新潟市秋葉区総合体育館
久米設計
第43回東京建築賞一般二類部門奨励賞
建築主:
新潟市
設計:
株式会社久米設計一級建築士事務所
施工:
本間・水倉・近藤JV(Ⅰ期)、田中組(Ⅱ期)
所在地:
新潟県新潟市秋葉区
主要用途:
体育館
構造:
鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造
階数:
地上2階
敷地面積:
16,556.02m2
建築面積:
5,057.72m2
延床面積:
5,979.69m2
工事期間:
2011年9月〜2014年10月(Ⅰ期・Ⅱ期)
撮影:
沖 裕之/Blue Hours
設計趣旨:
 ライフスタイルの変化や健康志向の高まりなどを背景とし、誰もが日常的にスポーツを楽しみ、交流することを目的としたスポーツ施設である。
 折れながら全体を覆う大屋根の下に、公園のようにオープンな空間としてスポーツ施設群をちりばめることで、スポーツの楽しみが波及し、誰にでもわかりやすく、回遊性の高い空間を創出した。
 施設外周を巡るランニングコースは、変化する景色を楽しみながら走る(または歩く)ことができ、島のように点在するストレッチゾーンやさまざまな施設群の上部を巡る中で、まだ挑戦したことのないスポーツの楽しみを見つけられる仕掛けとなっている。これらや3分割利用を前提としたアリーナと器具庫の関係、利便性の高い観覧席なども含め、利用率を高める工夫を行うことで、ハイレベルな競技者だけでなく、健康増進など日常的で気軽な利用を促進し、スポーツを通じた交流の場となる空間づくりを行った。
 また、光に対して配慮が必要なスポーツ施設であることから、3m以上張り出した大庇や、光の拡散性と断熱性が高いポリカーボネイトパネルを併用することで「眩しくない自然採光」を実現させている。
冬場雪に覆われる新潟において、スポーツの楽しさ、躍動感が施設全体に広がり、一年を通してのスポーツコミュニティの拠点となっている。
(伊藤 彰彦、町 慎一郎、戸内 広太郎)
伊藤 彰彦(いとう・あきひこ)
1966年 埼玉県生まれ/1990年 千葉大学工学部建築工学科卒業後、株式会社久米設計入社/現在、同社建築設計部統括部長
町 慎一郎(まち・しんいちろう)
1970年 富山県生まれ/1992年 新潟大学工学部建築学科卒業後、久米設計入社/現在、同社建築設計部主管
戸内 広太郎(とのうち・こうたろう)
1978年 山形県生まれ/2003年 日本大学大学院理工学研究科建築学専攻修了後、2003年久米設計入社/現在、同社建築設計部上席主査
選考評:
 新潟市秋葉区役所、新津武道場が併設される大きな長方形の公共施設街区の北西のコーナーを要として扇型に配置されている。本来ならこの扇型を覆う自律的な構造が選ばれるところ、建物の平面形にこだわらず、街区の短辺に平行な一方向の架構で構成されることで、この街区全体に秩序を与えるように、武道場と区役所とを一連の公共機能として関連付けている。このことによって同時に、建物内において、体育館以外の事務所、更衣室やスタジオといった散らばった諸機能も違和感なく屋根の下に収めている。
 一方向に繰り返される構造は、体育館部分で大きく斜めの稜線を描きながら跳ね上がり、その方向性を強調しているために、屋根架構のコーナーの方杖も、補強というより造形的な表現に到達し、造形的に極めて巧みな印象を受ける。
こうした場合、体育館の小口にできる巨大なファサードの納め方がポイントになるが、ポリカーボネートの透過性ある材料で、コストの問題を回避しながらコンセプトを貫いて、妥協がない。
 ふわりと浮いた屋根の下に、さまざまな機能を巡りながら走るランニングトラックは、雪国の冬に、施設内の風景の変化を最大に楽しむことができ、思い付きではない説得力と共に、設計者の総合的に高い技量が評価された。
(車戸 城二)
車戸 城二(くるまど・じょうじ)
建築家、(株)竹中工務店 常務執行役員
1956年生まれ/1979年 早稲田大学卒業/1981年 同大学院修了後、株式会社竹中工務店/1988年 カリフォルニア大学バークレー校建築学修士課程修了/1989年 コロンビア大学都市デザイン修士課程修了/2011年 株式会社竹中工務店設計部長/現在、同社常務執行役員