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国立西洋美術館
大島 健二(東京都建築士事務所協会台東支部、OCM一級建築士事務所)
 戦前、実業家松方幸次郎が欧州で収集した美術品(西洋近代の絵画・彫刻と日本の浮世絵が主体)が戦後フランスに差し押さえられ、その返還(寄贈)の条件として美術館の建設を求められたことによりこの美術館は建設された。
 設計は「近代建築の三大巨匠」のひとりであるフランス人建築家ル・コルビュジエであり、弟子である前川國男・坂倉準三・吉阪隆正が実施設計・監理に協力し、昭和三四(一九五九)年に完成。彼が日本に残した唯一の建築作品となった。平成二八(二〇一六)年、世界七カ国に散らばる他の建築作品とともに「ル・コルビュジエの建築作品──近代建築運動への顕著な貢献」として東京で初めての世界文化遺産に登録された。
 彼が提案した「近代建築の五原則」を体現するだけでなく、「無限に成長する美術館」という斬新な発想も付加されており、わが台東支部としては、東京唯一の世界文化遺産がなんと台東区にあるという、これほど建築設計者冥利につきることはない。登録が決定するまでさまざまな人が奔走し、一喜一憂し、晴れて登録決定してからの服部征夫台東区長、栗田幸一東京都建築士事務所協会台東支部前支部長をはじめとする関係者の喜ぶ姿は、これからもずっと忘れることはないだろう。

名称:国立西洋美術館
所在地:台東区上野公園
建築時期:昭和三四(一九五九)年
世界文化遺産、重要文化財
大島健二(おおしま・けんじ)
OCM一級建築士事務所、東京都建築士事務所協会台東支部
1965年 神戸生まれ/神戸大学大学院建築学科修了(建築史)/東京の日建設計に勤務し、超高層ビル・官公庁・研究所など担当/1995年に独立/現在、浅草橋のOCM一級建築士事務所代表