第24回建築ふれあいフェア開催
「ケンチくんと学ぼう! 地球にやさしいみんなのまち」をテーマに
佐賀井 尚(東京都建築士事務所協会理事・広報委員会委員長・世田谷支部、有限会社尚建築工房)
井出 幸子(東京都建築士事務所協会会誌専門委員会・豊島支部)
鈴木 文雄(東京都建築士事務所協会理事・研修委員会委員長・会誌専門委員会委員長・墨田支部、有限会社鈴木設計一級建築士事務所)
倉部 広大(東京都建築士事務所協会青年部会副部会長・新宿支部、株式会社三悦設計)
大平 孝至(東京都建築士事務所協会会誌専門委員会副委員長・台東支部、株式会社ダイリン一級建築士事務所)
会場配置図
みんなの街
各支部制作の東京百景2023ポストカード展。お気に入りのポストカードをプレゼント。
 一般社団法人東京都建築士事務所協会の主催、新宿区の共催、東京都ほかの後援による「第24回建築ふれあいフェア」は、令和5(2023)年9月9日(土)、10日(日)の2日間、新宿駅西口広場イベントコーナーを会場に開催された。ステージでの各種イベントのほか、ワークショップや展示ブースに多くの入場者を集めた。
東京都立美原高等学校の皆さんによる和太鼓演奏。
東京建築賞発表会①
東京建築賞発表会①の発表者。左より、相坂研介さん、横井創馬さん、阿折忠受さん、高藤万葉さん。
新宿区セミナー。小野川哲史新宿区環境清掃部環境対策課長。
こども連れ家族お楽しみショー プレゼントもあるよ! 杉本重実さん。
ケンチくんといっしょにクイズ。
元気力発電所。
台東支部。建築材料にイラストをレーザープリント!
新宿支部。折り紙建築をつくろう!
青年部会によるけんちくワンダーランド。
ケンチくん着ぐるみ。左が今年登場した布製のバージョン。昨年のケンチくんも活躍。
9月9日(土)

オープニング(10:00)
 第24回建築ふれあいフェアが幕を開けた。
 オープンセレモニーでは、千鳥義典東京都建築士事務所協会会長、新宿区長挨拶代理 中山祐一建築指導課長、鈴木文雄建築ふれあいフェア副委員長が欠席した土屋正委員長に代わり挨拶した。
和太鼓演奏(10:15)
 引き続き東京都立美原高等学校の皆さんの若さ溢れる和太鼓演奏が始まった。高校生の熱気と笑顔あふれる素晴らしい演奏だった。
(佐賀井 尚)
第49回東京建築賞発表会①(13:00、10日10:00)
 ロータリー横のステージは、ガラス戸が大きく開け放たれ熱気が容赦なく入り込み、行き交う人びとののざわめきや救急車も含めた車両の騒音など、都市の喧騒に取り囲まれていた。
 選考委員会副委員長を務めた宮原浩輔さんの司会で、『コア東京』6月号で発表されている今年度の東京建築賞受賞者4者によるプレゼンテーションが行われた。
・東立石保育園(相坂研介:東京都知事賞)
 天井川の中川に近接した保育園だ。葛飾区要請の洪水発災時の300人以上の近隣の人たちの避難「とりで」としての機能と、日常の子どもたちを守り育てるという保育機能とが、共にあり続けられる「フェーズフリー」の施設としてNHKで紹介されたという話も伺った。聴衆からエントランスの受け渡し空間の考え方が秀逸という感想もあった。
・ニセカイジュウタク(横井創馬:新人賞)
 現代版の2世帯住宅の提案だ。コアのタワー(塔)を中心に二重螺旋のように、パーゴラ内を回りながら、ライフスタイルや社会の変化に対応できる空間の仕組み(100通り以上あるらしい)を挿入しているというもの。ハウスメーカーと共働したフラッグシップとしての提案プロジェクト。法的にも構造的にも注目である。木部現しを活かすことのできる木造3階建の法基準、穴が多く力を伝達しにくいスキップフロアの水平力をコア部分で受ける耐震構造。1階をめぐる庇が、さらに連続して、街とのつながりの装置となっていったらと夢想するプロジェクトである。
・SUSTIE(阿折忠受:一般部門二類奨励賞)
 働いている人のZEB・Wellness環境を比較実証することを目的とした6,000㎡のオフィスビル。国内最大規模でのZWBの実現、WELL認証、CASBEE-WOの最高ランクを取得したプロジェクト。ZEBとは年間で消費する一次エネルギーゼロを目指した建物。実際、太陽光パネルなどでエネルギーを作るなど様々な加算でゼロを目指すのだが、実際はかなり難しい。本物件は『ZEB』鍵カッコ付きの100パーセントZEBを実現した建物と紹介された。
・台と家(高藤万葉:共同住宅部門奨励賞)
