社労士豆知識 第39回
会社退職後の各種社会保険等手続について
松山 拓央(松山拓央社会保険労務士事務所))
 厚生労働省が毎月発表している職業安定業務統計によると、平成30(2018)年8月の有効求人倍率(月間有効求人数÷月間有効求職者数)は1.63倍だったそうです。求職者1人に対して1.63社の企業が求人を募集しているという、いわゆる売り手市場が続いています(都道府県別(受理地別)だと、最高は福井県の2.15倍、最低は神奈川県の1.17倍)。
 ただし、この統計で分かるのは求職者と求人数の割合だけなので、求職者が必ず希望の職種に就けているというわけではありません。前職を退職後、就職ができない状況が長引く場合、各種社会保険はどうすればいいのでしょうか。今回は、退職後の各種社会保険等の手続について確認してみようと思います。
雇用保険(失業給付の基本手当)
 基本手当の受給期限は、退職日の翌日から1年以内になります。
 退職した会社から離職証明書が届き次第、速やかに住所地を管轄するハローワークにて手続を進めてください(基本手当を受給せず1年以内に転職し、雇用保険に加入して働き始めて次回基本手当を受給することになった場合、前職の雇用保険加入期間も通算されて受給日数が計算されます)。
 退職後に妊娠や出産等により引続き30日以上職業に就くことができない場合、基本手当受給期間の延長申請ができます。速やかに住所地を管轄するハローワークにご連絡ください。
健康保険
 退職後に加入する健康保険制度のパターンは、3パターンあります。
① 国民健康保険制度への加入
 住所地を管轄する市区町村での手続が必要です。
 前職の退職理由によっては、健康保険料が減額される場合があります。
② 配偶者、親、子等の健康保険制度への加入(被扶養者)
 三親等以内の親族で、生計を維持されている等、一定の要件に該当すれば健康保険の被扶養者になることができます。
 被扶養者に関する保険料は無料になります。
 被保険者の会社での手続が必要です。
③ 退職後も引続き同じ健康保険制度への加入(任意継続被保険者)
 住所地を管轄する協会けんぽ支部(健保組合の場合は組合)での手続きが必要です。
 法律要件で、退職日の翌日から20日以内に手続きが必要です。
 協会けんぽの場合、保険料は退職時点の標準報酬月額に掛かる保険料と標準報酬月額28万(全被保険者の平均標準報酬月額)として計算した場合のいずれか低い額になります(任意継続被保険者に会社負担額はなく、全額自己負担になります)。
年金
 退職後の年金制度のパターンは、大きく分けて2パターンあります。
① 国民年金1号被保険者
 各市区町村での手続きが必要です。
 前納制度を使用することによって、国民年金保険料が割引されます。
 保険料を納めることが経済的に難しい場合、国民年金保険料免除・猶予制度を活用することで、保険料納付を免除・猶予されます。
 保険料を納付していない期間は将来の年金額には反映されませんが、後から追納することで将来の年金額を増やすことができます。
② 国民年金3号被保険者
 配偶者の健康保険の被扶養者になった方は国民年金の3号被保険者に該当します。
 健康保険と一緒に配偶者の会社で手続を行い、国民年金保険料に関しても無料です。
住民税
 会社で毎月住民税を徴収(特別徴収)されていた場合、退職する会社が一括納付を行なうか、退職後は本人が住民税を納付(普通徴収)する方法に切替えます(次の会社が決まっている場合は、次の会社で特別徴収も可能)。
 会社が退職された従業員様が住んでいる市区町村のページから「給与所得者異動届」を打出し、必要事項を記入し市区町村へ手続をします。
確定申告
 12月に支払われる給与にて退職する場合は会社で年末調整をしてもらえます。
 1月~11月中に退職する場合、退職者本人が確定申告をする必要があります(同年中に就職が決まった場合は、退職した会社で発行された源泉徴収票を就職先に提出することで、年末調整にて手続をしてもらえます)。
松山 拓央(まつやま・たくお)
1986年 東京生まれ/2009年 拓殖大学商学部経営学科卒業後、2015年12月まで社会保険労務士事務所勤務/2016年1月 松山拓央社会保険労務士事務所開業/開業後は労務社会保険諸法令手続きのほかに、労務管理相談、就業規則作成、年金相談等にも携わり現在に至る
カテゴリー:建築法規 / 行政
タグ:社労士