TAAFフォーラム 沖縄研修見学会開催
港支部|令和5(2023)年3月9〜11日@沖縄
綱川 智久(東京都建築士事務所協会港支部、(株)綱川建築事務所)
 コロナ禍で中断していた港支部研修見学会であったが、16名のメンバーで沖縄を訪問し、建築やまちづくりについて見聞を広めた。天候に恵まれ、暖かい沖縄で参加者の懇親を深め、無事に当初の成果を修めた。
アメリカンビレッジ。
ホテルエントランス前。
ホテルロビー。
客室からの眺め。
3月9日(木曜日)
 全国旅行支援により旅行者は増大したことで、手荷物検査場は長蛇の列で、出発便は軒並み遅れていたが、那覇行きの飛行機は定刻に出発。那覇空港に到着後、最初の訪問地、北谷町の美浜タウンリゾート「アメリカンビレッジ」に向かった。
 アメリカンビレッジは、那覇空港から車で約40分、沖縄とアメリカのまちなみが融合した異国情緒あふれるリゾートタウンである。米軍施設の返還に伴い、地域の特性を生かしてアメリカの街の雰囲気を再現している。1997(平成9)年から施設が順次開業し、2004(平成16)年にほぼ完成。その後も時代のニーズに合わせた街へと進化を続けている。海と街が一体となったリゾートタウンのデポアイランドエリアは、インポートマーケットやアパレルショップ、レストランやカフェ、シネマコンプレックスやライブハウスなど、ショッピングにグルメ、エンターテインメントが揃っている。レストランで昼食を楽しんだ後、ビレッジ内のショップ等を各自散策した。
 その後タクシーに分乗し、宿泊先の沖縄本島中部恩納村の「ANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾート」に到着。各自夕食まで、夕日の美しい万座毛やビーチの散策、大浴場へと自由に過ごした。
 ホテルにて沖縄料理を中心としたバイキングに舌鼓を打ち、地元のオリオンビールや泡盛で喉を潤した。そして熟睡へ。
名護市庁舎中庭より。
今帰仁村中央公民館で記念撮影。
美ら海水族館入口。
中村家住宅屋根のシーサー。
夕刻の浦添市美術館。
3月10日(金曜日)
 ホテル内レストランで朝食後ワゴンハイヤーに分乗し、今回の研修メインの有名建築物の見学に出発した。
名護市庁舎(1981年、設計:Term Zoo(象設計集団+アトリエ・モビル))
 1978(昭和53)年の公開コンペの入選作である。第33回日本建築学会賞受賞作品であるが、築後42年を経て老朽化が進み、昨年7月より名護市は「名護市庁舎等更新検討に関する基礎調査」を立ち上げ、保存・建て替えを含めて、今後の市庁舎のあり方の方向性を検討している。
今帰仁村中央公民館(1975年、設計:象設計集団)
 象設計集団の手掛けた地元住民の施設。真っ赤な柱(276本)と中庭に続く開放的な半屋外が特徴の建物。竣工2年後には芸術選奨文部大臣新人賞芸術選を受賞した。
 竣工時は屋根に緑が茂っていたがその後台風等によりなくなっている。2020(令和2)年1月に、柱の塗装ボランティアにより再塗装された。
沖縄美ら海水族館(2002年、設計:国建)
 施設が広くて混雑しているため各自自由に施設を見学した。沖縄本島北西部の本部半島近くにある国営沖縄記念公園・海洋博覧会地区(海洋博公園内)の水族館。ジンベイザメ、マナティほか珍しい海洋生物を展示している。
 「沖縄本土復帰記念事業として1975(昭和50)年に開催された沖縄国際海洋博覧会の海洋生物を展示した『沖縄国際海洋博覧会の海洋生物園』が出展された。その後、博覧会跡地に国営沖縄海洋博覧会記念公園を整備するにあたり、博覧会施設を受け継いで1979(昭和54)年8月に『国営沖縄海洋博記念公園水族館』として開館した。短期間の博覧会用に建設した施設のため老朽化が著しくなってきたことから沖縄総合事務局が主体となって新館を建設し、旧来の水族館を2002(平成14)年8月31日に閉館、沖縄本土復帰30周年に合わせて同年11月1日に新館を開館させ同時に現名称に改称された」。(Wikipedia 抜粋)
