VOLUTES MON-NAKA
ビーフンデザイン
第43回東京建築賞共同住宅部門奨励賞
建築主:
エヌエイビル株式会社 代表取締役 青山 順吉
設計:
ビーフンデザイン一級建築士事務所
施工:
堀松建設工業株式会社
所在地:
東京都江東区
主要用途:
長屋
構造:
鉄筋コンクリート造
階数:
地上4階
敷地面積:
179.74m2
建築面積:
114.90m2
延床面積:
411.77m2
工事期間:
2013年7月〜2014年6月
撮影:
平井 広行
設計趣旨:
 富岡八幡宮などの門前町として発展した背景をもち参詣者などをもてなす商業が栄え、当時の歴史のある背景を背負い、賑やかな商店が建ち並んでいる駅前大通り。通りから一歩入れば小さな住宅が密集しているが、駅近であることから将来商店街エリアの拡大が想定される。今回の計画地は防火地域であり地上4階建て、高さ10mの鉄筋コンクリート構造の耐火建築物を計画。地盤が悪い地域なので建物自体を軽量化し杭を有効活用。将来、地域の店舗エリア拡大に伴う用途変更ができる建築を目指し、床・壁・天井を可能な限り吹き抜けとし計画した。現在は用途を集合住宅として運営しているが、躯体(スケルトン)が建築として完成である。数年後、数十年後の街の変化に対応して再び完成時の躯体に戻り、共同住宅から物販・飲食・事務所へと用途変更(コンバージョン)していくことが、門前町として栄えた商店文化を尊重し、時代と共にあるべき形へと変化し建築を継承することになる。
(進藤 強)
進藤 強(しんどう・つよし)
1973年 兵庫県生まれ/1996年 京都精華大学美術学部デザイン学科建築専攻卒業/1998年 株式会社アーキテクトン 米田明に師事/2001年 ビーフンデザイン共同設立/2012年 株式会社ビーフンデザイン
選考評:
 江東区門前仲町の駅から至近距離の一画を一歩入った戸建住宅の密集地に計画された長屋形式の集合住宅である。
 エントランス空間の中庭を囲んでコ字に住居を配し、コンクリート打ち放しの壁構造(4層)の建築である。特徴的なのは地盤が悪いためにシンプルな壁と床の中でさまざまなボイドを設けて、吹き抜け階段等を計画し、結果建築全体の軽量化を計画していることである。このシンプルな構造躯体を骨格として将来の用途の変更、コンバージョンに対応することを計画の主眼としている。現在は住宅街の一角にあるが、駅からの至近距離である立地から将来商業地区に変化していくであろうと予測して、事務所や飲食施設への用途変更に充分対応できることを前提として計画された。
 現状の住戸はメゾネット形式が主体となっていて、現在の都市に住む比較的若い世代が今までにないさまざまな生活様式を送り、さまざまな嗜好を持っていることに充分対応している。各戸に設けられた吹き抜け階段に将来床を敷設することによって広い空間を確保できるように、戸境の間仕切り壁を含めてすべて乾式で構成されている。その結果生まれるであろうスペースがさまざまな用途に対応することを想定して容積率に余裕を持たせる計画になっている。
 将来この建築がどのように変貌するか興味をもたせる。共同住宅に対しての新たな挑戦が感じられる。
選考委員|岡本 賢
岡本 賢(おかもと・まさる)
建築家、一般社団法人日本建築美術協会会長
1939年東京都生まれ/1964年 名古屋工業大学建築学科卒業後、株式会社久米建築事務所(現・株式会社久米設計)/1999年 同代表取締役社長/2006年 社団法人東京都建築士事務所協会副会長/2014年 一般社団法人日本建築美術協会会長