東京藝術大学 国際藝術リソースセンター
日建設計
第45回東京建築賞|一般一類部門最優秀賞
建築主:
国立大学法人東京藝術大学
設計:
株式会社日建設計一級建築士事務所
施工:
株式会社小松原工務店
所在地:
東京都台東区上野公園12-8
主要用途:
大学図書館
構造:
鉄筋コンクリート造
階数:
地上3階/地下1階
敷地面積:
33,860.71㎡
建築面積:
576.27㎡
延床面積:
2,962.85㎡
工事期間:
2016年5月〜2017年6月
撮影:
雁光舎(野田東徳)
設計趣旨:
「閲覧室」のない図書館
 東京藝術大学附属図書館増築棟の計画。20年先までの増加図書を見据えた書庫と学外向けのワークショップスペースの増築である。
 この大学図書館には芸術に特化した貴重かつ多様なフォーマットの蔵書が戦前より収集されており、多くの学生が書架の間で片っ端から気になる書籍をブラウジングする藝術大学らしい独特な風景がそこここに見出された。
 ここでは図書館全体を開架書庫とし、隙間にブラウジングスペースを分散配置することで、藝大ならではの生な対峙方法にチューニングするように計画した。高密度の書架の中心に、画集の閲覧に不可欠な自然光を取り入れた階段室を配置し、段差に座って画集をテイスティングできるスペースとして利用した。また1階ラウンジは学外から直接利用できるワークショップスペース、定期試験時には自習室となり、スタッキング式の什器はブックカート兼閲覧台にもなり図書館内のどこにでも持ち運べる仕様とした。(石原 嘉人、萩原 裕加)
石原 嘉人(いしはら・よしと)
1980年 京都府生まれ/2004年 京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科卒業/2006年 同大学大学院修士課程修了/2006年〜 日建設計/現在、同社設計部門アソシエイト
萩原 裕加(はぎわら・ゆうか)
1986年 神奈川県生まれ/2008年 東京藝術大学美術学部建築学科卒業/2012年 東京藝術大学大学院修士課程修了/2012年〜 日建設計/現在、同社設計部門設計担当
選考評:
 非常に少ない予算で成立させるために書架、階段、照明など、本プロジェクト構成上必ず必要になるものを徹底的に考え直し単純化することで勝負している。たとえば蔵書の大部分を開架式にした上で、書架のわずかな隙間にブラウジングスペースを設けたり、天空から光を取り入れた中央の吹き抜けのある階段室を閲覧スペースに活用したり等、利用の状況をつぶさに観察した上で、これまでの図書館のフォーマットを大胆に再編している。単純な箱型の外装はRC打ち放しだが、過剰な化粧補修となる昨今の同仕上げの傾向に抗うように、高圧木毛版を化粧型枠として転用しながら使うことで自然なテクスチャーを与え、内装も木毛セメント版打ち込みとすることで内外を首尾一貫させ、断熱の問題に解答しながら緊張感のあるソリッドな印象に導いている。梁柱の躯体寸法もパネルの目地も整理されて彫刻的に美しい。コストをいくら絞ってもいい建物はできるんだ、というメッセージは誤解を生むのでむやみに広げてほしくないが、設計者、関係者の低コストにめげない執念が、極めてミニマルで凛々しい作品を生み出した好例であり、最優秀に値すると評価された。(車戸 城二)
車戸 城二(くるまど・じょうじ)
建築家、(株)竹中工務店 常務執行役員
1956年生まれ/1979年 早稲田大学卒業/1981年 同大学院修了後、株式会社竹中工務店/1988年 カリフォルニア大学バークレー校建築学修士課程修了/1989年 コロンビア大学都市デザイン修士課程修了/2011年 株式会社竹中工務店設計部長/現在、同社常務執行役員