支部会員の設計事例を見学散歩
台東支部平成30年度研修|平成30(2018)年4月5日
石川 昂(東京都建築士事務所協会台東支部)

 一般社団法人東京都建築士事務所協会台東支部の研修が、平成30(2018)4月5日に開催されました。本研修は支部会員が設計した事例や、台東区景観まちづくり賞受賞作品などを見学しながら街歩きを行い、区内の建築への見識を深めるために行われたものです。支部員、他支部の方その他を含め、総勢20名を超える方の参加で盛況な状態での開始となりました。
日本そろばん資料館。
 台東区下谷にある「日本そろばん資料館」(アーキテクチャー・ラボ:高安重一)から街歩きがスタートしました。設計者からそろばんを33倍に拡大した棚をメインとして8つの展示場所を配置したことや、コンペ時の経緯や設計時の状況などについての説明から始まり、学芸員の太田敏幸さんから、そろばんの形は400年前から変わらないなど、そろばんの歴史についてレクチャーしていただきました。
東京国立博物館 正門プラザ。
ルートブックス。
 次なる「東京国立博物館 正門プラザ」(安井建築設計事務所、台東区景観まちづくり賞受賞作品)に向かう道中では、「キネマ倶楽部」など古い建物を通り、建築談義をしながら歩を進めて行きました。「東京国立博物館 正門プラザ」ではガラスの納まりや法的にどのようにできているかなど、設計者ならではの会話が弾んでいました。
 「ルートブックス」(ゆくい堂)は、台東区らしい古い鉄骨造をリノベーションした建物です。通りを挟んでの3軒をリノベーションしており、魅力的な通りが創出されていました。
東京松屋 UNITY。
 「東京松屋 UNITY」(河野有悟建築計画室)の見学は東京松屋の第18代当主、伴利兵衛社長のご説明から始まりました。東京松屋は江戸時代から続く襖紙屋であり、「江戸からかみ」と呼ばれる伝統工芸で、東京都および国より指定を受けた技術であること、建物は店舗および集合住宅となっており、集合住宅部分では日本の和室の間取り、和紙を大切にした住戸としたことなど興味深い内容をお話いただきました。そして設計者の河野有悟さんよりスライドを利用した建物全体の説明の後に、店舗部分・集合住宅部分を見学しました。説明いただいた通り、自然光・風を大切にした吹き抜け5カ所から路地状となっている共用廊下に光と風が届く、のびのびとした空間を体感することができました。
御徒町天ぷら酒処 天正。
 最後に辿り着いた「御徒町天ぷら酒処 天正」(川島鈴鹿建築計画)は、三代続く下町の天ぷら屋さんです。設計者の鈴鹿美穂さんより、アクロバティックな構造となっている鉄骨ブレースや、お店も住宅の一部として利用している下町ならではの生活の仕方についてご説明いただきました。
 そのまま懇親会となり、今回の研修の総評や今後の支部の展望などを踏まえた木村修支部長の挨拶より始まりました。おいしい天ぷらをいただきながら、まち歩きの意見交換など歓談を交わしました。締めに隂山日出也支部相談役よりひとこといただき、今後の台東支部の発展を皆で祈念しお開きとなりました。
今回、設計者から直接説明を聞きながら見学できたのは素晴らしい機会であり、台東支部では今後もこのような見学研修を企画し、交流を深め活動を進めて行きたいと思っています。この記事をご覧になった方はぜひ、次回ご参加いただければと思います。
記念写真。(撮影:山本 真由|(株)DAIRIN)
石川 昂(いしかわ・こう)
東京都建築士事務所協会台東支部、アーキテクチャー・ラボ石川昂建築設計事務所