ESCALIER五番町
設計|櫻井潔建築設計事務所・ETHNOS
第47回東京建築賞|一般一類部門奨励賞
3階レベルより外部階段を見る。*
  • 3階レベルより外部階段を見る。*
  • 南側外観全景。**
  • 北側の外濠越しに見る。**
  • 平面図
  • 配置図
  • ダイアグラム
建築主:
リアルパートナーズ株式会社
設計:
一級建築士事務所株式会社櫻井潔建築設計事務所・ETHNOS
施工:
米持建設株式会社
所在地:
東京都千代田区五番町2-9
主要用途:
事務所・日用品の販売を主たる目的とする店舗
構造:
S造
階数:
地上5階
敷地面積:
264.41㎡
建築面積:
183.30㎡
延床面積:
614.44㎡
工事期間:
2018年6月〜2019年3月
撮影:
*畑 拓、**堀越圭晋|エスエス
設計趣旨:
 市ヶ谷駅近くの複合テナントビルの計画。敷地は南側に接道、北側は外濠に面するロケーションである。
 コアをサイドにレイアウトすることで南北の抜けを確保。天空率を活用し各階のボリュームを前後にずらすことで、各階が独立したテナントであることが認知され、そのずれがオフィスと都市の中間領域として緑あふれるバルコニーと日陰を生み出す。バルコニーをグランドレベルから続く階段によってつなげ、連続させることで上下階のコミュ二ケーションの発生を積極的に促し、街とも関係性・連続性をもてるよう提案した。
 共用部の設備シャフト、廊下、階段、バルコニーをすべて屋外化することで、貸床面積を最大化。レンタブル比100%を実現し、事業性を確保している。
 ESCALIERは、フランス語で階段を意味する。テナントが成功の階段を登っていけるようなオフィスにできないかとのクライアントの思いの元、事業性を成り立たせつつ、まちなみの履歴を継承し次世代に残せる建築を目指した。
(櫻井 建人)
櫻井 建人(さくらい・たてひと)
株式会社櫻井潔建築設計事務所・ETHNOS
1980年 東京生まれ/2003年 武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業/2003年 株式会社アーキテクトファイブ入社/2014年 株式会社櫻井潔建築設計事務所・ETHNOS
選考評:
 JR市ヶ谷駅近くの濠端に面する高台に配された、小規模なテナントオフィス+店舗の計画です。
 基準階を窮屈に詰め込み繰り返すありがちなペンシルビルの計画に陥ることなく、立体的に巧みに構成されたフロアにより、各階ごとのレベルの特徴に即した平断面計画がなされた点が魅力的です。この結果、各フロアからの眺望に合わせたバルコニーの確保に成功し、憩いをもたらし、小型のビルに魅力を加えていることも高く評価したいと思いました。特に現在のwith Coronaの時代においては、バルコニーに対して窓を大きく開くことができるこのオフィスは、説得力を持っていました。同時に外観のボリューム感を低減して、コンテクストに馴染んだものとなっているのも、高感度が高いポイントです。
 さらに、これらのデザインが表層的なものに留まらず、オフィスビルを構成するのに不可欠な設備シャフト、EVホールや廊下、階段などへの深い理解から検討されており、その結果としてレンタブル比100%を実現し、事業性と直結したものとなっている点も特筆すべき点です。正にプロフェッショナルな仕事として高い評価に値する作品だと思います。(山梨 知彦)
山梨 知彦(やまなし・ともひこ)
建築家、株式会社日建設計チーフデザインオフィサー、常務執行役員
1960年 神奈川県生まれ/東京藝術大学美術学部建築学科卒業/東京大学大学院都市工学専攻修了/1986年 日建設計