「新宿設計三会」主催 漱石山房記念館と建築巡り
新宿支部、新宿設計三会|平成30(2018)年3月24日
川手 謙介(東京都建築士事務所協会新宿支部、青年部会幹事、三悦建築設計事務所)
榎町地区センターでの講演風景。
漱石山房記念館の見学。
早稲田大学大隈講堂前にて。(撮影:筆者)
 新宿地域で活動する(公社)日本建築家協会関東甲信越支部新宿地域会、(一社)東京建築士会新宿支部と、われわれ新宿支部の「新宿設計三会」の主催で、地域への建築を通じた貢献と親睦を図ることを目的に「漱石山房記念館と建築巡り」と題した講演会、見学会と懇親会を開催しました(平成30/2018年3月24日 土曜日)。参加者の総勢は72名で、内訳は重複を含め、家協会14名、士会9名、事務所協会15名のほか、新宿地域外の各会の方、市民の方でした。
 第1部の講演会は、漱石山房記念館の設計者であり早稲田大学名誉教授の入江正之先生と、新宿区文化観光産業部文化観光課の北見恭一学芸員を講師に迎え、13時から早稲田町にある「榎町地域センタ-」の多目的ホ-ルで開催しました。北見学芸員からは、「漱石ゆかりの街について」と題して講演をいただきました。松山、坊っちゃんの印象は強いが、漱石は新宿生まれであることから始まり、その生きた時代の空気感を時に笑いを交えお話しをいただきました。「漱石山房記念館の建築について」と題した入江先生の講演では、先生の研究テ-マであるアントニオ・ガウディ(1852-1926)と、夏目漱石(1867-1916)の生きた近代という共通点の話しに始まり、読者を「引っ張り」(吊り上げる)漱石の小説の言語が小説を「支えた」(支える)ことから設計のヒントを得たこと、当時の骨格の残る早稲田のまちなみすべてが記念館であると捉えて設計したこと等々をうかがいました。漱石終焉の地に建つ「漱石山房記念館」(2017年)に会場を移し、小説にヒントを得たという内部空間の展示等について、引き続き解説をいただきながら見学をしました。
 第2部は桜満開の中、漱石の父が名づけたという「夏目坂」を上り、その小説に数多く登場する早稲田界隈を4班に分かれて建築巡りをしました。コ-ス途中にあった、関東大震災後に竣工の「早稲田小学校」(1928年)は、西欧古典を正しく理解したと云われる渡辺仁の設計で、いわゆる復興小学校と云われるものとは一線を画す存在感を放っていました。
 皆さんの健脚のおかげで17時にゴ-ルの早稲田大学キャンパスに無事到着。ちょうど大学の卒業式も行われていたようで老若男女問わず賑わってた中、その卒業生にお願いして大隈講堂前で記念撮影をして終了。最後は大隈庭園を望むリ-ガロイヤルホテルでの懇親会でした。
 今回の講演会・見学会は、新宿設計三会のスタ-トイベントでした。ディテ-ルの写真を撮る方、歴史的な話しに興味津々な方々と、別に色分けをするつもりはありませんが、参加者それぞれのキャラクタ-が出ていてよかったのでは…。引き続きこの会で何ができるかを考え続けていきたいと思います。
川手 謙介(かわて・けんすけ)
東京都建築士事務所協会青年部会幹事、新宿支部、株式会社三悦設計代表取締役
1968年 東京市谷生まれ/日本大学生産工学部建築工学科(建築史山口廣研究室)卒業/第一設計入社後取締役企画設計室長を経て現在、三悦建築設計事務所代表取締役/TAAF青年部会幹事/新宿支部