VOICE
本橋 良介(東京都建築士事務所協会広報委員会・会誌専門委員会・世田谷支部、株式会社MMAAA一級建築士事務所)
メタバースの話
昨年のニュースで突如としてfacebook社がMeta社になるということで一躍話題になった「メタバース」。初めて聞いた時には何のことやらピンと来なかったのですが、「GAFA」の一角を担う企業がよほどの理由もなく社名を変えることもないだろう。「GAMA」になってしまうではないかと思い、色々と調べていくとSF小説で描かれていたような世界が着実に近づいてきているのだと知ることになりました。
そもそも「メタバース(metaverse)」とは何か? 「ユニバース(universe)」との対比で考えると分かりやすい。「Universe」は日本語では「宇宙」と訳されることも多いが、概念的には「uni-」という「単一の、ただひとつの」というところがポイントで、「現に私たちが生きているここの物事の総体」を指していると考えます。一方の「メタバース」は「meta-」という接頭辞が「超」を意味するので、字義通りに考えれば「超宇宙」、別のどこかにあるもうひとつ、ないしは複数の宇宙に当たるかと思います。実際のところ、いわゆるVR(ヴァーチャルリアリティ)空間のことを指すと考えれば分かりやすい。あるいは過去に流行った「セカンドライフ」や最近の「あつ森」や「フォートナイト」といったゲーム空間も、アバターと呼ばれる自分を操作してメタバース空間で参加します。
このメタバース空間をよりリアリティをもって没入できる技術開発に投資を進めているのがMeta社ということになります。たとえば人の五感といわれる感覚のうち、ゴーグルとヘッドセットによって視覚と聴覚が、特殊な手袋をして電気信号を流すことによって触覚を再現する技術も大きく進んでいるとのこと。味覚と嗅覚を再現するのが意外にも難しいとのことですが、そこまで進めばメタバースで意のままに感覚を操作できてしまうことになります。あるいは中枢神経系に直接働きかけるような薬物なども研究されているようで、そうなるとディストピアでしかないようにも思いますが……、そこはまた別の機会に。
一方でユニバースの生活をより豊かにするためのメタバースとして考えられているのが、「ポケモンGO」や「ピクミンブルーム」といったゲーム。これらは言うなればユニバースにメタバースを重ねることで生活を豊かにしようという指向が見えます。両方とも散歩を楽しくする仕組みでポケモンを集めて歩くのか、花を植えて歩くのか(もちろん、バーチャルに)。本誌でも各支部の街歩き記事の連載が始まっていますが、今後はこのような街歩きも色々なメタバースが重ねられて違った世界を見られるようになるかもしれません。
本橋 良介(もとはし・りょうすけ)
東京都建築士事務所協会広報委員会・会誌専門委員会・世田谷支部、株式会社MMAAA一級建築士事務所
1981年 大阪生まれ/2003年 東京工業大学工学部建築学科卒業/2009年 東京工業大学理工学研究科建築学専攻 博士課程 満期退学/2014年 本橋良介アトリエ 開設/2017年〜 MMAAA 共同主宰
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