G.Itoya(銀座・伊東屋)
大成建設
第43回東京建築賞東京都知事賞
建築主:
株式会社伊東屋
設計:
大成建設株式会社一級建築士事務所
施工:
大成建設株式会社東京支店
所在地:
東京都中央区
主要用途:
物販店舗、事務所、飲食店
構造:
地上:鉄骨造、一部柱CFT、地下:鉄筋コンクリート造
階数:
地下2階、地上13階、塔屋2階
敷地面積:
378.48m2
建築面積:
344.22m2
延床面積:
4,195.46m2
工事期間:
2013年9月〜2015年5月
撮影:
新建築社写真部
設計趣旨:
「ファサード」から「ガレリア(みち)」へ
 約半世紀の時を経て銀座の中央通りに面し、「ステンレスビル」と呼ばれ親しまれてきた銀座・伊東屋の建て替えである。
 旧銀座・伊東屋ビルのステンレスのファサードを敷地の中に折り込んで、ビルの内側を通じて背面の通りに貫通させることで、ビルの内部に伊東屋の世界を建ち上げ、まちに開かれたインターフェイスとして再構築している。そうすることで8mという狭い敷地の間口が新しい価値に転じ、表も裏もなく、誰もが入りたくなる心地よい「ガレリア(みち)」が積み重なる建物になると考えた。
 文房具を売るだけの店舗から、予期せぬ特別な体験・発見ができる場へ。鮮やかで高密度なビルが林立する銀座の街に、「ガレリア(みち)」が入り込み、人びとが特別な時間を過ごせる空間となった。
(中藤泰昭、面髙宏樹)
中藤泰昭(なかふじ・やすあき)
1970年東京都生まれ/1995年早稲田大学大学院修士課程修了後,大成建設入社/現在,同社設計本部建築設計第一部 設計室長
面髙宏樹(おもだか・ひろき)
1981年鹿児島県生まれ/2007年東京理科大学大学院修士課程修了後、大成建設入社/現在、同社設計本部建築設計第一部 プロジェクトアーキテクト
選考評:
 銀座中央通りとあずま通りに挟まれた老舗文房具店の建て替え。単なる文房具店の枠を超え、フロアごとにテーマを設定して豊かな生活文化体験を提供する新しい店舗として生まれ変わった。間口8mという狭小敷地だが、両サイドの565mmの壁に構造・設備要素を凝縮し、開放的で明るい空間が創り出されている。
 中央通側大型回転壁とあづま通側大型開き戸をオープンすれば、1階店舗はふたつの通りを繋ぐ「ガレリア」となる。従来の伊東屋のウリだった文房具・画材スペースはあずま通り向かいの別店舗に移されており、新たな人の流れをつくり出すことで銀座のまちなみ活性化に寄与することだろう。
 ファサードは、大らかに2階層を繋ぐスリムな構造ブレースが目を引くものの、全体に抑え目でシンプルなデザインのカーテンウォールである。奇抜なファサードデザイン競争の様相を呈している最近の銀座においては、その割り切り方はかえって好ましい。あずま通り側のエレベーションもなおざりにせずきちんとデザインされている。
 細部まで気配りされた建築単体の品質も高いが、日本一地価の高い商業の中心地において、表と裏通りを繋ぐ新たな交流空間を提供してまちづくりに貢献した功績は大きい。東京都知事賞に相応しい作品である。
選考委員|宮原 浩輔
宮原 浩輔(みやはら・こうすけ)
一般社団法人日本建築士事務所協会連合会理事、一般社団法人東京都建築士事務所協会理事
​1956年鹿児島県生まれ/1981年東京工業大学建築学科卒業後、株式会社山田守建築事務所入社/現在、同代表取締役社長