日本橋二丁目地区プロジェクト
設計|日本設計
   プランテック
第47回東京建築賞|一般二類部門奨励賞
西側中央通り越しの外観。右の日本橋髙島屋S.C.本館(B街区)と左の新館(C街区)の間が「日本橋ガレリア」。
  • 西側中央通り越しの外観。右の日本橋髙島屋S.C.本館(B街区)と左の新館(C街区)の間が「日本橋ガレリア」。
  • 南西コーナーより見る。手前がB街区。
  • 南西より俯瞰する。
  • 歩行者専用道路の区道「日本橋ガレリア」を東側より見通す。
  • B街区(髙島屋本館)の変遷
  • 街区の構成
  • 配置図
A街区:太陽生命日本橋ビル、日本橋髙島屋S.C.東館
B街区:日本橋髙島屋S.C.本館
C街区:日本橋髙島屋三井ビルディング、日本橋髙島屋S.C.新館
D街区:地域防災倉庫
建築主:
日本橋二丁目地区市街地再開発組合
設計:
一級建築士事務所株式会社日本設計
株式会社プランテック一級建築士事務所
施工:
株式会社大林組(A街区)
株式会社竹中工務店(B街区)
鹿島建設株式会社(C街区・D街区・公共部分・全体管理)
所在地:
東京都中央区日本橋二丁目
主要用途:
事務所・物販店舗・地域冷暖房施設等(A街区)
百貨店(B街区)
事務所・物販店舗・飲食店等(C街区)
休憩所等(D街区)
構造:
S造・CFT造・SRC造・RC造(A、C街区)
SRC造(B街区)
RC造・S造(D街区)
階数:
地上27階・地下5階・塔屋2階(A街区)
地上8階・地下3階・塔屋4階(B街区)
地上32階・地下5階・塔屋1階(C街区)
地上1階・地下1階(D街区)
敷地面積:
2,991.31㎡(A街区)
8,364.33㎡(B街区)
6,023.84㎡(C街区)
265.37㎡(D街区)
建築面積:
2,699.36㎡(A街区)
7,777.26㎡(B街区)
5,979.72㎡(C街区)
163.51㎡(D街区)
延床面積:
6,0138.11㎡(A街区)
7,7977.50㎡、(B街区)
14,8064.05㎡(C街区)
294.30㎡(D街区)
工事期間:
2013年4月〜2019年2月(4街区全体)
撮影:
川澄・小林研二写真事務所 浜田昌樹
設計趣旨:
 日本橋にかつての活気を再び取り戻すため、4街区一体となり街全体の価値を高める持続可能な開発である。創建以来、継承的かつ発展的に増築を重ねた髙島屋本館を重要文化財として保存活用し、都市基盤の整備と建築の改修と新築とを統合することで、本館を起点とする「都市の増築」を実現した。
 新旧建物間の区道は歩行者専用道化し、大庇をかけ「日本橋ガレリア」として再生した。併せて車両出入口の集約により街区内の通過車両を減らし、快適なウォーカブルな街を実現。ガレリアは新旧建物を融合し街に新たな賑わいの核を創出、人を呼び込み新たな人の流れを周辺へ広げている。各街区は複数階で接続し街区間の回遊性を立体的に展開。基壇部屋上は本館の屋上庭園を3街区にわたり拡張再整備し、緑と触れ合う新たな人の居場所を創出した。
 設備的には地域冷暖房施設を新築建物に設け熱源を集約し、設備機器更新の難しかった重要文化財のCO2排出量の削減を実現した。
(雨宮 正弥、飯土井 充)
雨宮 正弥(あめみや・まさひろ)
日本設計建築設計群副群長兼チーフアーキテクト
1967年 山梨生まれ/1992年 東京工業大学大学院総合理工学研究科修了後、日本設計入社/現在、同社建築設計群副群長兼チーフアーキテクト
飯土井 充(いいどい・みつる)
プランテック マネジャー
1977年 福島県生まれ/2000年 芝浦工業大学工学部建築学科卒業/2002年 芝浦工業大学大学院建設工学専攻修了後、プランテック総合計画事務所入社/現在、プランテック マネジャー
選考評:
 かつて日本橋は、商業、金融の中心として賑わいがあり栄えた街であった。昭和の終わりから平成にかけその賑わいが徐々に失われつつあった。そんな、日本橋において街の持つポテンシャルをもう一度見直し、生かし、周囲を巻きこみながら日本橋全体にかつての活気を取り戻すために、新たな業務、商業機能を集約させて4つの街区の一体計画により街全体の価値を高めて持続可能な開発を目指した作品である。
 街区を貫く特徴的な歩行者専用道路は、かつては狭い車道で車ばかりが行き交い、人の少ない、いわば、街の裏側となっていた。この車道を快適なウォーカブルな歩道とし、軽やかで透明感のある屋根架構をもつガレリアにより新旧の街区をつなげて、表通りの賑わいをまちの奥へ引き込んでいる。この歩道の両側には、戦前から戦後へ継承的かつ創造的なる増築を繰り返したB街区を活用できる重要文化財として再生している。並び立つC街区の基壇部は、外観のリズムを引用し、ディテール、スケールやデザインを踏襲して連続性を持たせている。さらに、ふたつの現代的なデザインの高層オフィスと合わさって通りに一体感を持たせ、歴史を感じさせる文化財の景観を周囲につなげて、街全体に広げている。このような人を中心として街全体の活気を取り戻し、まちの歴史を未来につなげる建築を高く評価したい。(奥野 親正)
奥野 親正(おくの・ちかまさ)
構造家、株式会社久米設計環境技術本部構造設計部統括部長
1968年 三重県生まれ/1991年 明治大学工学建築学科卒業/1993年 明治大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了/1993年 久米設計