つくばみらい市立陽光台小学校
梓設計
第43回東京建築賞一般二類部門優秀賞
建築主:
つくばみらい市
設計:
株式会社梓設計一級建築士事務所
施工:
西松・谷原特定建設工業共同企業体
所在地:
茨城県つくばみらい市
主要用途:
小学校
構造:
校舎:木造、一部鉄筋コンクリート造 屋内運動場:鉄筋コンクリート造、一部木造・鉄骨造 プール:鉄筋コンクリート造、一部木造・鉄骨造
階数:
地上2階
敷地面積:
25,000.97m2
建築面積:
6,784.34m2
延床面積:
10,875.13m2
工事期間:
2013年9月〜2015年5月
撮影:
*近代建築社、**新建築社写真部
設計趣旨:
 「日本一の学校を!」と大きな期待を寄せられた本計画は、既成概念にとらわれず、これからの子どもたちの学び場として、最適な空間は何か? という模索からスタートした。
 近年、多くの学校で多目的スペースを設ける事例が見られる。「オープンスクール形式」、「間仕切(クローズ)形式」に大別できるが、そのどちらも一長一短。
それぞれのメリットを抽出した、「半分」くらいの関係性を持った空間形式はないだろうか? この課題設定が本計画の要であり、その解法は「ハーフオープンスクール」と名付けた。
 中廊下で対面する教室同士の壁を、合わせて1枚の壁になるよう「半分」にカット。これにより音や目線をクローズし、光・風・アクティビティはオープンに。斜壁は、集中力向上のため黒板側に壁量が大きくなるように配置。
 半分の関係性で組み立てた空間は、教室相互の関係性が生み出す子どもたちが活き活きする空間・環境であり、まったく新しい学校建築となった。
(永廣 正邦、山田 修爾、虎本 和也)
永廣 正邦(ながひろ・まさくに)
1960年生まれ/1984年 法政大学工学部建築学科卒業/1989年 株式会社梓設計入社/2017年 同社常務執行役員永廣スタジオリーダー
山田 修爾(やまだ・しゅうじ)
1983年生まれ/2008年 日本大学大学院理工学研究科博士前期課程卒業/2008年 株式会社梓設計入社/2017年 同社田村スタジオ主任
虎本 和也(とらもと・かずや)
1986年生まれ/2010年 工学院大学工学部建築都市デザイン学科卒業/2011年 株式会社梓設計入社/2017年 同社永廣スタジオ
選考評:
 三角形の壁をモチーフに、ソフトに開かれたオープンスクール形式の小学校の計画である。
 写真では、内観/外観共に三角形のブレース状の木パネルが生み出す「パターン」が前面に立ち現れているが、実際に訪れてみると、この三角形の壁の実態としての存在感は薄れ、逆にそれにより切り取られ緩やかにつながったハーフオープンスクールの心地よい内部空間が目の前に広がっている。オープンスクールというと、とかく建築家の理念が先走り、教育の場が付いていけずに、残念な結果になっているケースも多い。しかしここ陽光台小学校では、三角形の壁が生む出すハーフオープンの空間が、教室相互間や廊下的空間との間にインターアクションを生み、新しい教育の場として説得力のある空間をつくり出している。さらに先生方の積極的な運営姿勢がそこに重なり、模範的なオープンスクール環境が生まれている。またそうした建築を生み出すための熱意が、現地審査に参加した若い担当者の語り口や態度の隅々からも感じられる好感度の高い計画であった。
 惜しむらくは、小学校を構成する校舎や体育館や校庭などの相互のインタラクションが薄く、エレメントごとに閉鎖的で、セミオープンのコンセプトが生かし切れていなかったことだろうか。
選考委員|山梨 知彦
山梨 知彦(やまなし・ともひこ)
建築家、株式会社日建設計常務執行役員 設計部門副統括
1960年 神奈川県生まれ/東京藝術大学美術学部建築学科卒業/東京大学大学院都市工学専攻修了/1986年 日建設計