越後妻有文化ホール・十日町市中央公民館 段十ろう
梓設計
第45回東京建築賞|一般二類部門奨励賞
建築主:
十日町市長 関口 芳史
設計:
株式会社梓設計一級建築士事務所
施工:
丸山・村山特定企業体
所在地:
新潟県十日町市本町1丁目上508-2
主要用途:
劇場、公民館
構造:
鉄筋コンクリート造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造
階数:
地上4階
敷地面積:
10,823.78㎡
建築面積:
3,063.72㎡
延床面積:
5,258.72㎡
工事期間:
2015年8月〜2017年9月
撮影:
北田 英治
設計趣旨:
 十日町市の文化会館と公民館の複合施設。街に回遊性を生み、賑わいをつなげる施設としている。
 計画地の特徴は、中心市街地の幹線道路である東側の本町通り(国道117号)や南側の市役所通りは、敷地に面する間口が狭く双方の大通りから奥に入り込んだ形状となっている。そのため、ふたつの大通りをつなぐ雁木ギャラリーを設けた。雁木ギャラリーは、100mを超える歩行空間とすると共に市民活動の発表の場としている。外観は、ホールの大屋根と開放的な雁木ギャラリーによるシンプルな構成としている。
 大屋根は、建物ボリュームを鋭く削ぎ落とし、時の移ろいと共に陰影によりカタチを変える。また雁木ギャラリーの天井は、新潟県産の杉を使用した木ルーバーで、降雪期でも市民を木の温もりを感じながらやさしく迎える構えとしている。そして、この天井ルーバーには、光の演出「光り織」が組み込まれ、夕刻になれば建物の表情は、十日町着物を纏うよう一変する。(鈴木 教久)
鈴木 教久(すずき・のりひさ)
1968年生まれ/1992年 名古屋工業大学社会開発工学科卒業後、梓設計入社/現在、参与、鈴木スタジオリーダー
加藤 洋平(かとう・ようへい)
1979年生まれ/2003年大同工業大学工学部建設工学科卒業/現在、梓設計主任
選考評:
 大地の芸術祭の里として知られる十日町市。その中心市街地の活性化と文化発信拠点となる、劇場ホールと公民館の複合施設である。人の集いと賑わいの回遊性を創り出す装置となることが求められた。
 来館者を迎える「雁木ギャラリー」の長く水平に伸びる軒線とルーバーが形づくるシンプルでシャープな外観が印象的である。審査にお伺いしたのは昼間だったので建築とアートの融合という「光り織」の効果が確認できなかったのは残念だった。
 地方のホールで課題となる利用率・稼働率向上のためのさまざまな工夫がなされている。そのひとつが、ホールエリアと公民館エリアの間に楽屋や音楽練習室等を配置し、どちらのエリアからもアクセスできるようにして一般市民も日常的に利用しやすくしたことだ。
 また、敷地の高低差をうまく活用した「だんだんテラス」も、奥の講堂との隔壁を開放可能とすることで多種多様な市民活動に活用できるよう配慮されている。
 決して恵まれたとはいえない敷地ではあるが、市民文化活動の促進剤となりうる「使い倒してもらえる」施設となっている。強いていえばアプローチに至る外部空間にもう少し魅力があればと思う。(宮原 浩輔)
宮原 浩輔(みやはら・こうすけ)
一般社団法人日本建築士事務所協会連合会理事、一般社団法人東京都建築士事務所協会常任理事
​1956年鹿児島県生まれ/1981年東京工業大学建築学科卒業後、株式会社山田守建築事務所入社/現在、同代表取締役社長