 築50年の35㎡のマンション自邸のリノベーション。「小さい中に住む」ために箱を配置する提案。箱に脚がある。そこを設備配管に活用。小さな家でも大きなキッチンをサポートする可動ワゴンの活用。カーテンで採光や視線のコントロール。箱と箱の間を自分たちが暮らしたい空間・気づきの空間として、表現・展開し、YouTube発信している。
新宿区セミナー「ゼロカーボンシティ新宿」の実現に向けた取組について(14:15)
 昨年に引き続き小野川哲史新宿区環境清掃部環境対策課長より、以下の説明があった。
・令和5(2023)年2月の新宿区第3次環境基本計画の改定について
 基本目標5項目のうちの1、3、5について、大幅に改定した。その視点は、
1. 地球温暖化対策の取り組み加速
 7月から30度以上の真夏日が続いている。2050年にはカーボンニュートラル目標に向けて、再生エネルギーを生活の中に根付かせ、使っていく。昨年に引き続き、新宿区役所の取り組みの説明。区としては、小規模発電にも積極的に取り組んでいただきたく啓発していきたい。
3. 資源循環型社会の構築
 食品ロス削減推進と、プラスティックに関わる資源循環の促進(レジ袋有料化、ゴミ収集方法、コンビニのプラスティックカトラリーの削減など)に関する法。
5. 多様な主体の連携などの推進
 環境学習・教育の推進。
 化石燃料で長い年月かけて悪化してきた環境を、改善の方向への進める努力は、長い歳月がかかることを覚悟してしっかり進めていきたい。
・令和7(2025)年施行予定の東京都環境報告書制度について
 令和7(2025)年度から、年間供給2万㎡を超える大手ハウスメーカーは太陽光(熱)パネルなどを設置することが義務付けられ、かつ、建築士は、注文住宅・建売住宅で、購入者へ重要説明義務(説明タイミングは異なる)が付与された。問い合わせが多く寄せられ、都・区共に、窓口を用意し、情報提供に努めている。
・令和6(2024)年施行予定の建築物再生可能エネルギー使用促進区域制度について
 太陽光(熱)パネル設置が屋上の高さ規制に引っかかる場合の一部緩和の特例制度も都は詳細検討中。
 グテーレス国連事務総長が7月「地球沸騰化の時代に入り後戻りできない」と語った。この100年で上がった1.5°Cをハードルと考え、なんとか今の状態を保ち、これから100年以上かかるかもしれないがどうにか減らしていくことに努めなくてはならないことが課題と考えている。
(井出 幸子)
こども連れ家族お楽しみショー プレゼントもあるよ!(15:45)
 「異次元の少子化対策」と書かれた謎の張り紙がされたステージにアンパンマンの帽子をかぶって現れたのは、新宿支部所属であるサンメイト一級建築士事務所の杉本重実さんである。
 何が始まるのか期待するもどこか怪しげな雰囲気……。ステージが始まり「アンパンマン」の曲を流し唄い出すが歌詞を覚えていないようで、ところどころで間違えるが気にせず歌い続ける。さらに妙な振り付けを交えながら会場に向けて椅子に座るよう促し徐々に席は埋まっていく。なかなかのエンターテナーだが、やはりどこか怪しい……。
 ようやく曲が終わり拍手のなかトークするも、しばらくするとまたアンパンマンの曲を流し、間違えながら唄い出す。よくよく聞いてみるとこの曲はアンパンマンのオリジナルではなく、エアロスミスなどの曲をミックスしリズムも打ち込みで作成しているように聞こえる。自作となるとタダモノではない。
 そのうち外部通路の歩行者に声をかけ出し「カモーン!」と誘いだす。多くの通行人が失笑するが見なかったことにして足早に立ち去る女性もいる。怖いのであろう。気持ちはわかる。しかし外国人観光客は喜んでいる様子。場内から外部にアプローチする唯一のステージだ。こちらもマヒし出したのかだんだんとこの行動に引き込まれる。曲が終わりトークが始まるが再度アンパンマンが流れ出し同じことを繰り返す。すでに毒にやられてしまったせいでこのころにはそれを期待していた自分に気付く。楽しい……。
 最後は子どもたちにお菓子などを自由に取らせ、交流しステージが終わる。プログラムタイトルには「プレゼントもあるよ!」と書かれているが「プレゼントしかない」ことが判明した。奇妙な演技で人を呼び寄せ子どもたちにふるまうというなんとも優しく怪しいプログラムだった。
 新宿支部には会長をはじめふれあいフェア実行委員長である理事や、支部長会議で必ず発言する名物支部長など目を引く会員がそろっているが、あらたに中毒性のある人材を発見してしまった。今後も人材豊富な新宿支部から目が離せない。
