありません。消防同意は建築主事等と消防長又は消防署長との間、つまり行政機関同士のやりとりであり、建築主に対する行政処分ではありません(図参照)。
図 建築確認と消防同意のイメージ
(2)消防同意の対象
 建築確認の際には、消防同意が原則として必要ですが、消防同意の対象としていないものがあります。それは、防火地域及び準防火地域以外の区域内における、戸建て専用住宅及び住宅以外の部分の床面積が延べ面積の1/2未満かつ50m2以下の併用住宅です。これらについては、消防活動上及び火災予防上の必要最小限度の実態を把握するために、建築主事等から消防長又は消防署長に通知をしなければならないと定められています。
 (3)消防同意の要件
 消防同意の要件は、建築物の計画が「防火に関する規定に違反しないこと」です。
 防火に関する規定とは、具体的には、建築物の構造、防火区画、避難、内装、設備等、さらに建築物の敷地に関することなどです。これには、消防法や同施行令、同施行規則、火災予防条例といった消防関係法令だけでなく、幅広く、法律、命令及び条例に規定されるものがすべて含まれます。
 消防同意時に消防機関が、消防用設備等だけでなく、防火区画や避難階段の構造など建築基準法令に規定されている内容についても審査しているのはこのためです。
 たとえば、医療法施行規則の第16条に病院又は診療所の構造設備の基準が定められており、「病室は、第3階以上の階には設けないこと。ただし、第30条の12に規定する病室にあっては、地階に、主要構造部を耐火構造とする場合は、第3階以上に設けることができる」、「第3階以上の階に病室を有するものにあつては、避難に支障がないように避難階段を2以上設けること。(以下略)」とあります。これは、火災時の入院患者の避難安全のための規定ですので、病院又は診療所の計画について同意を求められた際には防火に関する規定として審査の対象となると考えられます。
 したがって、消防関係法令以外でも、防火に関する規定に違反している場合には、消防長又は消防署長は同意することができないことになります。
 (4)消防同意の処理期間
 消防同意の処理期間は、3日以内のものと、7日以内のものに分けて定められています(表参照)。
表 消防同意の処理機関
 消防機関は、この期間内に審査の上、同意又は不同意(不同意の場合はその事由を併せて)を建築主事等に通知しなければなりません。
 期間の算定方法は建築基準法及び消防法に規定がないので、民法にならいます。注意するのは、同意を求められた当日は算入されないことです。また、期間の終了日が土曜日、日曜日、休日、12月29日から1月3日までに当たる場合は、翌開庁日を終了日とします。
4 おわりに
 消防同意制度は、建築主にとっては1度の手続きで、建築と消防という2つの行政機関の関与が可能となるよう配慮されています。防火安全性を備えた建築物をつくるという目的のための極めて重要な意義のある制度です。
記事カテゴリー:建築法規 / 行政