ニセカイジュウタク
設計|横井創馬建築設計事務所、佐瀬和穂建築設計事務所、みゆき建築計画設計部
第49回東京建築賞|新人賞
1階南側の街路に面したパーゴラ。
  • 1階南側の街路に面したパーゴラ。
  • 街路側外観。
  • 1階玄関1を見上げる。
  • 1階キッチン・ダイニング西方向を見る。
  • 配置図
  • 1・2階平面図
  • 3・屋階平面図
  • 断面図
建築主:
株式会社三栄建築設計
表彰建築士
事務所:
株式会社横井創馬建築設計事務所一級建築士事務所
一級建築士事務所佐瀬和穂建築設計事務所
施工:
株式会社三栄建築設計
所在地:
東京都
主要用途:
一戸建ての住宅
構造:
木造
階数:
地上3階
敷地面積:
81.43㎡
建築面積:
48.29㎡
延床面積:
115.09㎡
竣工:
2021年3月
撮影:
高橋 菜生
設計趣旨:
 「ニセカイジュウタク」は現代の二世帯住宅の姿である。ライフスタイルや社会の変化など、移り変わる環境に柔軟に応答する住宅を目指し、住宅の中にふたつの可変的な世界(領域)をつくり出した本作品は、両親と夫婦、住宅と店舗、妻と夫、仕事と家など、さまざまなふたつの世界観をひとつの住宅の中に共生させている。
 ふたつの玄関から伸びる部屋の連続は、二重らせんのように登ってから降りてくる。途中どこかの扉を施錠するだけでふたつの世界が分節され、その組み合わせは実に100通りを超えている。部屋の連続は吹き抜けを介して行われるために、密実な部屋同士に不思議な距離感や、相手の世界をすり抜けるような瞬間を生み出した。
 建物の周囲には庇と土間の「パーゴラ」が廻っていて、外の世界との結節点となっている。そこには人やモノがあふれ出し、住宅街に住まい手の色を表出させるとともに、街との距離感を調整するアウトラインをつくり出した。
 ハウスメーカーである三栄建築設計と協働した本計画は、人口が減ってゆく社会の住宅ストックとして、模様替えを楽しむように変化を楽しめる住宅となればと考えた。
(横井 創馬)
横井 創馬(よこい・そうま)
横井創馬建築設計事務所
1983年 東京生まれ/2007年 日本大学理工学部建築学科修了/2007年〜 坂茂建築設計(ヨーロッパ)/2009年〜 SANAA/2011年〜 セカイ共同設立/2018年〜 横井創馬建築設計事務所設立
佐瀬 和穂(させ・かずほ)
佐瀬和穂建築設計事務所
1982年 東京生まれ/2008年 東海大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了(上松祐二研究室)/2008〜10年 北海道や東京の設計事務所に勤務/2011~22年 株式会社ティケイスクエア/2019年 佐瀬和穂建築設計事務所設立
大沢 美幸(おおさわ・みゆき)
みゆき建築計画設計部
1990年 長野県生まれ/2013年 日本大学理工学部建築学科卒業/2013〜16年 株式会社アーキプラン/2016〜22年 株式会社ティケイスクエア/2018年 個人活動開始(みゆき建築計画設計部)
選考評:
 「ニセカイジュウタク」この変わったネーミングは8つのスペースを二重螺旋的動線で立体的に編むことでその組み合わせが数式上では100通りにも上るとのことで、多様な組み合わせでふたつの領域(セカイ)をつくる可変性を表している。ハウスメーカーの企画コンペ案だったため、当初は特定のクライアントがいなかったそうで、多様な住まい方に対応する可変性の高いプロトタイプとして考案されている。家の中を巡ると、さまざまな場面が現れる街中を歩くような流動的な空間構成が魅力的だ。水回りをふたつの動線の接点として中央に配置して、さまざまな領域化において共有できるように配慮されている。空間構成の可変的利用を実践として捉え、個別解に留まることなくストックの一般解として提案されている優れた作品である。
 窓からは雑然とした隣家が見えるが、街中を歩くような体験と映り込む外部の風景の解像度が妙に一致して、内外で街が連続しているような不思議な空間体験だった。開口にスクリーンを下さない開放的な住まい方も、この家の魅力を最大化している。住まい手がこの家を住みこなすことで個別解としての魅力が生まれていることは、つくり手が残した余白がうまく機能しているといえるだろう。
(石井 秀樹)
石井 秀樹(いしい・ひでき)
建築家、石井秀樹建築設計事務所株式会社代表取締役
1971年 千葉県生まれ/1995年 東京理科大学理工学部建築学科 卒業/1997年 東京理科大学大学院理工学研究科建築学科修了/1997年 architect team archum 設立/2001年 石井秀樹建築設計事務所へ改組/2012年~一般社団法人 建築家住宅の会 理事