八ヶ岳山荘
彦根建築設計事務所
第45回東京建築賞|戸建住宅部門奨励賞
建築主:
鈴木良太
設計:
一級建築士事務所株式会社彦根建築設計事務所
施工:
株式会社新津組
所在地:
長野県南佐久郡南牧村
主要用途:
一戸建ての住宅
構造:
木造
階数:
地上2階
敷地面積:
1,256.08㎡
建築面積:
97.77㎡
延床面積:
135.47㎡
工事期間:
2016年4月〜12月
撮影:
Nacasa&Partners 守屋 欣史
設計趣旨:
木々に囲まれた北側からのアプローチを降りていくと、その中に静かに建物が現れる。八ヶ岳の麓にある敷地は東には隣家が見えるが、西は開け、南には見渡す限りのシラカバとカラマツの森。その森との共生を目指し、既存の樹木を可能な限り残しながらの配置と工事を計画した。土地の傾斜を感じられるよう東西約4.5m×南北約20mの細長い矩形の建物を斜面に沿わせるよう配置している。SE構法を採用した木造の建物は、南に下るほど天井の高さを増す空間で敷地の斜面を再現し、いろいろなレベルでくつろげる、またはアートを展示する場所を設けている。下のダイニングキッチンまでの床は地面のように堅実な木材で仕上げた。上階の空を感じる空間になってるリビングまでは空気の上を歩くようにガラス階段でつながる。ダイニングキッチン西側のデッキテラスは外ステージになる。寝室やバスルームからも西側のオープンスペースに行き来して森林浴を楽しめる。さまざまなレベルから自然を満喫できるのが、この八ヶ岳山荘である。(彦根 アンドレア)
彦根 アンドレア(Andrea Held)
ドイツ・コンスタンツ生まれ/1987年 シュトゥットガルト工科大学首席修了(建築・都市計画)/1988年 團・青島建築設計事務所入所/1989年 磯崎新アトリエ入所/1990年 株式会社彦根建築設計事務所設立(彦根明と共に)/2011年 日本エネルギーパス協会副会長/2012年 JIA(日本建築家協会)特別委員会環境行動ラボ会員/2014年 EneArt 設立、武蔵野美術大学非常勤講師
ドイツ・コンスタンツ生まれ/1987年 シュトゥットガルト工科大学首席修了(建築・都市計画)/1988年 團・青島建築設計事務所入所/1989年 磯崎新アトリエ入所/1990年 株式会社彦根建築設計事務所設立(彦根明と共に)/2011年 日本エネルギーパス協会副会長/2012年 JIA(日本建築家協会)特別委員会環境行動ラボ会員/2014年 EneArt 設立、武蔵野美術大学非常勤講師
選考評:
長野県八ヶ岳の緑豊かな別荘地にあって、南側に大きく傾斜した敷地に建つ山荘である。計画は、敷地の形状に対して素直にまとめられており、北側の接道面から、地盤の傾斜に沿って、1階の床が階段のように南に向かって下がっていく。既存の樹木を極力伐採せぬよう注意深く配置された建物からは、レベルの異なるさまざまな場所で外の景色を楽しむことができる。
幅5m弱の細長い建物は、北面のアプローチでは控えめな1層分のスケールでありながら、内部空間は徐々に高さ方向に拡がりを持ち、SE工法によるシンプルで規則正しい軸組によって強調されるパースペクティブの中、正面の開口の向こうに見える豊かな緑に導かれるように、充分な高さを持った2層の空間へと続く。
そのまま地面へと続くような堅実な木材で仕上げられた下階のダイニング・キッチンと対照的に、透明なガラスの階段で向かう1階はオープンなリビングスペースとなっており、眼前いっぱいに緑を望むデッキのような気持ちのよい空間であった。
動線空間が主役となる空間構成は、自然素材中心の仕上げの中に効果的に用いられた色彩計画と相まってこの建物の非日常性の演出にひと役買っていると共に、非常に魅力的なスペースを生み出していると感じた。(宮崎 浩)
宮崎 浩(みやざき・ひろし)
1952年 福岡県生まれ/1975年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1977年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了/1977〜89年 株式会社槇総合計画事務所/1989年 株式会社プランツアソシエイツ設立/1990〜2010年 早稲田大学非常勤講師/2011〜13年 同大学大学院客員教授
1952年 福岡県生まれ/1975年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1977年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了/1977〜89年 株式会社槇総合計画事務所/1989年 株式会社プランツアソシエイツ設立/1990〜2010年 早稲田大学非常勤講師/2011〜13年 同大学大学院客員教授