平成31年度 東京都への予算に対する要望を提出
   
 一般社団法人東京都建築士事務所協会は、東京都議会において来年度の予算案の審議前に例年行われている東京都への予算に対する要望を、都議会公明党を皮切りに、都民ファーストの会東京都議団、東京都議会自由民主党、都議会立憲民主党・民主クラブならびに東京都の5者に対して提出しました。
1.建築設計業務の適正化のため、業務実績を有する建築士事務所に対して一般社団法人東京都建築士事務所協会への加入の指導強化を要望します。
 建築士法第23条の6では、健全な業界の発展を促すため、「毎事業年度経過後三月以内に業務報告書を知事に提出しなければならない」と定めているが、登録建築士事務所の全てが業務報告書を提出しているわけではない。このため業界の実態把握が困難となっており、適正化の施策を展開しようとする時、適切な対応を阻害する要因のひとつとなっている。
 また、法第27条の5では、建築主の利益の保護を図るために苦情解決制度を定めているが、苦情解決への対応義務は、協会会員事務所のみに限られており、真に業務の適正化、建築主の利益の保護を図るためには、業務報告書を提出した建築士事務所の東京都建築士事務所協会への入会を義務付ける規則を設けるなど指導強化を要望します。
2.既存の建物や空き家 (ストック) の円滑な有効活用ないしは利活用を図るため、既存ストック活用に関する条例等の見直しの為の委員会の設置と、本会会員を委員としての参画を要望します。
 都内で約82万戸に及ぶ空き家及び空き家予備軍の速やかな活用及び既存ストックを活用したまちづくりは、これからの重要課題のひとつであり、解決のための現行基準の適用の緩和と建築ストック活用に特化した条例の整備が急務であり、見直しのための委員会の設置を要望します。
 また、その見直し等を検討する委員会等には実務者が必須であり、 実務者の代表として、是非本会会員を参画させていただきますよう要望します。
3.東京都教育庁所管の施設について、「特殊建築物定期調査」及び「建築設備定期検査」の一括業務委託を要望します。
 一般競争入札で調査・検査業務を行うものを選定した場合には、充分な調査・検査が行われない恐れがあり、また業務の品質にもバラツキが生じたり、充分な知識・知見を持たない不適切な技術者が選定される場合もあります。
 当該調査・検査業務を本協会に一括業務委託発注し、協会会員事務所が適正な価格で業務を実施することにより、これらの弊害を取り除くと共に、経年劣化部分だけでなく、不適切な使用・運用を予防的に発見し、それらに対して適切な処置や是正・改善に役立つ情報を施設管理者に提供すること等適切な調査・検査並びに助言が可能となります。施設・設備の長寿命化を図るなど、よりきめ細かい維持管理情報を提供することが可能となり、更に発注管理事務業務の大幅な軽減を図ることができるものと考えます。
 以上の観点より、都有施設の内、特に災害時には地域の避難所ともなる教育庁所管の学校等の建築物の調査・検査業務については、本協会に一括委託をするよう要望いたします。
4.設計者の選定に際しては、プロポーザル方式等の価格以外の要素を考慮した選定方法により、発注・契約に際しては、 業務報酬基準(国士交通省告示第15号)に基づき行われるよう要望いたします。 
 また、やむを得ず入札方式を採用する場合には、「最低制限価格の設定」の実施を要望いたします。
 価格のみによる設計者選定は、設計等の業務の品質低下を招き、ひいては建築物の品質の低下につながる恐れがあり、品確法や環境配慮契約法の主旨にも反することになりますので、価格以外の要素を考慮した設計者の選定方式の採用をし、建築物の安全性の確保と品質の向上を図るため、国士交通大臣の定める「業務報酬基準の遵守」及び「最低制限価格の設定」を実施されるようお願いいたします。
5.電子申請の現状の把握と課題の抽出のためのワーキングを設置し、東京都における建築確認申請手続きの電子申請化体制の構築と推進を要望いたします。 また、電子申請の現状の把握と課題の抽出のためのワーキングを設置し、本会へ委員の推薦を賜りますよう要望します。
 近年、情報処理・通信技術の著しい発展により、建築設計業務においてもCADを利用することが日常になり、さらに高度化したBIMの実用化も始り、建築図書について電子的に作成されることが一般的となってきています。
 こうした流れの中で、建築確認検査の手続きも、紙の書類の提出でなく、電子デ一タの送信等で申請が可能ですが、いくつかの課題があり浸透していないのが現状です。
 そうした課題を解決し、より活用し易くするための手続きの簡素化などについて検討するワーキング委員会等を設置していただき、提出側の代表として、ぜひ本会から委員を推薦頂きますよう要望します。
6.東京都の防災力の強化に向けて、関係部局との具体的な被災建物への対応についての勉強会の立ち上げを要望し、併せて、東京都防災ボランティア事務局に本会を加えることを要望します。
 東京都では、災害対策基本法の規定に基づき、地域防災計画を作成し、併せて2020年を目標に、「東京の防災プラン」を策定する等、防災力の強化に向けて精力的に取り組んでいると認識しております。
 本会では、東日本大震災、熊本大地震では、いち早く復興支援センターを立ち上げ、応急危険度判定や震災建築物被災度区分判定・復旧技術の活動を各行政と連携して積極的に行い、その経験と技術を蓄積しております。震災直後、必要となるのが被災建物の応急危険度判定であり、中でも避難施設に指定されている建物の安全性の確認は真っ先に行なわなければなりません。
 そのためには、平時から連絡体制の構築等、防災関係部局との具体的な検討や活動支援についての協議が重要であり、東京都の防災力の強化に向けて、本会として最大限の協力をするため、関係部局との検討勉強会の立ち上げを要望いたします。
 また、過去の震災後の活動実績から、東京都防災ボランティア事務局に法定団体である本会を加える事を要望します。