農大アカデミアセンター
久米設計
第42回東京建築賞一般二類部門奨励賞
建築主:
学校法人東京農業大学
設計:
株式会社久米設計
施工:
清水建設株式会社
所在地:
東京都世田谷区
主要用途:
大学
構造:
地上:鉄骨造(一部CFT)、地下:鉄骨鉄筋コンクリート造
階数:
地上9階/地下2階/塔屋1階
敷地面積:
125,612.35m2
建築面積:
2,145.68m2
延床面積:
18,127.26m2
工事期間:
2011年8月〜2013年11月
撮影:
新建築社写真部
設計趣旨:
キャンパスの老朽化や狭隘化に伴う再整備プロジェクトとして、隣接する新1号館(講義棟)とともに計画された新本部棟。収納可能冊数約100万冊、座席数約1,000席の規模を有する図書館機能を中心に大学本部機能を含む本学の中心となる複合施設。求められたのは、本部棟に相応しい品格のある顔づくりと、農大らしさの表現であった。
建設場所はキャンパスの象徴的空間である樹高20m以上の保存樹などからなる「農大の森」に隣接しており、建物と森とが調和し一体となることを目指した。
オリジナルな土の素材感と手づくり感を徹底的に追求したタイル壁やテラコッタスクリーンなど、内外部において農学的な繋がりを意識し、土と木の素材感を追求することで農大のアイデンティティの具現化を図った。同時に今後も続く再整備事業を念頭にこの土の素材感や陰影のでる庇をキャンパス共通デザインコードとして新たに設定し、まとまりと農大らしさをうむ新しいキャンパス景観創出の骨格をつくった。
環境面においては、異なる諸室機能毎に適材適所を徹底した設備システムを採用し、利用者の快適性向上と省エネルギーの追求を図った。
(山本 茂義、小塩 智也)
山本 茂義(やまもと・しげよし)
1958年 福岡県生まれ/1981年 早稲田大学理工学部建築学科卒業、同年久米設計入社/現在、同社取締役執行役員設計本部本部長
小塩 智也(こしお・ともや)
1969年 愛知県生まれ/1995年 明治大学大学院修士課程修了、同年久米設計入社/現在、同社建築設計部主管
第42回東京建築賞選考評:
大学の本部機能、図書館、外来者および学生向けのサービス機能などを持ち、大学キャンパスの顔として新築された施設である。
市街地の余裕のない立地に建てられる大学施設の多くが、この例のように多機能複合施設を積層した高層建築とならざるを得ない。そのため学生や外来者に対する開放性と、大学本部機能としてのセキュリティとの両立が、設計上の大きな課題であったことは想像に難くない。
その課題の解決策として、それぞれの目的に応じた2カ所のエントランスを設けて、双方にメインエントランスとしてのしつらえや動線の確保が図られている。また重要な構造要素である中央コア部分に大きな吹き抜けと壁面開口を設けて、重層でありながら同じ機能を持つ階相互のつながりを意識させることに成功している。
構造方式は整形な長方形プランに対して、ラーメン架構と中央コアとを組み合わせた構造としている。柱の数を少なくし、中央コアを構造部材で囲わない等の工夫で、室内が広く明るく心地よい空間となっている。またPCコンクリート製の庇、テラコッタのルーバー、中央吹き抜け部に設置された柱のない階段など、数々の構造的な難問を解決しながら破綻なくまとめられた設計に、設計チームのレベルの高さとチームワークの良さが感じられる力作である。よって奨励賞にふさわしい作品と評価された。
選考委員|金田 勝徳
金田 勝徳(かねだ・かつのり)
構造家、一般社団法人日本建築構造技術者協会副会長、構造計画プラス・ワン代表
1968年 日本大学理工学部建築学科卒業/1968〜86年 石本建築事務所/1986〜88年TIS&Partners取締役/1988年〜現在 構造計画プラス・ワン 代表取締役/2005〜10年 芝浦工業大学工学部建築学科 特任教授/2010〜14年 日本大学理工学部建築学科 特任教授