東小金井の家
MDS
第45回東京建築賞|戸建住宅部門優秀賞
建築主:
非公開
設計:
株式会社MDS一級建築士事務所
施工:
渡邊技建株式会社
所在地:
東京都小金井市
主要用途:
一戸建ての住宅
構造:
木造
階数:
地上2階
敷地面積:
107.87㎡
建築面積:
49.28㎡
延床面積:
85.77㎡
工事期間:
2015年6月〜2016年1月
撮影:
*西川公朗、**MDS
設計趣旨:
風景を切り取る小さな板の集積
 家の中に周りの風景をそのまま取り込むのではなく、場に合わせて風景を切り取り、そのひとつひとつを改めて頭の中で組み合わせることで風景を感じられるようにした。そして、その風景を切り取る小さな板を内部空間にまで波及させ、街と緩やかに連続したさまざまな場をつくり出している。明暗や天井の高さ、部屋の大きさの異なる場の繋がりは多様である。子供部屋、寝室といった行為別にこだわらないという建主の柔軟な考え方があったからこそ、夏は涼しいところ、冬は暖かいところと最も居心地の良いところを探すネコのように、その時々で過ごす場を移りかえていく多様な使い方のできる住宅になっている。(森 清敏、川村 奈津子)
森 清敏(もり・きよとし)
1968年 静岡県生まれ/1994年 東京理科大学大学院修士課程修了/1994~2003年 大成建設設計部/2003年 MDS共同主宰/東京建築賞、東京建築士会住宅建築賞、日本建築士会連合会賞ほか受賞/日本大学非常勤講師、東京理科大学非常勤講師/著書に『暮らしの空間デザイン手帖』(2015年、エクスナレッジ刊)
川村 奈津子(かわむら・なつこ)
1970年 神奈川県生まれ/1994年 京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科卒業/1994~2002年 大成建設設計部/2002年 MDS設立/東京建築賞、東京建築士会住宅建築賞、日本建築士会連合会賞ほか受賞/東洋大学非常勤講師/著書に『暮らしの空間デザイン手帖』(2015年、エクスナレッジ刊)
選考評:
 東京郊外の住宅地のエッジ、かつては梅林だった畑地に面したのどかな雰囲気を持った敷地に建つ住宅である。応募書類で見た時には、白い壁面に印象的にくり抜かれた大小さまざまな開口部が生み出している外観と、著しく変形された複雑な平面図がひとつの像を結ばなかった。だが、実際に訪れ内部へと踏み込んだ瞬間、それらは熟練したプランニングと経験により獲得された寸法感覚とで、見事に練り上げられた魅力的な住空間として破たんなく統合されていることが分かる。むしろ平面図が示す複雑さは、居心地のよい空間を企図した結果であることが理解できた。
 木造の特性を生かして、多層の場がポーラスにつながった立体的な空間が生み出されているのだが、それが屈曲した空間として展開されていることで、ひとつながりの空間でありながらその中に見え隠れするアルコ―ブ状の居心地よい空間が随所に生み出されている。
 コンセプチュアルな空間構成でありながら、住まいとしての心地よさがもたらされている点に好感が持てる。設計者やオーナーが言うように、その時々で「最も居心地のよいところを探す猫のように、場を移り替えて」住んでみたいと思わせる作品であった。(山梨 知彦)
山梨 知彦(やまなし・ともひこ)
建築家、株式会社日建設計常務執行役員 設計部門プリンシパル
1960年 神奈川県生まれ/東京藝術大学美術学部建築学科卒業/東京大学大学院都市工学専攻修了/1986年 日建設計