ケンチくんと一緒にクイズ(9日11:20、16:30、10日14:45の3回)
 建築ふれあいフェアのキャラクターでおなじみのケンチくんと一緒に、建築に関する3択問題に答えていく家族向けのプログラム。
 昨年までの紙製のケンチくんから進化した布製のケンチくんの初ステージだ。ケンチくんをお世話している某支部の某氏によると、かなり軽量化されたとのこと。体重が軽くなったケンチくんは元気よく、動きが断然によくなり、会場を沸かせていた。
 最終日の同プログラムでは、ケンチくんのファンと称する女性が現れ、ひとつひとつの動きに「かわいい~♪」と喜んでいた。ゆるキャラ好きでいろいろとネット検索していた中、ケンチくんを発見し虜になったとのこと。お世話する某支部の某氏の苦労が報われる。当然であるが、東京都建築士事務所協会のサイトでしか会えないので、意を決してふれあいフェアに会いに来たとのこと。ケンチくんと交流し一緒に写真撮影を行い笑顔で帰って行った。
 今後もケンチくんの存在が徐々に大きくなっていく予感がする。ケンチくん関連プログラムの拡大も期待したい。
(鈴木 文雄)
東京建築賞発表会②。左より、小林佐絵子さん、花岡郁哉さん、ひとりおいて山岡嘉彌さん、恩田聡さん。
児童画コンテスト表彰式。会長賞受賞の伊達悠希さん(小学3年生)。
児童画コンテスト受賞者のみなさん。
鷹取奨さんによるバルーンアートパフォーマンス。
(公財)東京都環境公社 東京都地球温暖化防止活動推進センター 温暖化対策推進課創エネ支援チームの五十嵐史江さんによる東京ゼロエミ住宅についてのセミナー。
komazawa jazzmarketのジャズステージ。村裕子さんバイオリン、宮堂二郎さんギター、新田収さんベースの演奏。大川良平さんのヴォーカル。
しんじゅく耐震フォーラム。木工体験コーナー。
(一社)東京構造設計事務所協会(ASDO)。段ボール貯金箱を作ろう!
スタンプラリーのカード。
9月10日(日)

第49回東京建築賞発表会②(10:00)
 (一社)東京都建築士事務所協会の主催する「東京建築賞」も第49回目を迎え、若手の設計者から大手の設計事務所の設計者による、幅広いジャンルの賞に、多くの作品の応募をいただいた。それらの多くの優秀な作品の中から、さまざまな部門賞に19作品が選ばれた。
 その中から、東京都建築士事務所協会会長賞を受賞した(株)日建設計一級建築士事務所、大成建設(株)一級建築士事務所設計の「新宿住友ビル RE-INNOVATION PROJECT」、リノベーション賞・戸建住宅部門優秀賞を受賞したアトリエコ一級建築士事務所の「菊名貝塚の住宅」、一般部門一類奨励賞を受賞した(株)竹中工務店東京一級建築士事務所の「リバーホールディングス両国」、共同住宅部門奨励賞を受賞した一級建築士事務所山岡嘉彌デザイン事務所の「鶯啼居」、4氏による受賞作品についての講演が行なわれた。
 受賞者の皆さんによる講演は設計開始時から竣工後の状況まで限られた時間の中で詳細に説明いただいた。頭の中で考えた事象に対して現地確認やソフトを用いた検討、実際に建てることができるのかといった行政との調整、作業にかかった時間など、設計者側が気になる内容を講演いただいた。受講者も分かりやすい講演で、メモを取り熱心に参加された方もいた。
第2回こどもけんちく児童画コンテスト表彰式(11:40)
 「地球にやさしい すんでみたい“いえ” くらしてみたい“まち”」をテーマに、たくさんの応募の中から会長賞として選ばれたのが伊達悠希さん(小学3年生)の「バオバブの家」。バオバブを選んだ理由が、中をくり抜いても木が死なず、建物として使用できること。また、水を貯蓄でき、木の繊維を用いてロープや服をつくれる、といった観点がとても素敵な発想であった。
実行委員長賞として選ばれた村木晴香さん(小学6年生)の「木を増やすために」。村木晴香さんはなんと2年連続の受賞。昨年同様に鮮やかな色使いや細かな部分の作画も丁寧で、この1年間で発想力と作画力の成長に驚かされる作品だった。その他、金賞2作品、銀賞3作品、銅賞5作品が表彰された。
(倉部 広大)
バルーンアートパフォーマンス(12:25)
