玉川台のアパートメント
MMAAA
第48回東京建築賞|共同住宅部門奨励賞
東側のB棟。各住戸へは中庭側からアクセスする。
  • 東側のB棟。各住戸へは中庭側からアクセスする。
  • 西側のA棟。
  • 南側より中庭を見る。
  • B棟3階住戸内部。
  • B棟4階住戸内部。
  • 配置図
  • 1階平面図
  • 断面パース(左:B棟、右:A棟)
建築主:
トゥループロパティマネジメント株式会社
設計:
株式会社MMAAA一級建築士事務所
施工:
株式会社エスエーエス
所在地:
東京都世田谷区
主要用途:
共同住宅
構造:
鉄筋コンクリート造
階数:
地上4階
敷地面積:
359.12㎡
建築面積:
202.28㎡
延床面積:
537.97㎡
工事期間:
2018年5月〜2019年4月
撮影:
長谷川 健太
設計趣旨:
スケールの調整による住宅地の質の継承
 城西の閑静な住宅地にこの21戸のワンルームからなる賃貸集合住宅は計画されている。建物はふたつの分棟として、足元を半層だけ地中に埋めた4階建てとすることで、各棟1層あたり3住戸が並び、平面のサイズを周辺の一戸建ての住宅に近づける。日影規制と北側の高度斜線との兼ね合いで切り妻型の屋根形状とし、上階は段々にセットバックさせて立面を分節することで、ファサードに大きな面が現れることを避けた。
 建物の間は中庭となり各住戸は周囲の緑地と中庭に表裏で面する。この中庭は隣接する住宅の窓前の空地にもなり、地域的に敷地内外の空地を互いに享受し合う関係を本計画でも連続させる。
 このように集合住宅のスケールを調整し戸建て住宅に寄せることで、郊外の住宅地の建物と庭の作法によって形成される良質な住環境を損なうことなく、この地域が継承してきた空間の質を持続させようと意図している。
(本橋 良介、三木 達郎)
本橋 良介(もとはし・りょうすけ)
MMAAA
1981年 大阪生まれ/2003年 東京工業大学工学部建築学科卒業/2003年 パリ・ラヴィレット建築大学留学/2006年 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了/2009年 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻博士課程単位取得満期退学/2014〜17年 本橋良介アトリエ主宰/2017年 MMAAA設立/2022年〜 明治大学兼任講師
三木 達郎(みき・たつろう)
MMAAA
1979年 福岡生まれ/2003年 名古屋工業大学工学部社会開発工学科卒業/2004年 シュトゥットガルト応用科学大学留学/2007年 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了/2009年 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻博士課程退学/2009〜17年 日本設計勤務/2017年 MMAAA設立/2020年〜 東京工芸大学非常勤講師
選考評:
 単身者用の比較的小規模な賃貸共同住宅を建築家に設計依頼し、維持メンテナンスまで一貫してディベロッパーが運営するプロジェクトである。設計条件は、賃貸料に関わる容積を確保し、借り主の集まりやイベント等は不要とのことであった。
 戸建て住宅が残る家並みに合わせて全体のボリュームをふたつに分け、中庭から各戸へのアクセスをとり、外観を家型にすることで周辺環境にも光や風の道をつくっている。いずれも静かな住宅地に寄り添い、新住民の若者たちが地域にとけ込み易い構造となっており、好例と評価する。
 中庭の階段を含む共有空間は、長屋と共同住宅ふたつを混在しつつ法規的に成り立たせており、初めのイメージを形にするこだわりが行政との交渉へつながった結果である。また、この空間でそれとなく交わす住民間の視線は、いい意味で管理につながり、愛着と共有意識も育むであろう。さらに、緑化に力を入れて湿潤な環境となればなお良い。住戸のタイプは数種類であるが、天井高や方位、入口回り等の多様さが外観からは推測し難い魅力となっている。
 このような建築家の能力を引き出し生まれる新しい提案のシステムが継続されていくことを期待する。(平倉 直子)
平倉 直子(ひらくら・なおこ)
建築家、平倉直子建築設計事務所主宰
1950年 東京都生まれ/日本女子大学住居学科卒業/日本女子大学、関東学院大学、東京大学、早稲田大学等の非常勤講師を歴任