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有山家の洋館
川﨑 和彦(東京都建築士事務所協会たちかわ支部副支部長、一級建築士事務所杢和設計)
 日野市街地の旧甲州街道沿いに建つ二階建て洋館造りの店蔵は袖蔵と共に、日野宿のシンボルといってよい。所有者の有山董氏の曾祖父彦吉氏を筆頭に、有志が明治一五(一八八二)年に設立した「日野銀行」が始まりである。
 明治二六(一八九三)年の日野宿大火や、関東大震災を経て、昭和初期ごろに現在の人造石洗出し仕上げの意匠に改修したらしい。洋館というには軒や窓扉周りは日本古来の伝統的土蔵の意匠であるが、対照的に玄関ポーチの柱頭およびモールディングや三角破風のペディメントは洋風意匠である。当時の左官技術は高度に発達しており、職人たちが技を競い合った様子がうかがえる見応えのある建物である。
 ただ、交通量の多い幹線道路に面しているので、電線・電柱なども障害となり、落ち着いて見学することもままならず、撮影ポイントにも苦慮するところであった。
 街道沿いには他にも公開施設となっている「旧本陣屋敷」、東京都選定歴史的建造物の「渡邉家(蔵)」、現在では希少となったJR日野駅の木造駅舎が健在である。
 日野は幕末に興った新撰組の発祥の地でもあり、江戸から大正期に至る歴史的風景が日常生活の中に生きている。

名称:有山家の洋館
所在地:日野市日野本町1─15─18
建築時期:明治15(1882)年
撮影者:川﨑 和彦
川﨑 和彦(かわさき・かずひこ)
東京都建築士事務所協会たちかわ支部副支部長、一級建築士事務所杢和設計