 大勢の子どもたちが集まる中、南部支部・鷹取奨さんのいろいろなバルーンアートが目の前でつくられた。最初はあっという間に剣ができ上がり、次は動物リスやキリン、ぐるぐる回りながらへびができたり、いきなりバンと割れてしまってちょっとびっくりしながら、手の込んだ湖に浮かぶ白鳥、魔法の杖、蝶から天子の羽、ティアラなども。最後はバルーン釣り大会となり、子どもから親までみんなで楽しめたパフォーマンスだった。
セミナー:東京ゼロエミ住宅の紹介と助成事業の手続きについて(14:00)
 (公財)東京都環境公社 東京都地球温暖化防止活動推進センター 温暖化対策推進課創エネ支援チームの五十嵐史江さんによるセミナーでは、①東京ゼロエミ住宅について、②省エネルギーについて、③東京都の助成金についての説明があった。
 「東京ゼロエミ住宅」とは、高い断熱性能の断熱材や窓を用いたり(断熱性の確保)、省エネ性能の高い照明やエアコンなどを取り入れた(設備の効率化)、人にも地球環境にもやさしい都独自の住宅。その基準は、ZEHの判断基準や建築物省エネ法よりもより高く設定されている。設備・建築費の増加額を超えるメリットがあると説明された。
 省エネルギーとは限りあるエネルギー資源がなくなってしまうこと防ぐため効率よく使うことと説明があり、家庭で消費されるエネルギーの実態についてのクイズがあった。
 東京都の東京ゼロエミ住宅に係る助成金については、新築建築費の補助として住宅の環境性能・種別に応じて最大210万円と、太陽光・蓄電池・V2Hと合わせることで補助が増額されると説明があった。また申請についても、適合すべき事項など多くのルールがあり、手引きを参考に方位・深基礎・地域など確認して、締め切りを忘れない等の注意点の細かな説明もあった。
ジャズステージ(9日、10日で合わせて4回)
 komazawa jazzmarketの最終ステージは、村裕子さんバイオリン、宮堂二郎さんギター、新田収さんベースの演奏。設計事務所の大川良平さんのリズムの良い甘いヴォーカルが加わり、最後のプログラムを飾るにふさわしいオールオブミー、ルート66が演奏された。手拍子からだんだんと盛り上がり盛大な拍手で終わるステージとなった。
エンディング(15:50)
 土屋正実行委員長の無念の欠席で鈴木文雄委員が代読。コロナ禍による制限のない建築ふれあいフェアの開催は4年ぶりのこと。「ケンチくんと学ぼう! 地球にやさしいみんなのまち〈建築士と考えるカーボン・ゼロ社会〉」というテーマによるプログラムを通じて、環境に対する気づき、考えの変化などを来場のみなさんに少しでも残すことができたなら実行委員会として無上の喜びであり、来年の第25回建築ふれあいフェアがさらなる進化で開催されることを願いますと締めくくった。
(大平 孝至)
佐賀井 尚(さかい・たかし)
東京都建築士事務所協会理事・広報委員会委員長・世田谷支部、有限会社尚建築工房
1956年 栃木県生まれ/1980年 武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、(株)ランド計画研究所勤務/1990年 尚建築工房設立/1998年 有限会社尚建築工房に改組
井出 幸子(いで・さちこ)
東京都建築士事務所協会豊島支部 副理事、UIFA JAPON(国際女性建築家会議日本支部)広報担当理事、(株)井出幸子建築設計室一級建築士事務所
1950年 東京都生まれ/1972年 日本女子大学住居学科卒//1972〜2012年 (株)アール・アイ・エー勤務、各種計画・意匠設計に従事/2012年 (株)井出幸子建築設計室一級建築士事務所設立
鈴木 文雄(すずき・ふみお)
東京都建築士事務所協会理事・研修委員会委員長・会誌専門委員会委員長・墨田支部、有限会社鈴木設計一級建築士事務所
1984年 東海大学建築学科入学/1987年 同校中退、東京デザイナー学院建築デザイン科入学/1989年 同校卒業/有限会社鈴木設計一級建築士事務所入社/現在、同代表取締役
倉部 広大(くらべ・こうだい)
東京都建築士事務所協会青年部会副部会長・新宿支部、株式会社三悦設計構造設計室
1987年東京都生まれ/2008年 日本工学院専門学校卒業/2008年(株)ビームス・デザイン・コンサルタント入社/2020年(株)三悦設計/現在、同構造設計室室長
大平 孝至(おおひら・たかし)
東京都建築士事務所協会会誌専門委員会副委員長・台東支部、株式会社ダイリン一級建築士事務所
1984年 東京電機大学建築学科卒業/株式会社ダイリン一級建築士事務所勤務。マクドナルド、松屋、鳥貴族等、チェーン展開の飲食店の建築設計及び店舗デザイン設計をする