上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館(サントミューゼ)
柳澤孝彦+TAK建築研究所・梓設計共同企業体
第43回東京建築賞一般二類部門奨励賞
建築主:
上田市
設計:
株式会社柳澤孝彦タック建築研究所一級建築士事務所
株式会社梓設計一級建築士事務所
施工:
鹿島・宮下特定建設工事共同企業体
所在地:
長野県上田市
主要用途:
劇場、美術館
構造:
鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造
階数:
地下1階、地上5階
敷地面積:
45,468.18m2
建築面積:
12,283.20m2
延床面積:
17,635.19m2
工事期間:
2012年6月〜2014年5月
撮影:
*テクニカルアート、**スタジオムライ
設計趣旨:
 1000年の歴史と文化を育んできた東信濃上田市を流れる千曲川のほとりに建設された劇場と美術館合築の文化施設です。大きな敷地の中を伸びやかに円周300mの大回廊が大地を巡り芝生広場と建築物の間を貫き、すべての施設の入口に直結する配置構成が地域性を際立てた特長のある新しい環境デザインです。大半の施設を1階に集約配置したこの低層建築は人に優しい水平動線を基本としたバリアフリーに徹し、随所で大地の自然と接する安全で心地良い施設環境として、利用者の寄り付き易さ見透しの良い開放性と共に、施設利用への親近性を高めています。
(柳澤 孝彦、永池 雅人)
柳澤 孝彦(やなぎさわ・たかひこ)
1935年 長野県松本市生まれ/1958年 東京藝術大学美術学部建築科卒業後、(株)竹中工務店・設計部入所/1985年(株)竹中工務店プリンシパル・アーキテクト/1986年(株)TAK建築・都市計画研究所を設立/1996年(株)柳澤孝彦+TAK建築研究所に改組、現在代表取締役
永池 雅人(ながいけ・まさと)
1957年 長野県生まれ/1981年早稲田大学理工学部建築学科卒業後、梓設計入社、現在常務執行役員
選考評:
 歴史のある文化に育まれた上田市の千曲川のほとりに奇跡的に残されたと同時に恵まれた敷地に、この建物は建っている。劇場と美術館の複合文化施設である。
 河川敷に隣接する大きな敷地に大回廊をめぐらし、内側に芝生の広場を置き、大回廊に沿って千曲川沿いの西側に美術館を配し東側に劇場群を配している。そして、その回廊東側の外側には大中劇場を内側には小規模のスタジオを数多く配置し多目的に利用でき親しみやすく計画されている。
 建築的には大ホールの天井が改正法の特定天井基準で設計された最初のホールである。その天井は安全性確認のため大規模な加振試験を実施して落下などの不具合がないことが確認されている。また、劇場ホールの音響効果は素晴らしく、実際に演奏した各国の著名な演奏家から絶賛を得ており専門家の間で高く評価されているとのことである。
 また、上田市の地域特性を生かしたさまざまな省エネなどの環境負荷低減対策を講じた手法を採用し、劇場は内断熱で美術館はハーフPC型外断熱工法を採用するなど、現実に即した設計手法でまとめている秀作である。
選考委員|西倉 努
西倉 努(にしくら・つとむ)
一般社団法人東京都建築士事務所協会会長代行(副会長)
1948年生まれ/1970年日本大学工学部建築学科卒業/現在、株式会社ユニバァサル設計事務所 代表取締役会長