土地家屋調査士豆知識 第6回
万が一土地の境界に起因して紛争が起こったら?
國吉 正和(國吉土地家屋調査士事務所)

 
境界センターのフロー
 建築の工程の中で、隣地とのトラブルが発生する場合も少なくありません。日照の問題、騒音や振動、隣家の傾きや損傷等、誠意ある対応が必要になると思います。なかでも、それらのトラブルをきっかけに、または潜在的にあった土地の境界問題へ発展してしまうと、その解決は非常に困難になってしまう場合があると思います。弁護士さんを立てて交渉したり、訴訟の場へ持ち込まなければならなくなってしまったことも、建築士の方にはあるのではないでしょうか。
 そんな時の解決のひとつの手段として利用していただきたい、東京土地家屋調査士会が、東京弁護士会、東京第一弁護士会、東京第二弁護士会の東京三弁護士会の協力を得て設置している、裁判外紛争解決期間(ADR)「東京土地家屋調査士会境界紛争解決センター」(以下、「境界センター」)を紹介します。

境界センターとは
 境界センターは、平成15年(2003)年6月24日、土地境界問題に起因し、またはそれを要素として含む紛争について、境界の専門家である土地家屋調査士と法律の専門家である弁護士が協議・協働して、相談業務と調停業務を通じて境界紛争を簡易、迅速に解決することを目指し、市民の権利の明確化に寄与することを目的とし設立されました。
 一般的に、裁判は紛争の法律解釈による解決、ADRは柔軟的解釈による解決といわれています。ADRはあくまでも私的な紛争解決機関ですから、裁判のように公的で強力な最終的権限はありませんが、ADRでは、紛争固有の性質に着目し、それぞれの機関の専門性を発揮することで迅速かつ簡便に紛争解決の支援をすることが可能です。
 境界センターでは、境界線や境界点そのもの自体の紛争やそれらに起因する紛争を対象に、原則的に土地の所有者さんからの申し立てによって手続を始めます。ただし、紛争地は東京都内である場合となります。手続は原則非公開で行われますので、プライバシーや秘密は守られます。

境界センターへの申し立て
 申し立てをお考えのときは、まず、境界センターへお電話をしてください。事務的な質問を済ませ、事前の相談の予約をします。予約日時に資料を持って境界センターへ行ってください。担当の土地家屋調査士がお話をお伺いします。お話しの内容から、境界センターで扱うことが相当な事案と判断された場合は、後日境界センターから連絡があります。ここから、調停申立の手続に移ることになります。
 相手方が話し合いに応じないときは、境界センターは、相手方の話し合いへの参加を促す努力と支援をします。ただし、強制力はありませんので、この点を予めご理解ください。
 また、費用については境界センターの規則で定められており、申立費用、事前調査費用、調停期日費用、成立費用等が掛かりますが、詳しくは事前相談で確認ください。
 土地の境界をめぐるトラブルは、財産に関わる問題だけに慎重な対応が欠かせません。土地家屋調査士はそのことを常に意識して、迅速・公正そして最良な方法で問題が解決できるよう日々研鑽を積んでいます。お隣同士で感情的対立が根深くなる前に、問題を早く解決したいと考えています。土地家屋調査士と弁護士が長年の経験で培ったノウハウと知識を活用して「相談」に応じ、「調停」をすすめて円満解決を図ります。安心して境界センターに相談ください。

東京土地家屋調査士会 境界紛争解決センター
東京都千代田区神田三崎町1-2-10
土地家屋調査士会館
Tel. 03-3295-0022(要事前予約)
http://www.tokyo-chousashi.or.jp/adr/index.html
國吉 正和(くによし・まさかず)
國吉土地家屋調査士事務所、東京土地家屋調査士会顧問
1954年東京生まれ/1977年 早稲田大学理工学部土木工学科卒業/1981年土地家屋調査士登録
カテゴリー:建築法規 / 行政