新宿住友ビルRE-INNOVATION PROJECT
設計|日建設計、大成建設
第49回東京建築賞|東京都建築士事務所協会会長賞、一般部門二類 最優秀賞
西側外観夕景。都庁通り越しに見る。
  • 西側外観夕景。都庁通り越しに見る。
  • 都庁に向き合う南面1階東側のエントランス。
  • 既存樹木を保存した三角広場西のエントランスと屋内空地。高層棟1階に飲食店舗。
  • イベント会場としても使われる屋内空地「三角広場」。災害時は帰宅困難者を受け入れる。**
  • 三角広場より高層棟を見上げる。
  • 三角広場東。*
  • 既存高層棟1階ロビー。赤御影石の壁をリ・デザイン。*
  • 断面図
  • 断面詳細図
  • 改修前1階平面図
  • 改修後1階平面図
建築主・基本構想・総合監修:
住友不動産株式会社
表彰建築士事務所
株式会社日建設計一級建築士事務所
大成建設株式会社一級建築士事務所
施工:
大成建設株式会社
所在地:
東京都新宿区西新宿2-6
主要用途:
事務所、集会場他
構造:
S造、一部SRC造・RC造
階数:
地上54階、地下4階
敷地面積:
14,446.46㎡
建築面積:
13,778.96㎡
延床面積:
180,195.16㎡
竣工:
2020年5月
撮影:
株式会社エスエス、*雁光舎 野田東徳、**日建設計提供
設計趣旨:
 1974年、日本で初めて200mを超えた「新宿住友ビル」は、当時の技術革新(イノベーション)により実現した。
 竣工から20数年が経過した1990年代中頃に、足元空地に賑わいや快適性を創出すべくアトリウムの設置を構想したが、当時は私有地の屋内空間の公共性を評価する価値観はなく、実現には至らなかった。
 その後も長い期間、実現に向けて検討を重ねる中で、都市における公共空間に求められる機能や役割が変化した。地域と連携した賑わいや、東日本大震災を経て、日常時のみならず非常時の防災拠点としても公共空間の価値が認識されるようになった。
 一方で、既存改修故に難題であった法規・技術上の課題を、再度の革新(リ・イノベーション)によって乗り越え、前例のない改修が実現した。今回の建て替えによらずに再生した超高層ビルの改修は、今後顕在化する大規模建築の機能更新、脱炭素という社会課題解決の可能性を広げることができたと確信している。
(芦田 智之、恩田 聡)
芦田 智之(あしだ・ともゆき)
日建設計
1964年 岡山県生まれ/1989年 大阪大学大学院工学研究科工学専攻修了後、日建設計入社/現在、同社執行役員設計監理部門プリンシパル/2008、18年 日本建築家協会優秀建築選/2010、12、19年 日本建築学会作品選集/2023年 日本建築学会作品選奨、2010、23年東京建築賞
恩田 聡(おんだ・さとし)
日建設計
1974年 東京都生まれ/1997年 工学大学工学部建築学科卒業後、横河設計工房入所/2006年 日建設計入社/現在、同社設計監理部門ダイレクターアーキテクト/2020年〜 工学院大学建築学科非常勤講師/2017、23年 日本建築学会作品選奨/2017、23年 東京建築賞
村上 博昭(むらかみ・ひろあき)
日建設計
1973年 愛媛県生まれ/1998年 東京工業大学大学院総合理工学研究科修士課程修了後、佐々木睦朗構造計画研究所入所/2007年 日建設計入社/現在、同社設計監理部門DEL室長/2013年 日本構造デザイン賞/2016年 JSCA賞作品賞/2023年 日本建築学会作品選奨/2023年 東京建築賞
宇田川 貴章(うだがわ・たかあき)
日建設計
1971年 東京都生まれ/1995年 武蔵工業大学(現東京都市大学)大学院工学研究科修士課程修了後、木村俊彦構造設計事務所入所/2007年 日建設計入社/現在、同社エンジニアリング部門構造設計グループダイレクター/2021年 日本免震構造協会作品賞・業績賞/2023年 日本建築学会作品選奨/2023年 東京建築賞
上甲 孝(じょうこう・たかし)
大成建設
1963年 東京都生まれ/1986年 東京理科大学工学部建築学科卒業後、大成建設株式会社入社/2015年 同社設計本部建築設計第二部長/現在、同社設計本部設計品質部長/2016年 日本建築学会作品選集/2023年 日本建築学会作品選奨/2023年 東京建築賞
管 貴彦(かん・たかひこ)
大成建設
1969年 青森県生まれ/1994年 工学院大学工学部建築学科卒業後、日本空港コンサルタンツを経て、2006年 大成建設入社/現在、同社設計本部建築設計第二部シニアアーキテクト/2023年 日本建築学会作品選奨/2023年 東京建築賞
島村 高平(しまむら・こうへい)
大成建設
1968年 東京都生まれ/1990年 日本大学理工学部建築学科卒業後、大成建設株式会社入社/2012年 同社構造設計第二部室長/現在、同社構造設計第二部長/2021年 BCS賞/2021年 日本構造デザイン賞/2023年 東京建築賞
選考評:
 竣工当時革新的であった高さ200mの超高層ビルは、20数年に及ぶ長い時間をかけ、法規・技術上の難題を乗り越えて改修がなされた。
 超高層足元の有効空地は、ガラス大屋根により、ビル風や天候に左右されず、賑わいがあり、快適な全天候型の「三角広場」に生まれ変わっている。この広場は、年間を通して多様なイベントを催し、街に賑わいを創出すだけでなく、有事には2,850人の帰宅困難者を受け入れ可能な「避難シェルター」として防災機能を併せもっている。多面体の大屋根は140m×90m×高さ25mの巨大無柱空間を生み、北側の浮揚感のあるロングテーパービームに代表されるように独特な表情を見せている。高層部分の外観は今までと変わりない姿を見せているが、三角形平面頂部の居住区間と切り離されたミニマムスペースを利用した画期的な制振システムによって居ながら制振改修を実現し、長周期地震動対策も含め、高い耐震性能を持たせて長く利用することを可能とした。この建物の価値を向上させ、建て替えによらない超高層ビル改修は、今後顕在化する大規模建築の機能更新という都市課題解決の可能性を広げたことを高く評価し、会長賞を授与するものである。
(奥野 親正)
奥野 親正(おくの・ちかまさ)
構造家、株式会社久米設計環境技術本部構造設計室室長
1968年 三重県生まれ/1991年 明治大学工学建築学科卒業/1993年 明治大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了/1993年 久米設計