VOICE
前田 敦(東京都建築士事務所協会青年部会、八王子支部、前田一級建築士事務所)
2階バルコニーから望む富士山。
私が今住んでいる家の目の前には、小さな川が流れていて、その両端には遊歩道、川の向こうには丘があり、四季折々の草花が色付き真冬は雪化粧ととても綺麗です。そんなロケーションがとても気に入っているのですが、そこに初めて入居した時にちょっと得をした気持ちになったお話を書きます。
かれこれ13年ほど前、 土地選びから計画を進め、契約、着工、上棟と進み、ようやく完成したのが年末のクリスマスを過ぎたころ。引越しが終わった時には、わが家自慢の景色も丘の紅葉も終わって少し殺風景。「まぁ、これから少しすると雪も降るし、雪景色もいいかなぁ」(南岸低気圧が発生すると駅前がテレビ局の中継車でいっぱいになる八王子なのでけっこう雪が積もります)なんて想像しながら1階のリビングからその丘をひとしきり眺め、2階に上がってバルコニーから周囲を見渡すと、なんと西のかなたに雪を被った富士山の頭が見えたのです。「えっ、こんなところから富士山見えるの⁉︎」。ここは谷あいなのですが、東西に流れている川の川上(西方向)が川に沿って開けているため、たまたま見える位置だったのでしょう。当然、建築中何度も現場には行っていましたが、1回も見えたことはありませんでした。
標高は世界名だたるの山々の半分にも見たない山だけど、日本人にとって特別なものであることに違いありません。なんとも神々しい姿です(もういちど繰り返しますが、頭しか見えません)。家から富士山が観られるなんてまったく予期せぬことだったので、とても嬉しく感動したのを覚えています。天気がいいからといっても必ず観られるわけではありませんが、運よく観られた朝は何がいいことが起きそうな気がして、13年経った今もちょっと得した気持ちになります。
前田 敦(まえだ・あつし)
東京都建築士事務所協会青年部会、八王子支部、前田一級建築士事務所
1967年 東京都生まれ/1988年 東京工科専門学校卒業/1997年 株式会社木下工務店設計部退社/1998〜2008年 10年間建築を離れ、デザイン会社で、サイン・CI・チラシ等のデザインを行う/2008年 前田一級建築士事務所設立
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