L×4
川島鈴鹿建築計画+川島 茂/鹿児島県立短期大学
第42回東京建築賞戸建住宅部門優秀賞
建築主:
御徒町天ぷら酒処「天正」
設計:
川島鈴鹿建築計画一級建築士事務所+
川島 茂/鹿児島県立短期大学
川島 茂/鹿児島県立短期大学
施工:
西村建設株式会社
所在地:
東京都台東区
主要用途:
店舗併用住宅
構造:
鉄骨造
階数:
地上3階
敷地面積:
59.63m2
建築面積:
46.21m2
延床面積:
128.21m2
工事期間:
2014年5月〜9月
撮影:
鳥村 鋼一、川島鈴鹿建築計画
設計趣旨:
下町商店街で天ぷら店を営む家族のための住居。計画地は街区を南北に貫通し、ふたつのファサードをもつ。商店街に面した1階店舗は、間口いっぱいの掃き出し窓で町並みに倣い、南面路地の住居アクセスは路地スケールを連続した屋外階段で路地裏近隣コミュニティをつなぐ。
1階店舗に先代からつづく店舗プランを写してストラクチャーを重ね、客席レイアウトを縫って露出した鋼製アングル材を4本束ねたブレース。これでメインフレームは小サイズとなり、狭小間口を最大限に室内として取り込み、上階住居を南北にブレースのないチューブ状の空間にできた。
2層に積んだチューブ状の住居の中ほどに階段を配置してうまれた4人の家族のためのルーズに連続した4つの場所。ここは曖昧に続くプライベートな場所で、かつ家族や親子のための家族室。
開店前の店舗で机を囲む家族4人の朝食。夕刻は娘に勉強を教えるおかあさんがいる。暖簾をおろし店舗でくつろぐ母と夫婦。下町のそこは、町に開いた5つめの家族の場所。
下町の商店街は、街全体が「職住一体」の住まいのよう。下町の地縁が継承される所以はこんなところにあり、建築がその「継承」を絶たぬよう「L×4」は下町の今をなぞった。
(川島 茂、鈴鹿 美穂)
川島 茂(かわしま・しげる)右
1965年 京都府生まれ/1992年 日本大学大学院修了/現在、鹿児島県立短期大学生活科学科教授
鈴鹿 美穂(すずか・みほ) 左
1966年 神奈川県生まれ/1989年 東京家政学院大学卒業/現在、川島鈴鹿建築計画主宰
1965年 京都府生まれ/1992年 日本大学大学院修了/現在、鹿児島県立短期大学生活科学科教授
鈴鹿 美穂(すずか・みほ) 左
1966年 神奈川県生まれ/1989年 東京家政学院大学卒業/現在、川島鈴鹿建築計画主宰
第42回東京建築賞選考評:
下町の商店街にて飲食店を営む一家の店舗とお住まいである。搬入可能な部材を考慮した綿密な計画の下、細長い敷地で気積を最大限に生かせる構造体が考察され、各々望ましいボリュームとして店舗と住宅部分に配分されている。鋼製アングル4本を組み合わせたブレースを導入することで、主構造部材が小さく抑えられ、各階での間口方向の開放性が確保され、2、3階には中央部に吹き抜け階段の配置を可能にして、緩やかに連続する空間が成立している。
現物をその場に置いて角度を決めたというブレースは、黒を基調とする落ち着いた雰囲気の店舗に軽快なリズムを与えつつ、客席同士のほどよい仕切りとしても機能する。建築設計はさまざまな要求に対しひとつひとつ向き合い、形として解答していくものであるが、この建物ではクライアントのニーズ、構造や工法、工事条件等、あらゆる側面で適切かつ全体としての整合性が高いレベルで確保されており、設計者の構想力の高さに感じ入った。
空間的にも心情的にも人と人との距離が近い下町で、職住を共にする住まい。ここでは生活の気配をまちに開く度合いが、時間帯や曜日、居合わせる人びとによって融通され、変化させながら、空間が使われてゆく。生き方、働き方がいっそう多様化するであろう未来の住まいのあり方を考える時、多くの示唆を与えてくれる作品であった。
選考委員|國分 昭子
國分 昭子(こくぶん・あきこ)
建築家、株式会社IKDS 共同代表
1988年東京大学工学部建築学科卒業後、槇総合計画事務所/1997年より株式会社IKDS/2013年東京大学工学系大学院都市工学専攻にて博士号取得
建築家、株式会社IKDS 共同代表
1988年東京大学工学部建築学科卒業後、槇総合計画事務所/1997年より株式会社IKDS/2013年東京大学工学系大学院都市工学専攻にて博士号取得