中村家住宅(18世紀中頃、国指定重要文化財)
 「中村家住宅は戦前の沖縄の住居建築の特色をすべて備えている建物である。沖縄本島内では、第2次世界大戦の沖縄戦を経てこのように屋敷構えがそっくり残っている例は極めて珍しく、当時の上層農家の生活を知る上にも貴重な遺構であるとのことで、1956(昭和31)年に琉球政府から、1972(昭和47)年、復帰と同時に日本政府によって国の重要文化財に指定された」。「現存する建物は18世紀中頃に建てられたと伝えられている。建築構造は、鎌倉・室町時代の日本建築の流れを伝えているが、各部に特殊な手法が加えられて、独特な住居建築になっている。この遺構は、士族屋敷の形式に農民の形式である高倉、納屋、畜舎等が付随して沖縄の住居建築の特色をすべて備え持っている。屋敷は、南向きの緩い傾斜地を切りひらいて建てられており、東、南、西を琉球石灰岩の石垣で囲い、その内側に防風林の役目を果たしている福木を植え、台風に備えている」。「屋根は本瓦葺き(明治中頃まで竹茅葺き)、漆喰塗りで、屋根の上に魔除けのシーサー(獅子)を置いている」。(ホームベージ抜粋)
 「シーサーとは、ライオン=獅子のことで、魔物や災いを追い払ってくれる沖縄の守り神で、沖縄に行くと個人宅や公共施設、歴史文化財など至る所でシーサーを見ることができる。守りたいものを背に災いが侵入してくる方向に向かって置かれ、1体のものと2体対になっているものがある。2体対のシーサーはオスとメスのペアで、口が開いている方がオス、閉じている方がメス。諸説あるが、口を大きく開いた「あ」から始まり口を完全に閉じた「ん」で終わる、仏教の「阿吽」を表現しているといわれている」。(「じゃらんニュース2021.04.28」より抜粋)
浦添市美術館(1990年、設計:内井昭蔵建築設計事務所+かみもり設計JV)
 国道330号線から見える、ドームのような塔のような建物。夕刻迫り時間の都合で外観のみ見学した。
この多国籍風の建物の正体は、沖縄県で初めて建てられた公立美術館、浦添市美術館だ。設計者の故内井昭蔵氏は浦添市美術館の設計について、「塔と回廊による構造」をテーマにし、次のように解説している。「建築は垂直方向に展開される塔性と、水平方向に展開される回廊性によって構成される。塔性とは足で地をつかんでいる人間、ひとつの世界を表現し、回廊性とは人と人、世界をつなぐ存在を表現する。人や世界はひとつではなく、多くの人や世界とつながって共存し、より大きな存在となる」。(参考:「塔と回廊による構造」、『新建築』1990年7月号p249)

 夕刻、宿泊先の那覇市「ホテルJALシティ那覇」に到着。以後自由行動。
 ホテルは沖縄のきっての歓楽街、国際通りに面しており、夕食をとりながら、夜の街の散策、お土産探し等、各自精力的に街の雰囲気を時間を忘れて感じていた様子だった。
鯨ウォッチング。(写真提供:中村玲子)
3月11日(土曜日)
 各自ホテル内レストランで朝食をとる。那覇空港集合15時まで各自自由行動となり、数グループに分かれて再建中の首里城や鯨ウォッチング等楽しんだ。鯨ウォッチングでは、運よく鯨に遭遇できた。
 15時那覇空港JAL出発カウンターに集合。予定通り那覇空港出発、偏西風が弱く定刻より15分遅れで羽田空港到着。流れ解散。お疲れ様でした。
詳しくは東京都建築士事務所協会港支部ホームページ(https://www.taaf-minato.jp/)をご覧下さい。
綱川 智久(つなかわ・ともひさ)
東京都建築士事務所協会港支部、(株)綱川建築事務所