明治大学創立130周年記念和泉図書館
(株)松田平田設計
第40回建築作品コンクール 一般部門二類優秀賞
施工:
清水建設(株)
建築主:
(学法) 明治大学
所在地:
東京都杉並区
主要用途:
大学図書館
構造:
RC造 一部S造
竣工:
2012年3月
撮影:
吉田誠
馬渡 誠治(まわたり・せいじ)
1958年東京都生まれ/1984年東京藝術大学大学院美術研究科修了/1984年松田平田坂本設計事務所入社/現在、松田平田設計取締役、設計統括
山崎 敏幸(やまざき・としゆき)
1969年長野県生まれ/1992年早稲田大学理工学部建築学科卒業/1992年松田平田設計入社/現在、松田平田設計第三建築設計部主任
設計趣旨:
配置は、既存校舎群との調和・正門からの軸線・敷地形状を考察し、平行四辺形の外形を計画。正門から奥へと拡がるランドスケープを創り出した。
特徴ある外形・構造フレームと共に、斜めに開いた書架配置を設定。幾重にも重なる本の背が通路に顔を出し、人を誘う。
内部構成は段階的な音環境ゾーニングとし、1階から上階・奥へと進むにつれて賑わい・交流から、静寂・集中に満ちた環境とした。音環境と空間性の変化を対応させ、目的に合った多様な居場所を配置した。
外観は、内部の「賑わいと静寂空間」を対比的に組み立て、低層部はアクティビティの高い空間性を外部に表出。高層部では自然光を活かした集中空間として、間接光を取り込むライトリフレクターと軒の深い大屋根で構成した。また、本に囲まれたラウンジや、圧倒的な本の力を伝える積層集密書庫のショーケース化など、「本に近い、本を見せる工夫」も積み重ね、「人と人、人と情報を結ぶ架け橋」を構想した。
(馬渡誠治 山崎敏幸)
審査評:
市街地にあるキャンパス内に分散していた図書室を統合し、知と人の交流がうまれる学生の居場所づくりと広場の再編をめざした計画である。年代と意匠の異なる建物が建ち並び、雑多な印象が否めなかった既存キャンパスであるが、既設建物とは異なる角度をもつ平行四辺形の平面形の図書館配置を軸に、大学1,2年生の若い感性を迎え入れるにふさわしいキャンパスの顔として、正門前の広場が再構成されている。
平行四辺形がもたらす斜め性は、構造計画、内装や家具配置において熟慮され、空間形成に生かされている。書架間の通路を進み、本の背と書架表示が連続して立ち顕れる風景に遭遇すると、「本の力を引き出す」ことへの建設チームの信念を強く感じることができる。
フラットな床を積層した機能的な計画の中にも、きめ細やかに配慮された内装計画により、キャンパスの入り口側から建物奥へ、1階から4階へ、賑わいから静寂という空間の質のグラデーションが形成されている。図書スペースは、外観の特徴となるライトリフレクターにより心地よい自然光に包まれ、外部環境への視線の抜けが確保されている。建築から家具、大から小スケールに至るまで、学生、職員の意識と行動の自発性を誘い出す様々な工夫が実現されており、施設を生き生きと利用する学生たちの様子もうかがえた。
既にある施設群の中で新たな建築行為は何をなしうるのか、都市空間更新における課題にも似た問いに対して深い情熱と高い能力をもって取り組まれ、図書館という機能を超えたキャンパスにおける都市施設を実現された点を高く評価され、優秀賞とみとめられた。
(國分 昭子/(株)IKDS・共同代表)