山の家
KINO architects
第42回東京建築賞戸建住宅部門奨励賞
建築主:
非公開
設計:
株式会社木下昌大建築設計事務所一級建築士事務所
施工:
網代工務店
所在地:
千葉県富津市
主要用途:
週末住宅(戸建住宅)
構造:
木造、一部鉄骨造
階数:
地上2階
敷地面積:
6,458.33m2
建築面積:
187.74m2
延床面積:
160.93m2
工事期間:
2013年7月〜2014年3月
撮影:
阿野 太一
設計趣旨:
 山中に建つ週末住宅。山々に囲まれ緑と空が連続する敷地は、はっきりとした輪郭を持たずどこまでも拡がっていた。内部空間の事だけ考えれば、どこにどんな形で計画しても、豊かな住空間が得られそうな非常に恵まれた環境だ。
 そんな環境下において今回計画するのは、週末住宅である。平日は、街中で生活している施主が、週末自然の中で生活を楽しむための家。自然の中で遊び、食事し、入浴し、眠りにつく。そんな生活をつくるためには、建物が自然と対峙するのではなく、ゆるやかにつながる必要がある。
 まず、周囲に拡がる自然に対して、採光を考慮し、南北の軸からずらすように十字の壁を想定し、4つの庭をつくった。
 それまで漠然と拡がっていた敷地に、十字の壁による4つの入隅がつくられ、自然と触れ合う庭ができた。さらに十字の壁を空間化し、それぞれ必要な部屋を納め、各々の庭を介して自然とつなげる。
 敷地の真ん中に配置された十字型の建物により、週末の自然とつながる生活の場をつくりだした。自然から固く身を守るシェルターでもなく、自然に投げ出されたテントでもない、自然と人との最適な関係をサポートする家をめざした。
(木下 昌大)
木下 昌大(きのした・まさひろ)
1978年 滋賀県生まれ/2003年 京都工芸繊維大学大学院修士課程修了/2003年 C+A/2005年 小泉アトリエ/2007年 KINO architects設立/2014年 京都工芸繊維大学助教
第42回東京建築賞選考評:
 千葉富津の山の中に建つ週末住宅です。平日の昼過ぎに、東京駅八重洲から高速バスに乗りアクアラインを渡ると、意外と早く小一時間で上総湊駅前のバス停に到着しました。そこから出迎えの設計者の車に乗り換え、20分ほどで現地に到着しました。千葉市内に住む施主には車で1時間内の場所です。
 敷地はもともと放置された森でしたが、建物の建設と並行して、敷地周辺の森の木の間引きや間伐などの手を加え、森の自然サイクルが機能するよう環境に配慮して造園されています。この週末住宅は自然と融合するように壁を十字に配置し、アプローチも含めて4つの庭を構成して周辺の自然とたくみに調和させています。構造は一般的な木造在来工法ですが、要所に鉄骨梁を使用して開放的な空間を成立させています。また、使用されている木製建具は施主の専門領域とのことで、洗練されたデザイン要素となっており、特に派手さはありませんがとても好感の持てる作品です。
選考委員|西倉 努
西倉 努(にしくら・つとむ)
一般社団法人東京都建築士事務所協会会長代行(副会長)
1948年生まれ/1970年日本大学工学部建築学科卒業/現在、株式会社ユニバァサル設計事務所 代表取締役会長