ROPPONGI TERRACE
設計|シーラカンスアンドアソシエイツ/CAt
第49回東京建築賞|一般部門一類 優秀賞
公園に面した東側外観。
  • 公園に面した東側外観。
  • 西側外観。
  • 2B室。南方向を見る。左が公園。
  • 1A室。東側のテラス。
  • 配置・1階平面図
  • 断面図
建築主:
シマダアセットパートナーズ株式会社
表彰建築士
事務所:
株式会社シーラカンスアンドアソシエイツ一級建築士事務所
施工:
中川企画建設株式会社
所在地:
東京都港区六本木7-17-36
主要用途:
事務所
構造:
RC造(壁式)
階数:
地上3階
敷地面積:
270.77㎡
建築面積:
162.27㎡
延床面積:
431.78㎡
竣工:
2020年8月
撮影:
中村 絵
設計趣旨:
 敷地は六本木の中心地、細長い路地の奥に建ち、東側は公園に面する。住空間に近い快適性をもつ12のテナントオフィスが求められた。公園側はビルが立ち並ぶ大きな風景、反対側は建物が隣接する下町のような小さな風景。都心に空いたvoid(公園)の開放感を取り入れながらふたつの風景を接続し、視線、風や光が通り抜けるテラスのような建築を目指した。
 敷地と公園の高低差により地上レベルは日照や風通しは期待できない。ふたつの風景を接続し空間が断面的広がりを持つよう、スラブを傾け積層させた。そこへ開放的な建具を組み合わせ、天井面を滑るように光や風が通り抜けていく。斜めスラブの構成は住宅側の建物高さを抑え公園側からの視線を遮る。室内は逆梁スキップフロアのワンルームで、水廻りやシャフトをコンパクトにまとめた。
 ワークスタイルとライフスタイルが曖昧に重なり合う新しい都市居住のあり方に応答し、自由なアクティビティが街の風景を彩ることを期待したい。
(赤松 佳珠子、大村 真也)
赤松 佳珠子(あかまつ・かずこ)
CAtパートナー、法政大学教授
1968年 東京都出身/1990年 日本女子大学家政学部住居学科卒業/1990年 シーラカンス(のちC+A, CAt)に加わる/2002年 CAtパートナー/2013年 法政大学デザイン工学部建築学科准教授/2016年 法政大学デザイン工学部建築学科教授/2023年 神戸芸術工科大学客員教授/現在、CAtパートナー、法政大学教授、神戸芸術工科大学客員教授(撮影:ToLoLo studio)
大村 真也(おおむら・しんや)
CAtパートナー
1981年 宮城県出身/2006年 法政大学大学院建設工学科修士課程修了/2007年 CAtに加わる/2019年 シニアアソシエイト、ディレクターを経てCAtパートナー(撮影:ToLoLo studio)
選考評:
 敷地は、六本木といいながらも、ギリギリまで小規模な建物が密集する下町のような地域にあり、計画地はさらにその中の旗竿状敷地の奥に位置する。幸いにも、1段高いレベルではあるが、東側に開かれた公園があり、設計者はこの敷地の持つかすかなポテンシャルを最大限に引き出し、住宅スケールの12室からなる快適なワンルームテナントオフィスを実現している。
 建物は、公園側に向かって逆梁のスラブを斜めに持ち上げた特徴的な断面計画からなり、公園からの視線を見事にコントロールしつつ、光や風を室内に取り入れている。一般的に、「開かれている」といいながらもカーテンやブラインドで閉じて使われることが多いが、この建物では、審査時も、ほとんどのオフィスが設計者がイメージしていたであろう公園に対する開放的な使い方をしていることが印象的であった。
 また、この建築で特筆すべきは、優れた空間構成だけでなく、裏方になりやすい共用部や外廊下に対しても建築的な可能性を探りながら高い品質の建物を実現している点であり、このような小規模な施設に対しても、真摯に向かい合う設計者のプロフェッショナリズムが随所に感じられることである。高く評価したい作品である。
(宮崎 浩)
宮崎 浩(みやざき・ひろし)
建築家、プランツアソシエイツ主宰
1952年 福岡県生まれ/1975年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1977年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了/1977〜89年 株式会社槇総合計画事務所/1989年 株式会社プランツアソシエイツ設立