片持ちスラブの家
アトリエソルト
第44回東京建築賞戸建住宅部門奨励賞
建築主:
藏本 貴充
設計:
一級建築士事務所アトリエソルト株式会社
施工:
株式会社栄伸建設
所在地:
東京都世田谷区
主要用途:
一戸建ての住宅
構造:
RC造
階数:
地下1階、地上2階
敷地面積:
110.14m2
建築面積:
55.03m2
延床面積:
129.25m2
工事期間:
2015年8月〜2016年3月
撮影:
今村 壽博
設計趣旨:
 都心の低層住居専用地域に位置する建坪17坪の鉄筋コンクリート造(外断熱工法)の住宅である。
 北側に賃貸アパート、南側と東側に戸建て住宅、道路向いの西側に分譲マンション2棟に囲まれる環境の中で、明るく開放的住宅が求められていた。そこでプライバシーを守りつつ大開口を設けるために、屋根と2階床を片持ちスラブにする断面的解決を試みた。スリット状の吹き抜けにより2階だけでなく1階にも陽射しが差し込む空間となった。道路側は大開口と広い中庭を配置することで水平方向の広がりも確保されている。化粧壁も設置することで周辺の視線を遮りながら借景を楽しめる仕掛けとなっている。内部はスリット状の吹き抜けを介したワンルーム的空間に光や風が行き渡り、コミュニケーションを促す空間となった。(近藤 正隆)
近藤 正隆(こんどう・まさたか)
1974年 東京都新宿区新宿生まれ/関東学院大学工学部建築学科卒業、アライアーキテクツ入社/2006年 アトリエソルト株式会社を東京都渋谷区に設立/2009年 事務所を東京都新宿区に移転
選考評:
 都心にありながら閑静な住宅地に立つ戸建住宅である。正面のファサードはコンクリートの壁に開口をあけたシンプルなデザインで、その後ろに中庭空間を内蔵しているため、通りからの視線は遮られている。敷地が道路から1層分高いため、通りに面した駐車場は地下扱いとなり、住居は地上2階建てとなる。
 内部は2層吹き抜けのワンルーム的な空間で、この吹き抜けを中心に家族の生活が展開される。1階はリニアに展開する機能空間の先に中庭があり、中庭の先に設けた壁の開口は、あたかも劇場のプロセニアムアーチのごとくその先の風景を切り取っている。2階は吹き抜けに面してカウンターが設置され、子供たちの勉強スペースや夫婦の作業スペースとして活用されている。ただ大胆な階段にはやや不安を感じる。
 内部は打ち放し仕上げであるが、外断熱のため冷たさは感じられない。また形態制限を巧みにクリアしたハイサイドライトからは、隣家の視線を遮りながら豊かな光を取り入れている。このあたりは住み手の強いこだわりも反映されており、住み手と設計者のコラボレーションにより気持ちのよい空間が演出されている。(永池 雅人)
永池 雅人(ながいけ・まさと)
東京都建築士事務所協会副会長
1957年 長野県生まれ/1981年早稲田大学理工学部建築学科卒業後、梓設計入社、現在常務執行役員/品川支部